三段上げと「自己強化プロセス」

今週の国内株市場も強い動きが続いています。3月18日(水)の日経平均は、米FOMCという注目のイベントが控えていたにも関らず、終値で19,500円台に乗せて取引を終了しました。先週末(3月13日)時点は19,000円水準でしたから、3日間で500円以上も上昇したことになります。

実際に、日経平均の動きをチャートで辿ってみますと、足元はいわゆる「三段上げ」に突入しているように見え、「日本株の強さ」が感じ取れます。まず、年初からの下落が一服した後の反発局面が「一段上げ」です。この時の日経平均は約16,500円から17,500円台超えまで上昇しました。次の「二段上げ」は、しばらくもみ合った後、2月末にかけて19,000円台目前まで水準を切り上げた時期にあたります。そして3月に入って再びもみ合った後、今回の上昇という流れです。

この上昇期間のあいだ、相場の過熱感を指摘する声や高値警戒感が意識されながらも結果的に上値を更新してきたわけですが、こうした動きは、著名投資家であるジョージ・ソロスの投資理論にある「自己強化プロセス」に当てはまっているように見えます。自己強化プロセスを簡単に説明すると、相場の局面は以下の通りに分かれます。

(1):不明瞭ながらも潜在トレンドが発生

(2):一部の投資家によって、自己強化プロセスが始動

(3):トレンドの修正が試されるが、結局はトレンド継続を確認

(4):トレンドへの信頼感が増幅し、期待を伴って株価が上昇

(5):(3)~(4)を繰り返しながらさらに上昇、やがて現実との認識ギャップが生じる

(6):ギャップの修正で大きな調整が起こる

具体的には、株価調整を試す場面がありながらも、業績期待や賃上げ、IRへの注力、ROE重視の動きなど、直近の企業動向の材料が相場の先高感を強め、上昇トレンドへの信頼感と期待が高まっていくという状況で、上記の局面で言えば、足元は(3)~(4)の段階にあるといえます。そのため、さらなる上値の余地の可能性はまだあると言えそうですが、その一方で、やがて期待と現実とのギャップが認識される(5)の段階に移ると、相場が大きな調整に入るとされているため、そろそろ変化の兆しに対して敏感になる準備を頭の片隅に入れておく必要がありそうです。

 

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