MUJIの価値づくり

2014/04/21

・良品計画の松井忠三会長の話を聴く機会があった。無印良品の挫折からの復活と、その後のグローバル展開には目を見張るものがある。グローバルプレーヤーとして、H&M、ZARAやUNIQLOと並んで、MUJIは独自のポジションを築いている。「日本の常識、世界で通じず」を、どのように打ち破ってブランドを築いているのか。印象深い点をいくつかとり上げる。

・現在、国内店舗は387店(2月末現在)、海外257店(24カ国)を有する。売上高2000億円、経常利益220億円という規模である。西友のPB(プライベートブランド)から始まって、唯一生き残った。90年3月に直営店がスタートし、90年代は順風満帆であった。99年度には売上高が1000億円を超え、経常利益も136億円を記録した。SPA(製造小売業)として成功し、ユニークな存在となった。

・しかし、2000年から会社は曲がってきた。松井氏は西友出身、再建に向けて2001年1月社長になった。当時株価は8割以上下がり、無印は終わったとまでいわれる局面であった。専門店でよみがえった企業はないという中で、リストラを断行した。

・外部環境はデフレになっており、百貨店の品質を安く売りたいというだけでは通用しなくなっていた。原因は内部にあった、と松井会長は強調する。①漫心、驕りがあった。②焦りが短期的対応をあおった。③ブランドが弱体化し、それなりに売れてもパワーを失っていた。店舗を1割閉め、大幅な在庫の処分を行った。原価で38億円(売価ベースでは100億円)の在庫を焼却処分した。それでも、事態は十分改善せず、再度の処分を強いられた。2度も失敗すると、さすがに社内は一変した。

・品質の劣化もかなり見られた。2002年には不良品の回収が相次いだ。年間7500件も発生していたクレーム件数を減らすことに力を入れた。品質の見直しを進め、5年で1400件まで縮小させた。その結果、業績は2005年度にピーク利益を更新するところまで好転した。

・その後、ブランドのコンセプトを進化させることで、経営の変革を加速させた。従来の「わけあって、安い」というキーコンセプトを、「“これがいい”ではなく、“これでいい”」に変化させた。従来の‘シンプル、機能性、経済合理性、自然志向、洗い晒し、ユニット’を、‘ハイクオリティ・ベーシック、リーズナブルプライス(賢い低価格、豊かな低コスト)、創造的な省略=究極のデザイン、素(素食・スローフード)’に変えたのである。

・さらに、WORLD MUJI、FOUND MUJIを打ち出した。世界のものを海外で作っていくという考えだ。WORLD MUJI は、世界の才能にMUJIのコンセプトをインプットし、世界からMUJIを生み出し発信する。FOUND MUJI は、日本を含めて世界各地へ入り込み、“いいもの”を探し出し、現代の生活にフィットさせる。これで、世界を攻めることにした。

・MUJIの海外展開は91年からスタートしたが、11年間赤字が続き、2002年にようやく黒字となった。2012年度は、海外257店で売上高350億円、営業利益23億円を稼ぎ出したが、これを2013年度は400億円(海外売上比率20%)、2014年度は740億円(同29%)に拡大させようとしている。

・欧州展開では家賃が重要な問題であった。イギリスでは売上高家賃比率が18.7%のところに出店して、うまくいかなかった。今では、ロンドン11.3%、ミラノ10.3%、パリ7.1%、というレベルである。物件は自分達で見出している。たとえ1階は狭くても、2階が広いところは家賃効率がよい。ミラノはこのみたてにより、1年で黒字になった。

・米国は2007年にニューヨークのソーホーに出て成功した。小さくて性能、品質がよいところがアジア系の人々に受け入れられた。今は西海岸に展開している。中国は2008年に本格出店して、現在33都市に101店を出している。中国全土の1~2級の都市に出店する。現地のデベロッパーと組んでおり、これが鍵となって、1年半で回収できるモデルとなっている。

・松井会長は、ジャパンリスク、OKY、日本病について注意を喚起する。①海外に誰を送るのか、②OKY(お前が来てやってみろ)にならないように、ビジネススタイルとコミュニケーションをいかに確立するか、そして、③日本の常識が世界で通じないというようにするな、と戒める。

・キーポイントは、MUJIGRAMといわれる販売オペレーションマニュアルによる店舗運営の標準化と見える化の実行にある。日本語版は13冊1994ページを擁するが、これを社員の改善提案を入れて定期的に改訂していく。社員の声をどしどし取り入れている。海外版では、英語版は5冊378ページ、中国語版7冊401ページ、韓国語版4冊164ページなどがあり、これらを逐次充実させている。

・マレーシア、クウェート、ドバイ、オーストラリアなど進出地域は広がっており、海外展開に弾みがついている。世界でMUJIブランドがどこまで高まるか、大いに注目したい。

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