9月イベント前に浮上したリスク回避材料

2013/08/29

イベント目白押しの9月を前にした8月最終週の国内株市場は、前週と同様に薄商いが続き、様子見ムードの中でのスタートとなりましたが、水曜日(28日)には、シリア情勢を背景にリスク回避の動きが強まり、日経平均が一段安、為替市場も円高が進行しました。

9月に入ると、「米国の量的金融緩和縮小」と「国内の消費税引き上げ判断」の2大テーマがいよいよ本格的に動き始めると思われるほか、9月の中旬以降からは再び企業業績にも注目が集まり、上方修正観測などで株価の底上げ期待もありそうです。一方で気になるのは、先週末(8月23日)時点でも3兆円近く積みあがっている信用買い残高などの需給要因による戻り待ち売りや、冒頭でも触れたシリア情勢など、海外からのリスク回避要因です。

一般的に、リスク回避モードにスイッチが入ると、「安全」とされるところに資金が流れます。実際に、27日の外国為替市場では円が買われたほか、米国市場でも債券が買われて10年債利回りが約2週間ぶりに2.70%まで低下する場面がありました。その主な背景はシリア情勢への警戒ですが、それともう一つ、米連邦政府の法定債務上限が迫っていることが意識されはじめたことも見逃せません。

米政府の債務上限が注目を集めるのは春先以来なのですが、今週の26日にルー米財務長官が、「米議会が債務上限引引き上げで速やかに行動しないと、10月半ばに資金がなくなってしまう」と議会指導部に宛てた書簡で警告したことで、リスク材料として再浮上しました。現在の米政府の債務上限は約16兆7,000億ドルで、既に5月にはその上限に達していたのですが、デフォルトを回避するための緊急措置を実施することで、これまで何とかやりくりしてきました。それが、さすがに限界に近づいてきたわけです。

米議会は昨年末に「財政の崖」問題をめぐって、与野党の対立が深まり、ギリギリのところで危機を回避したことは記憶に新しいですが、過去に遡ると、2011年夏には同じく債務上限の引き上げ交渉が難航し、米国債が格下げされた経緯があります。米議会が開会されるのは9月9日以降の予定のため、9月のイベントにまたひとつ注目材料が加わったことになります。

8月の株式市場は、材料や手掛かり不足で「値動きはあるが方向感がない」状況が長く続き、イベントが相次ぐ9月以降の相場トレンド発生を待っている投資家も多いと思いますが、ここまでイベントが多くなると、結局、「見極めるべき材料が次々にやってくるので動くに動けない」という展開も相場シナリオのひとつとして用意しておく必要があるかもしれません。

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