日銀短観(18年3月調査)について
- 大企業の業況判断DI(最近)は前回比低下しました。製造業は8期ぶりで円高も影響したと見られます。
- 18年度の設備投資、経常利益の計画は小幅マイナスですが、最初の調査としては良好な結果です。
- 人員や設備の不足感は依然根強く、賃金増加や設備投資が景気を押し上げる流れが続きそうです。
高水準ながら伸び悩み
本日、日銀短観(全国企業短期経済観測調査)3月調査が発表されました。注目度が高い大企業製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査(12月)比-2の+24でした。前回調査比低下は8期ぶりです。世界同時的な景気拡大や為替相場の安定を背景に業況の改善が続いていましたが、年初からの円高傾向などが影響したと見られます。大企業非製造業の同DIも同-2の+23でした。こちらは6期ぶりの低下です。
なお、同DI(先行き)も製造業、非製造業共に低下しました。DIが高水準な中で、先行き慎重な姿勢が続いています。また、中堅・中小企業の業況判断DIは引き続き堅調ですが、大企業に対して若干遅行する傾向があり、先行きについては同じく慎重です。
円高傾向が業況判断に影響したとの見方は、ドル・円相場の想定に表れています。前回調査まで18年3月末の想定は109円台でした。しかし、実績は106円台と小幅ながら円高に振れました。振れ幅が小さいため、懸念の度合いはそれほど深刻ではないと思われますが、足元の好調な業況に水を差したことは十分に考えられます。また、今回の調査では18年9月末、19年3月末共に109円台と、小幅な円安が想定されています。円安方向への想定は円高局面で見られる傾向があり、目先は円高局面が続くとの懸念が残っていると見られます。これが、企業業績に対する警戒感につながり、DI(先行き)に影響したとも考えられます。
人手・設備不足感根強い。今後の為替相場の展開がカギ
経常利益、設備投資の17年度計画(全規模全産業)は、経常利益が上方修正された一方、設備投資は下方修正されました。このうち、設備投資は、最終的に少し下方修正されるパターンが多く、好業績を背景に企業が投資を増やしている形は変わっていないと考えています。
一方、今回初めて調査された18年度の計画では、経常利益、設備投資共に、前年比小幅なマイナスでした。ただし、双方とも、最初の調査は慎重な数値になる傾向があります。双方の計画値は、急激に厳しい景気後退局面に陥らない限り、5%前後の経常増益もしくは設備投資増加が示唆されます。
生産・営業用設備判断DIと雇用人員判断DIを見ると、全体的に設備不足、人手不足がさらに強まっているようすがうかがわれます。製造業よりも非製造業、大企業よりも中堅・中小企業でより強い傾向にも変化はありません。これまで以上に、賃金や省力化投資に対する増加圧力が高まっていると見られます。
18年度については、世界、日本共に堅調な景気が続き、日本では+1%台の、潜在成長率(+1%弱と見られている)を上回る実質GDP成長率になると、アムンディでは予想しています。こうした中、為替相場の展開が波乱要因となっており、当面は政治・地政学リスク等によって、市場のリスク回避的な行動が強まる(円高に振れやすい)足元の環境が落ち着いてくるのかどうかが、企業の業況判断のカギになってくると考えています。
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