中国全人代~2014年の経済成長率目標を据置き
3月入りとなった今週の株式市場は、ウクライナ情勢など、いわゆる「地政学的リスク」への警戒感が高まって月曜日は一段安でスタートしました。ただ、その後は持ち直し、日経平均は先週と同様に15,000円の水準を意識した展開となっています。
ウクライナをめぐっては、ロシアや米国、EU諸国の思惑が絡んでいますが、それぞれ武力衝突などの最悪の事態は避けたいところでしょうし、実際にしばらくはその可能性が後退していることが株価の戻りにつながっています。ただし、お互いに「どこで引き下がるか?」という落としどころがまだ明確になっておらず、事態の収拾には意外と時間がかかるかもしれません。微妙な小康状態の中、来週末のメジャーSQを控えて値動きが荒っぽくなりそうです。
また、今週は中国で水曜日(5日)から全人代(全国人民代表大会)が開幕しました。厳密にはかなり異なりますが、全人代は日本の国会みたいなイメージで、毎年3月に開催されます。主な経済政策については、昨年11月の三中全会や12月の中央経済工作会議など共産党のイベントですでに決定されており、国のイベントである全人代はそれらの政策を承認するといった位置付けのため、全人代は注目度が高い割に、何か目新しい決定事項が次々と出てくるわけではないというのが実情です。
そのため、相場にとって重要となるのは、開幕式で李克強首相が行う「政府活動報告」の演説です。今年の経済成長率の目標はどのくらいなのか、今後の政策運営の方針はどうなのか、どの分野の課題に力を入れて取り組むのかといったことから、株式銘柄やセクター探しの材料となります。
最大の注目点だった、2014年の経済成長率目標は7.5%でした。全人代の開幕前は改革の実行を重視して7%に下方修正するのではという見方もありましたが、結果は3年連続の目標据置きとなりました。中国は今後も景気優先のアクセルと改革優先のブレーキを上手く踏み分けながら政策運営をしていくわけですが、今回の据置きの数字自体は予想の範囲内ではあるものの、最近は冴えない経済指標が目立っていたこともあって、景気に配慮した印象です。
とはいえ、実際のところはアクセルとブレーキの踏み分けは結構難しくなるかもしれません。目標値(7.5%)は景気に配慮したとはいえ、李首相は演説で「改革が今年の最優先項目」であることを繰り返し強調しています。例えば、2014年の固定資産投資の伸び率目標を17.5%に設定し、2013年の実績(約19.6%)から引き下げました。2013年の中国経済成長率の牽引役となったのが投資でしたから、同じ経済成長目標を達成するには、投資以外の成長エンジンや、投資減少によって発生する雇用喪失などへの対応が必要となります。また、金融システム改革を進めていく上で、影の銀行問題や地方政府の政務問題が障害となる可能性にも注意が必要です。
また、今回の演説では、日本を想定した歴史問題に言及したほか、2014年の国防予算(日本円で約13兆円)が4年連続の2ケタ増となるなど、軍事面強化の印象も強くなっています。その裏で見逃されがちなのは国内の治安維持のための費用です。実はここ数年、治安維持費用が国防費を上回っているのですが、今のところ、全人代に提出された予算案には治安維持に関する今年の予算総額が公表されていません。勘繰り過ぎかもしれませんが、国内の社会不安もリスクとして意識しておく必要がありそうです。
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