「筋書き通り」のシナリオと「筋書きとは違う」シナリオ

2014/08/21

今週に入っても、日経平均の連騰が続いています。直近の下落幅(7月末の高値から8月8日の安値までの約1,005円)の「3分の2戻し」の水準も回復してきました。薄商いや日中値幅の小さい日が多いのが気になりますが一応堅調な展開です。

そんな中、米国では前回のFOMC議事録(7月29日~30日開催分)が公表されました。焦点となっている労働市場の質(労働参加率・賃金上昇)への評価については依然としてFRBのメンバー間で意見が分かれているものの、足元の米国景気が順調に回復しているという認識は概ね一致しており、出口戦略に向けた議論が活発化していることが明らかになりました。

市場ではその内容がタカ派とみなされ、早期の利上げを意識した米ドル買いと米10年物国債の利回り上昇が進みました。日本株市場でも円安の進行が好感され、この原稿を書いている21日(木)の前場も一段高でスタートし、節目の15,600円をつける場面がありました。また、22日に予定されている、いわゆるジャクソンホール会合(カンザスシティ連銀の経済シンポジウム)でのイエレンFRB議長の講演への注目も高まった格好です。

元々、ジャクソンホール会合自体への関心は高かったものの、「何だかんだ言っても、ハト派のイエレン氏は慎重な発言に留まり、市場への影響は限定的だろう」という見方が多かったのですが、議事録の意外(?)なタカ派の内容により、「もしかしたら何かしらの発言があるかも」というムードに変わった印象です。

米国金融政策の出口戦略に向けて議論が活発になったのは、米国景気がFRBのシナリオ通りに進行していることの表れでもあります。このまま行けば、市場は利上げを織り込んでいく格好となり、米国の金利上昇による利回り格差を背景としたドル高/円安が見えてくることになります。円安が進めば日本株にとってはプラスとされていますし、アベノミクスでも、異次元の金融緩和などを通じて円安に持っていくことで、景気回復を刺激していくというシナリオを描いていました。

ただし、足元の国内の貿易統計やGDP成長率などの統計を見ても、輸出が思っていたほど伸びておらず、円安のメリットよりも輸入増による調達コストのデメリットの方が大きくなっているものも多くなっており、今後は円安の進行だけで株価が素直に好感されにくくなる可能性もあります。シナリオが狂い始めたとまでは言い切れないものの、「景気の回復ともに企業業績が伸び、賃金や物価が上昇し、デフレから脱却」という好サイクルに突入している段階ではなく、筋書き通りではないと言えそうです。証券大手3社も今週20日に、2014年度と2015年度の経済見通しの下方修正を発表しています。

また、21日の日本経済新聞朝刊では、消費税10%に備えて、来年度予算で景気対策用の予備費を1兆円程度確保することの検討を始めたと報じています。消費税8%から10%への引き上げは今年12月に最終判断される予定ですが、消費税率の引き上げについてはシナリオ通りに進んでいるようです。

 

 

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