中国主導の「一帯一路」と「AIIB」を結ぶもの

今週3月26日から29日の4日間、中国の海南省で「ボアオ・アジア・フォーラム」というイベントが開催されています。このイベント自体はあまり重要ではなく、日本国内での報道も少ない状況ですが、一部の中国ウォッチャーにとっては要注目となっています。その理由は、「中国の中長期的な経済・外交戦略構想の詳細が発表されるのではないか」という観測があるからです。

この中国が描く経済・外交政策構想のキーワードは「一帯一路」と呼ばれています。一帯一路という言葉は2013年ごろから登場しはじめ、最近では、全人代やAPECなど国内外を問わず、中国政府が絡む大きなイベントがあるたびにニュース等で耳にするようになりました。

一帯一路を一言でまとめると、「現代版のシルクロードを作ろう」というものです。一帯は「陸」のルート、一路は「海」のルートを指します。中国と欧州、そして中央アジア、東南アジア、西アジア、太平洋地域の諸国を結ぶ経済圏を築いて、共に繁栄していこうという内容です。

中国の歴史を振り返れば、前漢時代の張騫の西域派遣団から始まったシルクロード交易路の開拓、明の時代の鄭和が行った7 度にわたる大航海などが思い出されますが、一帯一路がカバーする範囲は、世界の人口の63%、GDPの29%を占める壮大な構想です。

また、この構想を進めることで、道路や鉄道、建設、海運、物流、エネルギー、通信、金融など、恩恵を受けると思われる業種は幅広く、中国が抱えている問題(内陸部の発展途上、過剰設備、過剰在庫、内需不足、資源の確保、国家の安全保障の強化など)の多くが解決につながるメリットと思惑があります。

その一方で、構想自体が中国主体による周辺国へのインフラ輸出、経済援助をねらいとしていることから、覇権国家中国への警戒感がないわけではありません。特に海ルートでは、南沙諸島をめぐる領有権問題などもあり、一筋縄ではいかない面もあります。

中国主導といえば、AIIB(アジア・インフラ銀行)をめぐっての報道が多く見られるようになりました。去る3月12日に英国がG7の中でいち早く参加に名乗りを挙げ、他の国々も参加を表明する中、日本は参加すべきかどうかといった議論が持ち上がっています。「中国主導によるAIIBは日米が主導権を握っているADB(アジア開発銀行)への挑戦」という構図で捉えられることが多い中、現代版シルクロード構想とAIIBが今後どのように進捗するのかは不透明ではあるものの、その背景には中国が抱えている問題の多さと深刻さが透けて見える気がします。

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