世界から人材を確保
インフォシスのクリス・ゴパラクリシュナン氏(共同創業者、共同会長)は、ITの新しい時代を迎えて、それぞれの企業がビジネスモデルをいかに変革していくか、が問われていると強調する(世界経営者会議)。インフォシスは創業して30年、PCが変わろうとする中で、次の技術展開を見据えている。
インドでは銀行を使う人(口座のある人)はまだ人口の10%である。しかし、モバイルタブレットが普及すれば、銀行サービスにも大きな影響を与える。インドでは、すでに35ドルのタブレットも登場している。モバイルによるパーソナルバンキングが今後大幅に普及していこう。
PCからスマホ・タブレット+クラウド時代へ、変化が本格化してくる。企業向けのITシステムもクラウド化する。例えば人事システムには、どの企業でもかなりの投資を必要とするが、今後その運用システムはかなり変わってこよう。
OS(オペレーティングシステム)のコストは大幅に下がり、アプリが使い易くなる。OS自身もウィンドウズ、アップルiOS、アンドロイドの3つくらいに集約されよう。総ての企業が新しい環境に対応していく必要がある。PC企業が通信業界に入ってくる。アップルがiPodを導入した時、Mac(マッキントッシュ)のPCとカニバリゼーション(自社競合)を起こすのではないかと懸念されたが、実際はうまく成功した。
ビジネスモデルは他社に壊されるか、自ら壊すかである。インフォシスも自ら変わっていく。プラットフォームを作って、クラウドもやる。一方でアプリをもって、サービスを提供する、というやり方をとる。心配なことは、通貨(ルピー)の変動、顧客ニーズの変化、人材の獲得である。通貨のボラティリティが高まると、経営はやりにくい。客のニーズへ対応するといっても、余りに大きな変化なので、今の対応が本当にニーズに合致しているかどうかはわからない。
人材については、優れた人材を多数必要とする。ここでいう優れた人材とは、(1)グローバルな人、(2)エネルギッシュな人、(3)学習する人、(4)多様性を許容する人、である。インフォシスは、大学の卒業生が出てくる地域の近くにセンターを持つようにしている。現在、70カ国の国籍を持つ人が働いている。売上高の4%が人材育成に使われており、キャリア開発の計画をもってマネジメントされている。いかに、世界の人材を確保するかがポイントである、と会長は指摘する。
iPhoneのアップルは垂直統合モデルであるが、インフォシスのITソフトウエア開発は、顧客にユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験価値)を提供でき、協業できる点を強みとする。今後の市場は新興国にあり、インド、中国、アフリカ、インドネシア、ベトナムなどが有望であるという。こうしたクリス会長の話は、企業の経営を見抜く目の「経験価値(エクスペリエンス・バリュー)」を高めてくれるので、大いに参考になろう。