政策依存の中国株市場
今年に入ってからの中国上海総合指数の動きを辿ると、大体2,000ポイント~2,150ポイントのやや狭い範囲での展開が続いています。基本的には中国景気の減速懸念を受けて下落し、2,000ポイント付近になると政策期待で持ち直すというパターンを繰り返している格好です。
今週も13日(火)に、中国国家統計局から4月の各種指標がまとめて発表されましたが、総じて冴えませんでした。主に発表されたものは、工業生産、小売売上高、固定資産投資などですが、いずれも前回(3月)発表分を下回り、予想にも届かない結果となりました。
発表を受けた上海総合指数は一時下げ幅を広げたものの、引けにかけて下げ幅を縮小させる反応を見せました。その後も比較的安定的に推移しています。今回も景気刺激策への期待と思惑が燻り、これまでと同じパターンとなっているようです。
実際に、今年に入ってからの主なものを整理してみると、既に計画中の鉄道インフラ整備の拡充をはじめ、中小企業を対象とした減税、輸出業者に対する税還付による貿易促進、雇用を創出した企業に対する税優遇措置の延長などです。ついこの間まで、「短期的な減速に対する景気刺激策は講じない」という発言があったのとは裏腹に、当局からは小出しに「プチ景気対策」が出てきています。また、一部の地方都市では不動産購入の条件緩和を実施したりする動きも出てきています。
さらに、預金準備率の引き下げなども期待されているようです。預金準備率とは、中国人民銀行が各銀行に強制的に資金を預けさせているものです。これが引き下げられると、銀行の手持ち資金に余裕ができ、貸し出し等で市中に出回るマネーが増えることになります。いわば一種の金融緩和になります。実は、4月から農村部の一部の銀行を対象に引き下げが始まったため、「全国に拡大するのでは?」という思惑につながっているようです。日本株市場も日銀の追加金融緩和観測を材料にした展開がありましたが、中国でも似たようなことが起こっています。
とはいえ、当局が目指しているのは「新常態(ニューノーマル)」という言葉にもある通り、構造改革を推進して、投資・外需主導の急成長から消費・内需を中心とした経済成長への質の転換です。そのため、今後も当局が打ち出す政策自体は景気を再加速させるというよりも、改革にともなう痛み(景気減速)を悪化させないことが目的となります。
来週20日(木)も、注目されている5月の製造業PMI速報値(HSBC版)が発表されるため、景気減速傾向が確認される結果となれば、政策期待が再び高まる可能性がありますが、市場と当局との間にギャップがあることを踏まえると、中国株市場が大きく上昇する展開はしばらく見込みにくい状況が続きそうです。
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