ブラジルの金融政策(6月)~金融政策スタンスと今後の為替相場展望
- 政策金利が2.25%に引き下げられました。景気後退によるインフレ率の大幅な低下に対応しました。
- 利下げによる景気刺激によっても、インフレ率は低位が続くと予想され、追加緩和も辞さない姿勢です。
- 構造改革再開方針、金融・財政政策による景気回復期待で、レアルの下落リスクは後退したと考えます。
インフレ目標達成へ緩和強化
ブラジル中央銀行(以下、中銀)は、6月16-17日のCopom※で、政策金利であるSELIC金利◇を3%から2.25%へ引き下げました(全会一致)。8会合連続の利下げです。コロナ禍による景気後退で、インフレ率が大幅に低下しており、景気を刺激してインフレ目標を達成すべく、一段の緩和強化に踏み切りました。
5月のCPIは総合、コア共に前年同月比+1.9%で並び、1999年1月以来の+2%割れとなりました。中銀は2020年末のCPIを前年比+2.0%、2021年末を同+3.2%と想定しています。利下げしたことから、前回会合(それぞれ+2.0%、+3.3%)から大きな変更はありませんでした。しかし、2021年末でもインフレ目標の中心値(+3.75%)には達しない見通しとなっています。中銀は、年内2.25%で据え置きを現時点では想定しているものの、状況次第では追加緩和も辞さない姿勢を維持しました。
※Copom(Comitê de Política Monetária):金融政策委員会 ◇SELIC(Sistema Especial de Liquidação e Custódi):決済・預託特別システム
コロナ後を見据える局面へ
ブラジルレアル(以下、レアル)相場は、経済活動再開が世界的に広がってきたことが好感され、5月中旬以降持ち直してきました。対ドル、対円共に5月13日が直近安値(NY終値ベース)で、6月8日までに、20%を超える上昇率となりました。しかし、その後はコロナ禍の再拡大に対する懸念が膨らみ、リスク回避的な市場心理が再燃し、下落しています。
金利低下は、レアルには基本的に逆風ですが、今回の利下げに対しては比較的冷静な反応でした。景気を正常化させるための政策判断が、市場には前向きにとらえられたと見られます。また、政府は、新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着いてきたとして、国営企業民営化、規制緩和、財政改革といった構造改革を再開させるとしており、これが市場に好感され、レアル相場を下支えした面もあります。年後半は、金融緩和、財政出動による景気回復が期待され、レアルの下落リスクは以前よりは後退してきたと考えます。
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