認知症に備えて

2024/08/28 <>

・高齢化が進んでいる。自分のことを差し置いて、世の先行きを心配したくなる。高齢になれば、認知症を発症しやすくなる。私の母は90代半ばまで生きたが、だんだん認知症が進んだ。会いに行くと、どちら様ですか、と言われるようになった。それでも昔の記憶は残っていたので、昔話で覚えていることであれば、会話ができた。

・今年5月に、ベネッセスタイルケア主催のオンラインセミナーを視聴した。金沢大学の小野賢二郎教授(脳神経内科学)の話は興味深かった。エーザイの新薬開発には関心があって、長くフォローしている。薬の開発については、理解がなかなか難しい。

・自分もいずれ認知症に罹るかもしれない。長生きすれば、そうなる確率は高まろう。どう備えればよいのか。自分の立場で考えてみたい。

・老化が進めば誰でも、物忘れをしやすくなる。中には矍鑠(かくしゃく)とした人もいるが、私の場合、人の名前がすぐに出てこないことが増えている。

・体験の一部をちょっと忘れてしまい、いろいろ話していると、ふと思い出すことも多い。これは、まだ認知症ではない。1)一部ではなく全体を忘れてしまう。2)人物、時間、場所が分からなくなる。3)作り話が出てくる。4)忘れていることに自覚症状がない。こうなると認知症の可能性が高まってくる。

・65歳以上の3分の1が、軽度も含む認知症の症状を有する可能性が高く、その7割がアルツハイマー型であるという。認知症は、脳の神経細胞が劣化する病気である。この劣化をいかに防ぐか。あわよくば、劣化を改善できれば、こんなによいことはない。

・正確ではないが、例えていえば、タンパク質のカスがたまって、それが脳の機能を低下させる。5年、10年かけて、それが進行していく。そのカスが、①ぱらぱらとある状態、②いかにも増えてきた状態、③ガチガチの塊ができてきた状態など、そのレベルはいくつかに分けられる。

・まずは、1)単なる老化なのか。2)治療ができる他の病気に由来する障害なのか。3)本当の認知症なのか。これを診断してもらう必要がある。自覚症状のない人は、病院に行って検査を受けることすら拒否する。こういうところからスタートすると、家族は対応に苦慮する。私の親族のケースでも、本人を病院に連れて行くのに苦労した。

・元気なうちから、認知症に備える姿勢を整えておきたい。自分は元気だから関係ない、ではなく、誰もがいずれそういう場面を迎える、と考えておきたい。CTやMRIの検査を早めに受けておくと、脳の状態を知ることができる。

・認知症のこれまでの治療薬は、まだ正常な脳細胞を守って、これを活性化して、認知症の症状をやわらげようとするものであった。①脳細胞を元気にする、②攻撃的な言動を落ち着かせる、③不安定な幻覚や妄想を抑える、というタイプである。

・アルツハイマー型では、アミロイドベータというタンパク質が変異で溜まってくる。これを、①何とか取り除くことができないか、②増えるのを抑えられないか、という治療薬の開発が進んでいる。

・アミロイドベータがガチガチに固まったものを叩く薬がアデュカヌマブ(モノクローナル抗体)で、エーザイが開発した。この薬は、ガチガチのアミロイドベータに作用するので、その副作用(頭痛、脳のむくみ、出血など)も目立った。これでは使えない。

・そこで、アミロイドベータがガチガチの塊になる前の状態、細長い状態(プロトフィブリルのレベル)で、まだひ弱なうちに、これを叩いてしまう薬が開発された。これがレカネマブ(エーザイ)である。これは、アルツハイマーの症状進行を平均的に7.5か月遅らせる。米国に続いて、日本でも承認されて、今年から使用が始まった。

・さらに、アミロイドベータが長細い状態になる前に、これを叩くことはできないか。それに資する薬の研究開発も進んでいる、レカネマブは2週間に1回の点滴注射であるが、現在開発中のALZ-801という治療薬は内服薬になる。これで効くようになれば、さらにありがたい。

・認知症には、アミロイド系のタンパク質以外にも、タウというタンパク質が作用してくる。そこで、①アミロイド系を叩く薬の次に、②タウを狙う薬の開発も進められている。③さらにアミロイドとタウの双方に効くこともターゲットにしうる。時間は要するとしても、有望な開発に注目したい。

・小野先生によると、治療薬以外でも、そもそも睡眠を十分にとることが大切である。そうすると、アミロイドベータがよく排出されるという。また、ポリフェノールには、その効用がある。緑茶を毎日飲むことがよいらしい。

・ポリフェノールなら、私の好きなコーヒー、赤ワインにも含まれている。勝手な解釈で自己都合に結び付けてはならないが、認知症への備えは普段から十分心掛けていきたい。また、治療薬の開発メーカーには大いに期待したい。

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