雇用統計による評価軸のシフト

2014/01/10

明けましておめでとうございます。

2014年最初となった今週の日経平均は、大発会でいきなり昨年末比382円安となり、その後も軟調な展開となっていますが、昨年末からの強気ムードが変わったと見る向きはあまり多くないようです。今週末は注目の米12月雇用統計が控えていることもあり、上値を追いづらかったので、利益確定の売りが目立ったというのが自然かと思われます。

直近のチャートでも、12月に入ってからの日経平均は、「米国のイベント前に軟調、イベント通過後にポンと上昇」という傾向になっており、この流れが続くのであれば、連休明けの一段高に期待したいところです。まずは結果を受けた米国株市場の反応待ちの状況です。

今回の米雇用統計が注目され、警戒されているのは、米国の景況感と金融政策のバランス関係がシフトするかもしれないからです。最近になって、今回の雇用統計の結果が強すぎると、前回のFOMCで決定した量的金融緩和の縮小ペースが加速するのではないかという見方が、にわかに強まってきました。前回のコラムでも触れたとおり、思ったよりも早く出口戦略が「実感のないもの」から「実感のあるもの」に、評価軸がシフトするかもというわけです。

今週発表されたFOMC議事録(量的緩和縮小を決定した会合分)では、「資産購入の効果低下と金融安定に対するリスクを認識」、「メンバーは慎重な緩和縮小を支持」といった内容が示され、量的緩和からの脱却を志向しつつも、そのペースは慎重に見ていくというスタンスとなっており、米雇用統計が「そこそこ」の改善であれば、市場の反応は大きな波乱はないと考えられます。

また、今回の雇用統計では、非農業部門雇用者数に比べて影の薄かった失業率にも注目が集まっています。というのも、量的緩和が終了したその先には、ゼロ金利の解除、利上げという流れなのですが、FRBは突然の利上げによって市場が混乱しないように、対話を円滑に進めるための判断基準を提示しています。現在その基準となっているのが失業率「6.5%」です。

前回(11月分)の失業率は既に7%まで低下しているほか、今回(12月分)も同水準の予想が多くなっています。米国経済が順調に推移するならば、6.5%まで低下するのはそう遠くない未来です。そのため、今回の失業率の結果が良かった場合、ゼロ金利解除の判断基準を6.5%からさらに引き下げるのか、それとも判断の評価軸が「失業率」から「期間」にシフトしていくのか、次回のFOMC(1月29日)に向けての思惑が高まりそうです。

話はやや逸れますが、個人的にはFOMC議事録にあった、「資産購入の効果低下と金融安定に対するリスクを認識」が気になります。量的緩和を模索している米国とは反対に、4月に消費増税を控える日本では、日銀による追加緩和観測が高まるなど、量的緩和の拡大基調となっています。2013年はアベノミクスの矢のひとつ「大胆な金融緩和」が歓迎され、株価を大きく上昇させました。今のところは考え過ぎの域を出ないと思いますが、FOMC議事録にあるように、量的緩和に対する評価軸が歓迎からリスクへシフトしてしまうことには注意が必要なのかもしれません。

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