感性を磨く小さな体験

2014/08/31

・7月にニューヨークとボストンへ出張した。オフィスからオフィスへ移動するビジネスではなく、街をいろいろ見て回るという体験型である。昨年はカンボジアに行ったが、ニューヨークの街をゆっくり歩くのは久しぶりである。

・ニューヨークのホテルに夜の8時頃に着いたが、予約したタイプの部屋がない。2ベッドの部屋を取ったはずだがない。フロントの担当は、そういう要求は入っているが、すでに部屋はないので、キングサイズのベッドでワンランク上の部屋があるので、それでどうかと聞いてくる。こちらは困ると押し問答をした。しばらくすると、彼はそのタイプの部屋が見つかったと、突然態度を変えて一件落着である。どうなっているのか。当方のニーズには対応したが、次の客に問題を先送りしたのではないか、と心配になった。

・近くのステーキハウスに行ってみた。人気のレストランらしい。予約していないので、無理かなと思いつつ、入れるかと聞いてみた。9時少し前であったが、9時半なら席を用意できるという。150席はありそうで、満席である。入り口のバーあたりで、話しながら40分ほど待った。そうしたら時間通りに席が用意された。周りの客をみると、ビジネスが半分、プライベートが半分という感じであった。料理もワインも美味しく、典型アメリカンのレストランを十分堪能した。ところが、支払いでチップを加えた合計金額の暗算を間違ってしまった。翌日レシートを見て気が付いた。クレジットカードの請求はどんな数字で送られてくるのか。私の書いた合計金額でくるのが当然だが、そうすると途中の計算が合っていない。結果として、チップの大幅な払いすぎである。何と、足し算を間違えて100ドルも多くしてしまった。

・「おはようマンハッタン」というニューヨークの歩き方に参加して、地下鉄の利用方法を教えてもらった。地下鉄には何度も乗ったことがあるが、改めて聞いてみた。おかげでメトロカードを使って自由に動けるようになった。1枚のカードで4人まで乗り降りできるとは知らなかった。1人がカードを通して改札口を入り、次の人に手渡す。その人も同じカードを使って、改札を通るという具合である。1枚の磁気カードをシェアして使えるのは確かに便利である。払い戻しはできないので、料金がいくら残っているかを確認しながら、追加のチャージをして上手く使い切った。

・5番街の53丁目にユニクロの基幹店がある。広い、サイズはアメリカン。でも金曜日の夕方にしては客が少ない。近くのGAPはセールをやっているので賑わっている。34丁目にはJCペニーがあった。なつかしい。入ってみるとほとんど客はいないし、店は荒れている。これで大丈夫かと心配になるほどであった。ここにもユニクロがあるが、となりがZARA、すぐそばにH&Mと激戦区。セールの時期なので、その程度によって客の入りが違っているようだ。

・エンパイヤステートビルに上がってみる。展望台にいくのに、エクスプレスコースがある。価格は2倍であるが、並び方が少なくて済む。列に割って入って、早く上に着くという仕組みだ。長い行列を見ると、早く着くのはありがたいが、別のエレベーターがあるわけではない。エクスプレスの人は、長い行列に割って入って、エレベーターに優先的に乗せてもらう。長い行列の人々は、それを見てわかる。こういうサービスが機能しているところが面白い。客として自分が逆の立場だったら、やっぱり不愉快になるであろう。

・ボストンには、アムトラック(列車)で行ってみた。かつて仕事でフィラデルフィアまで乗ったことはあったが、ボストン行きは初めてである。各停なので4時間ほどかかる。エクスプレスなら3時間半だが、のんびりコースの車窓を楽しんだ、列車はワシントンから来た。ニューヨークに着くと、しばらく停まっている。ビジネスクラスではないので、指定券ではあるが、指定席ではない。つまり、どこかには座れるが、席は決まっていないので、早いもの勝ちである。どうやって、眺めの良い2人席に上手く座るか。ノウハウがあった。ボストン日帰りツアーのベテランは、駅の職員と顔なじみである。乗車する客が改札口から入る前に、降車した客が利用する出口の階段から先にホームに降りて行き、入ってきた列車にさっさと乗ってしまう。乗客が来る前に乗ってしまうのだから、良い席がとれるのは当然である。その後、席はいっぱいになった。皆と一緒に入ったら、並んで良い席など取れそうにない。帰りも同じである。それがノウハウになっている。

・アムトラックの列車をみると、エクスプレスは新しいが、各停の列車は古い。帰りの列車は途中で発電機が故障、30分ほど止まってしまった。運休になって全員降ろされた例もあると聞いていたので、不安になったが、何とか動きだした。ところが、NYに着いた時間は定刻であった。途上で遅れを取り戻している。各停なので、かなり余裕をみているのであろう。日本の新幹線なら半分の時間で着くだろうが、大型投資をして新幹線をとりいれるのは難しいと感じた。ビジネスマンは飛行機のシャトル便でニューヨーク‐ボストンを往復している。1時間ほどである。これに替わって投資をするニーズは強くないと思われた。

・朝食の時に、パンケーキで有名なノーマズに行ってみた。ブルーベリーパンケーキとエッグベネディクトが定番である。とにかくでかい。一人で1皿はとても食べ切れない。小さいころころじゃがいもの量も半端でない。ところが、隣の夫婦と子ども一人は、ちゃんと一人前ずつ注文している。食べる時も分けるというしぐさはない。反対隣の父と子どもも同じである。大人は食べ切っているが、子どもは残している、それでも一人前ずつ注文する。別の機会の夕食の時も5人家族で子どもが3人いたが、食後のデザートも一人ずつ頼んでいた。その量がすごい。日本なら3人前はありそうだ。それをペロッと食べてしまう。

・スーパーに入ってみた。セントラルパークの傍にあるショッピングモールの地下1階である。日本の紀伊国屋のような雰囲気。肉は安くて新鮮、さすが肉の国である。買い物をしてレジに並ぶ。行列の処理の仕方が、日本とは違う。青、黄、緑の3色のラインが2コースあって、そこに電光掲示板があり、順番に番号が出て、音声でレジの番号が流れる。各列の先頭の人が40くらいあるレジの番号のところで会計。カードをサッと通して電子サイン。すぐに完了、便利である。

・街を歩くと、MKのマークがついたバックを持った女性がかなり目に入ってくる。日本でいうと、ヴィトンのバックを持っているという感じの頻度である。MKはMichael Kors (マイケルコース)というデザイナーのブランド。この会社は上場しており、株価をみるとこの数年で急成長している。バッグの価格はさほど高くないが、ブランドをきちんと作り上げている。ソーホーのブルーミングデールズ(百貨店)に、マイケルコースのテナントが入っていた。そこを見てから、5番街のサックスフィフスアベニュー(百貨店)の向かいにあるMKの店舗に入ってみた。確かに賑わっており、人気があるのがよくわかる。まもなく、先ほどのスーパーがあったコロンバスサークルのモールにも出店する。いずれコーチのように日本でも台頭してくるのかどうかに注目したい。

・泊まったホテルの近くに行列のできる屋台があった。ニューヨークで通りに屋台が出て、さまざまな食べ物を売っているのは珍しくない。サンドイッチ、パン、ジュース、くだものなど、朝、昼などの軽食として利用されている。でも、ここは違う。とんでもなく長い行列である。鶏肉や羊の肉を細かくほぐして焼いて、ご飯の上にそれを野菜(レタス)と一緒にのせ、ソースをかけて食べる。何がすごいって、ハラル対応と看板を出していることである。イスラム教の人々にも安心して食べてもらえるようにしている。こちらで勤務する日本人夫妻に聞くと、確かに美味しいらしい。残念ながら、食べる機会はなかったが、ストリートでさえ、ハラル対応をうたって商売をしているのは、さすが多様な人種の国、観光大国である。

・ニューヨークは活気がある。若い、バイタリティがあって盛り上がりをみせている。一方で、格差は大きい。至る所で、敗者らしい風景、光景がみられる。観光シーズンなので、外国人が多い。その中でも中国人パワーはすごい。どこに行っても、中国語が飛び交っている。ボストン美術館の中でもそうである。一方、日本人にはほとんど会わなかった。旅行客は減っているようだ。街は、通信、鉄道、地下鉄、道路といったインフラへの投資という点では十分追いついていない。この課題をすぐに直していけるとも思えない。

・今回の小さな体験は、私にとっては新しい出来事であったが、よく知っている人にとっては、珍しくもない当り前のことであろう。何をいまさらという感じを持つかもしれない。しかし、投資を考える時には2つの側面を重視する必要がある。1つは、投資環境や投資対象を何らかの形で実感しておかないと、新たに入ってくる情報も十分咀嚼できないということである。自分にとって実感できる長持ちする情報を得ておくことは、ものごとを判断する時に役立つことが多い。もう1つは、そうした実感が固定観念になってしまわないことである。常にフレキシブルに受け止めることが求められる。自分にとっての小さな体験は、感性を磨くという点で大いに役立つ。異質な体験を求めて、さまざまな現場を歩いてみることは、投資を考える上で有意義であるといえよう。

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