感染症パンデミックとESG投資

2020/07/01 <>

・ESG投資が活発である。そのスタイルは、ESGアクティブ、ESGサステナブル、ESGパッシブエンゲージメント付、ESGインデックスなどいろいろである。サステナブルはより長期の社会的リターンを重視し、エンゲージメント付は企業としっかり対話していく。

・ESGの中身も、Gのガバナンスから、Eの環境重視へ、そして今やSの社会が注目されている。一方で、SDGsが定着しつつある。多くの上場企業は自社の事業活動をSDGs(持続可能な開発目標)と結びつけて展開しようとしている。

・このSDGsに今回の新型コロナウイルス感染症対応は入っているのだろうか。17項目のうちの3番目、「すべての人に健康と福祉を」という中に、HIV/AIDS、マラリア、結核といった感染症の抑制という内容が入っている。確かに、伝染病や感染症の根絶をターゲットに掲げている。

・新型コロナウイルスの治療薬や感染予防のワクチンはまだない。急遽開発中であるが、既存薬の適用やこれまでの研究の応用が活きれば、1~2年内にとりあえず目途がたつかもしれない。しかし、先進国から途上国まで広く行きわたるには一定の年数を要することになろう。

・その間は、感染防止の生活スタイルを、各国の制度、生活習慣を含めて一気に見直していく必要があり、それが始まっている。日本では、3月、4月、5月の外出自粛生活を経て、どのように行動すればよいかは、ほとんどの人々に分かってきた。

・しかし、また元の生活行動に戻してしまって、第2波、第3波のパンデミックがくるのではないかという心配はある。一方で、どう対処すればよいかは分かったので、リスクマネジメントはかなりできるようになった。

・リモートワーク、オンライン学習など、非接触型ワークライフバランスが次第に普及して、感染症をなんとか凌いでいく新しい生活様式が定着してくるという見方も有力である。

・SDGsに新型コロナウイルス感染症への対応をもっと明示的に盛り込む必要がある。その上で、企業のESGをどのように考えていくか。新型コロナショックをESGに的確に取り込んでいくには、3つの観点を重視したい。

・第1は、Eの環境に新型コロナウイルス対応を取り入れていく。感染を防ぎ、広げないように、自社で手を打つことはもちろん、社会的にも人々を守っていくためのイノベーションに取り組む。

・それを感染症対応ビジネスとして実行する。社会的価値に貢献する慈善事業でもよいが、できるならばビジネスとして成立するサステナビリティを追求してほしい。

・第2は、Sの社会にコロナ対策を組み入れる。自社の社員や家族を守るのはもちろんだが、グローバルなサプライチェーンを見直していく。生命と安全を確保し、働き方を改革していく。

・オフィス、店舗、工場、倉庫など、働く人々の動線を根本から再検討して、生産性の向上に結び付けていくようにしてほしい。DX化、自動化、スペース、空調など新しいデザイン(設計)が続々登場してこよう。

・第3は、Gのガバナンスに感染症対策の社会的価値重視をもっと取り入れて運営していく必要があろう。BCP(事業の持続性確保)はもちろん、日常のマネジメントのあり方も問われよう。

・最も大事なことは、新型コロナウイルス対策を気候変動に伴う自然災害と同じように、単に予測できない不測の事態ではなく、発生した時の手の打ち方を十分検討して準備してほしい。

・その時、コストがかかる、リスクが読み切れない、わが社でやることを超えている、という議論を先行させずに、自社の価値創造の仕組み(ビジネスモデル)を長期的な視点で検討してほしい。そこに取締役会の実効性を発揮してほしい。

・投資家はどのように考えて行動していくか。投資をして儲けたいと思うのは当然である。それは経営者と同じである。但し、リターンの上げ方が問われる。ESG投資は儲かるのか。簡単な答えは、儲かることもあれば損することもある、となるが、それでは全く不十分である。

・新型コロナショックで、苦境に陥っている企業、当面落ち込んでもいずれ立ち直ってくる企業、強みを活かしてコロナ対応を伸ばしていく企業などに分かれてこよう。需要、供給、資金の喪失を乗り切って、新たな需要の創出を実行しそうな企業に注目したい。

・ESGに感染症対応は必須である。その上で、ESGインテグレーション投資を実行したい。ESGだけで投資するわけではない。ESGも重要なファクターとしつつ、企業の経営力、成長力、リスクマネジメント力も別の視点からきちんと評価していきたい。

・ESGを含めて経営評価していくインテグレーション(統合)が望ましい。ステークホルダーにとっての社会的価値を重視しつつ、経済的価値とのバランスを図っていく。社会的価値と経済的価値は両立する場合もあるが、トレードオフの関係にある場合も多い。

・感染症予防システムを企業経営に組み込んで、これをコストではなく、リスクマネジメントを越えて、新たな価値創造に結び付けてほしい。ESGインテグレーションを通して、そういう企業に投資したい。

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