経営力を見抜く

2011/08/29

エディオン(コード2730)の個人投資家向け会社説明会に参加した。久保社長は、家電量販店の中でどう勝ち残っていくかについて興味深い話をしていた。これからは消費者がモノを買う時代ではなくなる。家電量販店もモノを売るだけでは成り立たなくなるかもしれない。顧客は商品やサービスの機能を求めているのであって、その機能に価値を見出してお金を払ってくれる。

つまり機能を提供して、その機能の利用に見合って料金をもらうのである。実際、エアコンを売るのではなく、エアコンによって得られる冷暖房という機能を提供し、その使った分に見合う使用料をいただくという。そういう課金システムを開発中で、近々サービスを開始すべく準備している。

1995年の家電量販店のトップはベスト電器、2位が上新電機、3位がコジマであった。それが2000年には1位がコジマ、2位がヤマダ電機、3位はヨドバシカメラとなった。そして2010年には1位がヤマダ電機、2位がエディオン、3位がケーズデンキと大きく入れ替わった。経営戦略の巧拙が影響した。

エディオンは大型合併を梃子に業界2位にまで上昇してきた。それでもヤマダ電機との差は開いている。これからも成長機会はいろいろあるが、PBR(株価純資産倍率)は0.5倍を下回っている。今のマーケット環境にあって割安になっているという見方ができる一方で、将来の成長機会が現状の延長では乏しいのではないかという懸念があるのかもしれない。それに対して、「商品を売るのではなく、機能を売っていく」という今までにないビジネスモデルの革新に挑戦していく。全く新しい発想である。

伊丹教授(東京理科大学大学院イノベーション研究科)は、経営戦略とは長期的な基本設計図であり、イノベーションを起こすには主張を持って、未知のニーズを掘り当てることであるという。経営者の決断は常に作用と反作用を生むが、それに挑戦しなければ新しい道は拓けない。現状の延長線上ではなく、ビジネスモデルの革新をいかに起こそうとしているか。これが経営者の経営力を見るポイントであろう。

通信や電力のような業界には、使っただけ支払うという課金システムはある。ケータイ、スマホはその典型である。スマホ時代に新しいeビジネスを展開し、従来の家電量販店という枠にとどまらないビジネスモデル(企業価値創造の仕組み)を構築できるかどうか、大いに注目したい。

 

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