原油安を背景にしたリスクオフの先取り
2015年入りとなった今週の国内株式市場ですが、日経平均は大発会からの2日間で600円近く下落し、節目の17,000円台を下回るなど軟調なスタートとなりました。
その背景にあるのは、昨年末から売りの材料となっていた原油価格が、年を越しても下げ止まりを見せないことと、ギリシャ政局への不透明感が強まったことなどによる「リスクオフ」ムードの高まりです。とりわけ、原油安傾向については、エネルギーコストの減少によって、日本や米国などの資源消費国にとってはプラスという見方があるものの、足元ではそのメリット面は息を潜めています。
むしろ、現在はデメリット面の方にスポットライトが当たっている訳ですが、その例として、原油安による物価安が世界的なデフレをもたらすのではという見方のほか、原油価格の低迷が続くことによって、資源輸出国の歳入が減り、財政が悪化してしまうという懸念があります。元々、今年は米国の利上げ開始が想定されており、ただでさえ資源輸出国をはじめとする新興国からの緩和マネー流出が心配されている中、原油安がマネー流出にさらに拍車をかけるのではというわけです。
また、原油価格下落の要因の一つに、既存の産油国(OPEC)が需要の伸びない中、シェールオイルに対抗するため、価格よりもシェアの維持を図って減産を見送っていることが挙げられます。原油の需給バランスをとるにはシェールオイルの生産が鈍化するまで原油価格が下げ続けることになり、価格の低迷が長期戦になる可能性があります。
とはいえ、シェールオイル企業の限界生産コストは40~50ドルとも言われているため、既に足元の原油価格は底打ちしてもおかしくない水準に達していると考えることができます。ただし、ここまでの原油価格の下落ペースが速かったこと、今後も原油価格の低迷が続きそうなことで、採算割れとなったシェールオイル企業の資金繰りが悪化する懸念が生じることになります。
実際に、一部のシェールオイル企業は、レバレッジドローンやジャンク債市場で資金を調達しています。外資系金融機関のレポートでは、米ジャンク債市場の約20%をエネルギー関連が占めていると指摘しており、かつてのサブプライム危機と同様に金融市場がパニックになるのではという見方もあるようです。
もちろん、これらの不安シナリオの実現性については、時間をかけて見極めていかなければなりませんが、少なくとも足元の株価下落は、原油安によるリスクシナリオを「かなり」先取りしている印象があります。
一方、国内要因については、企業業績への期待と今月下旬に召集される通常国会を手掛かりとした政策絡みの物色が相場を支えると思われ、今のところは目立った悪材料はありません。しばらくは海外情勢の動向に左右されそうな状況ですが、リスクシナリオを先取りしている分、状況が一巡すれば株価の戻りも比較的順調になることが見込まれます。まずは、原油価格の下げ止まりと、それ以降の価格の落ち着きどころが待たれるところです。
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