買いの主体
今週の株式市場は、週初こそ日経平均が取引時間中に15,200円台に乗せ、4月の戻り高値(15,164円)を超える場面もありましたが、その後は15,000円を下回る展開が目立っています。これまでの急ピッチな上昇は「単なる戻りの一環」という見方と、「新たな上昇相場の始まり」という見方に分かれていますが、とりあえず両者のコンセンサスである戻り高値の水準でいったん上昇が止まった格好です。
そんな中、東証が発表している「投資部門別売買状況」が注目を集めています。市況ニュースなどで、「外国人が大幅に買い越し」、「個人がやや売り越し」と報じられている元となる統計データです。週間ベースの統計で、原則として前週末時点の集計分が翌週の第4営業日の夕方に公表されます。要は、前週は「誰が買ったのかもしくは売っていたのか?」を見ていくわけです。
注目を集めたのは、日経平均が急反発を開始した5月の第3週(5月19日~23日)と、第4週(5月26日~30日)のデータです。個人や外国人が売り越しとなっている一方で、大きく買い越していたのが信託銀行でした。東証1部のデータでは、第3週で1,771億円、第4週で2,466億円の大きな買い越し額でした。信託銀行が買い越す事自体は取り立てて珍しいことではないのですが、第4週の買い越し額が週間ベースで2009年3月以来の規模だったことと、月間ベースでも3月、4月と売り越しだったのが、突如として大きな買い越しに転じたことが驚きを誘いました。
また、信託銀行という投資部門ですが、信託銀行が自分の意思で売買をすることは少なく、信託銀行に資金を預けている顧客(年金など)からの指示に基づいて売買を行うものが多くを占めています。ですので、はっきりとした事は不明ですが、直近の株価上昇の買いの主体は年金なのではという見方が出てきているわけです。
では、なぜ信託銀行が突如として買い越しに転じたのかについては、「消費増税後の影響が一巡しつつある状況の中で、日本経済に対する見通しを前向きに捉えたのではないか?」、また、折しもGPIFなど公的年金改革を議論している最中でもあり、株式への資産配分増を見越して他の年金が買いを入れたといったことなどが考えられます。
今後は、信託銀行の買い越し基調は続くのかなどがポイントになるわけですが、まずは、この原稿を書いている12日の夕方に公表される、先週分(6月2日~6日分)を待つことになります。また、日経平均の値動きと月間ベースの信託銀行の売買動向を振り返ってみると、信託銀行が前回買い越しだったのは今年の2月(約1,627億円)でした。当時の日経平均は今回と同様に、14,000円割れが意識される中で踏みとどまり、15,000円台まで急ピッチで1,000円ぐらい回復するという相場展開でした。年金の資産運用は、「安くなったら買い、高くなったら売る」というスタンスですから、前回の日経平均の回復幅を考慮すると、さらに買い進んでいくのかは微妙なところだと言えます。そのため、さらなる相場上昇には、次の買い主体として外国人や個人などが動意づく必要があると考えられます。
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