注意しておきたい中国の基準金利引き下げ

去る2月28日の土曜日、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が、貸出と預金の基準金利を3月1日付けでそれぞれ0.25%引き下げると発表しました。これにより、中国の1年物の貸出金利が5.35%、同じく預金金利が2.50%になりました。

前回、基準金利を引き下げたのは昨年11月下旬でしたので、それから約3カ月後に追加利下げを決定したことになります。ちなみに、昨年11月の利下げは2年4カ月ぶりでしたから、かなり間隔が短くなっている印象です。

今回の利下げですが、直近で発表された中国の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で約5年ぶりの水準まで落ち込んだほか、生産者物価指数(PPI)も35カ月連続で低下しているなど、デフレ懸念が高まりつつあったこともあり、利下げそのものはあらかじめ予想されていた面がありました。また、3月5日から開幕する全人代(全国人民代表大会)を直前に控えたタイミングで発表されたことも想定の範囲内です。

サプライズとは言えない今回の利下げではありますが、発表を受けた3月2日(月)の上海総合指数が約1カ月ぶりの高値をつけており、利下げ自体は概ね好感されているようです。

とはいえ、もう少し状況を細かく見て行くと、喜んでばかりはいられないかもしれません。

まずは、ここでもう一度、利下げの内容について整理してみます。ポイントとなるのは預金金利で、実は前回の利下げから各金融機関に裁量権が付与されており、これが今回の発表で、1.2倍から1.3倍に拡大しています。つまり、実質的な預金金利は0.05%しか下がっておらず、今回の利下げの目的は貸出金利の引き下げがメインであることが推察されます。

貸出金利 5.60%→5.35% …0.25%の利下げ

預金金利 2.75%→2.50% …0.25%の利下げ

実質預金金利 2.75%×1.2倍=3.30% → 2.5%×1.3倍=3.25% …0.05%の利下げ

次に、中国人民銀行は、今回の利下げ発表前となる2月上旬に、預金準備率の引き下げを発表しましたが、とりわけ、主に中小企業に融資を行っている中堅銀行以下に対しては、預金準備率の引き下げ幅を拡大しています。さらに、2月の下旬には中国国務院が、中小企業を中心に法人税の減額や企業が負担する失業保険料の軽減措置も発表しています。

こうした矢継ぎ早に打ち出した政策発表から、中国企業(おもに中小企業)の資金繰り環境の悪化が透けて見えます。これまで、不動産価格や、地方政府の債務、理財商品や信託商品といったシャドーバンキングなどといったキーワードを切り口に、中国発の景気・金融不安観測が出てきては消えていきましたが、一連の政策の効果がマクロ指標になかなか現れてこない状況が続くと、「いよいよ」というシナリオが浮上することになるため、再度中国の動向を注意深く見守る場面に差し掛かったと言えそうです。

 

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