ECB理事会について~金融政策とユーロ相場の行方は?
2017/06/09
<投資信託>
- 現行の政策を据え置きました。デフレリスク後退を受け、声明文から追加利下げの文言を削除しました。
- 見通しは、成長率上方修正の一方、インフレ率は下方修正で、当面は慎重な政策運営となりそうです。
- 順調な雇用環境改善を背景に、来年は金融緩和が縮小方向に転じるとの見方は変わりません。
追加緩和の可能性ほぼなくなる
8日、ECB(欧州中央銀行)は定例理事会を開き、政策金利、資産購入プログラム(APP)を現行で据え置きました。APPによる資産購入残高は、5月末時点で約1.9兆ユーロとコンスタントに増加しています。ただし、公的セクター購入プログラム(PSPP)は、購入対象が主要国の国債に著しく偏重しているのが現状です。
HICP(統合消費者物価指数)は、5月速報で総合が前年同月比+1.4%、コア(食品・エネルギー・酒類・タバコ除く)が同+0.9%と、ECBのインフレ目標(+2%弱)を依然として下回っています。当面、金融緩和縮小の必要性は低いとの認識です。ただし、発表された声明文では「政策金利を、現状またはより低い水準で長期間維持する」の下線の部分が削除され、追加金融緩和の可能性が、現状ではなくなったという認識となりました。
政治、経済双方の状況改善でユーロには追い風
四半期毎に発表される景気、物価見通し(17~19年)は、実質GDP成長率が0.1%上方修正された一方、HICP上昇率は据え置きもしくは0.1~0.3%下方修正されました。原油価格が下方修正されたことが影響しました。
ただし、雇用環境の改善が今後も続くことから、18年には、コア指数でも+1%台が定着すると見込まれ、金融緩和が縮小に向けて動き出す可能性は十分あると思われます。今回の理事会で金融緩和縮小の議論はなかった模様ですが、次回以降、縮小の方策を探り始めてもおかしくありません。通貨ユーロは、域内での政治リスク後退に加え、金融緩和縮小の方向性を織り込む形で底堅く推移すると期待されます。
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