エクイティへの期待 ~アジア金融フォーラム

2013/02/03

・1月に香港で催されたアジア金融フォーラム(AFF)に参加した。AFFは今回で6回目、2300人が参加した。中国本土からは各省別にデリゲーションが来て席取りしていたのが目を引いた。その中で、日本の存在感は一段と乏しかった。日本人のオーディエンスは10名程度と少なかった。90人以上のスピーカーの中で、日本からは中尾財務官一人であった。中国が暴れる虎になる一方、日本は借りてきた猫になりかけている。

・IMFの朱民副理事は、世界地図をGDPマップ、貿易マップ、金融マップで各々示しながら、領土が広くても、GDPでは小さく、貿易はさらに小さく、金融では存在すらみえないくらいになる中国、インドを強調していた。日本はいずれのマップでも大きいのに、具体的な言及はなく存在感が乏しくなっている。

・米国について、シカゴ連銀のチャールズ・エバンス総裁は、米国はもはや経済のドライバーにはなれないと述べていた。FOMCは物価安定と雇用確保に力を入れるというメッセージをはっきりさせた。しかし、効果的な政策はなかなか出せない。政府の投資余力は弱っている。それでもQE3はインフレ率2.5%以上、失業率6.5%以下にならなければ、解除しないという考えである。

・ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授は、米国の財政の崖について、車の後部座席で、2人の子どもが騒いでいるようなものと揶揄していた。いずれ、すべてのことをやったあとで、米国いつも正しい選択をする、というチャーチルの言葉を引用していた。先進国は基本的に需要不足である。これをどうするかは容易ではないという。

・GDPに対する債務の比率は、どの先進国でも上昇しており、リーマンショック第2波の影響は長引く。自国の政策が他国に波及していく。大改革には犠牲を伴うが、それを受け入れるだけの民意はなかなか得られない。デレバレッジはゆっくりやる必要があるが、市場はそれを待ってくれないかもしれない。

・インドネシアのマンドラ・シネガー財務大臣は、この30年間のバブルは、先進国がとった政策のまずさにあると強調していた。危機の根本を理解しないと、これから最悪の事態を招くかもしれないと警告する。リーマンショックは投資銀行が起こした危機なので、アジアでも同じことが起きないように、時間をかけて解決していく必要がある。バーゼルIIIも見直して、流動性を十分確保すべきであるという見方にも一理あろう。

・中国投資有限公司(CIC)のロウ・チーウェイCEOは、全く話が出てこない日本について言及した。日本を忘れないように、日本の量的緩和は成功しない、米国のようにはいかない、自分も気を付けていると述べた。これに対して、中国本土から来ている参加者より拍手があった。どういう意味なのか。政策の中身よりも日本に対する意図かもしれないと考えてしまった。

・一方、ブラックロック社のマーク・マッコンブ氏(アジア太平洋会長)は、いよいよ債券から株へのシフトだ。日本の安倍首相も動いたと、強気であった。さてどうなるか。日本の政治力が問われている。日本の存在を示すには、やはり国力、企業力の向上しかない。

・中国の投資会社、復星集団(ホスングループ)のリアン・シンチュンCEOは、中国はターニングポイントに来ているという。2019年から労働人口が減り始め、2020年から高齢化がスタートする。つれて、市町村で使う資金が増えてくる。消費者の権利意識が高まっている。環境に対して厳しい姿勢を示している。サプライチェーンの改革が進む。5~7年たつと、不動産も減速し、金融にも影響が出てくると見ている。

・2012年にインターネットのEコマースが、チェーン店ビジネスにも大きく影響してきた。デパート、家電、放送、新聞などの売上がマイナスになった。小売りの7%がネットに移り、TVもネットでみられるようになっている。これからは、医療などサービス産業のリーダーに投資していく方針であると、シンチュンCEOは明言した。

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