中国が目指す人民元のSDR構成通貨入り

2015/11/26

夏場にあれだけ世界中のマーケットを騒がせた中国株市場ですが、先月(10月)に開催された5中全会の前あたりから政策期待が相場を支える格好となり、11月に入ってからの上海総合指数は3,600ポイントを挟んで横ばいの動きが続き、最近ではすっかり落ち着きを取り戻しています。

そんな中、来週30日(月)には、IMF(国際通貨基金)が中国人民元をSDR構成通貨に採用する可能性が高まり、注目を集めています。採用が決まれば、国際的な準備通貨として認められ、人民元に対する信任が高まるとされています。中国は以前よりSDR構成通貨入りを働きかけていましたが、SDR構成通貨の見直しは通常5年ごとに行われますので、前回(2010年)に見送られて以来、念願が叶って「良かったね」ということになります。

予想通り、人民元の採用が決まれば、多くの国が外貨準備として人民元の保有を増やそうとするほか、海外から中国への投資が増えることなどが考えられます。もちろん、採用が決まっても、実際に組み入れられるまでのあいだに、金融システムの自由化や規制緩和などの改革をさらに進めなければなりません。現在も改革の歩みは少しずつながらも前進していますが、まだまだ規制は多いですし、そのピッチを速める必要があります。とはいえ、改革の進展はこれまでの中国当局の思惑によるコントロールの多くを放棄することでもあります。

足元の中国を取り巻く環境ですが、中国の景気減速傾向は依然として続いているほか、民間部門や地方政府の債務問題、それに伴う資金流出懸念など、人民元に対して下落圧力の方が強いように思えます。中国当局は金融緩和を進める一方で、資金流出対策として人民元売りの為替予約を制限したり、人民元買い・外貨売りの介入をするなど、一見して矛盾するような対応をしていますが、結果的に中国経済への不安を落ち着かせているのも事実です。そのため、人民元のSDR構成通貨採用に伴って改革が加速すれば、こうした微妙なコントロールが効かなくなり、中国経済に思わぬ悪影響を及ぼしてしまう可能性も考えられます。

中国への信任が高まるのか、不安が高まってしまうのか、人民元のSDR構成銘柄採用は意外と大きなイベントなのかもしれません。

 

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