中国地方政府債務の全国調査開始

2013/08/02

8月入りとなった今週木曜日の国内株市場ですが、日経平均が14,000円台を回復するなど大きく反発してのスタートとなりました。まだ米7月雇用統計が残っているとはいえ、今週の注目イベントのひとつだったFOMCが無難に通過したことで、最近の株価下落による値頃感から、好決算銘柄を中心に見直し買いが入り、さらに、前場の途中に発表された中国7月製造業PMI(CFLP版)が予想外に堅調だったことも安心感につながり、株価上昇に弾みがついた格好です。

当コラムでも話題に採り上げることが多くなっている通り、引き続き中国情勢への注目度は高いですが、今週の中国株市場は4日続落でスタートしたものの、約5ヵ月半ぶりとなるリバースレポ(売却条件付きの債券買い入れ)が実施されて資金需給警戒が和らいだことや、今週開かれた中央政治局会議において、今年下期の政策の微調整、つまり、景気に配慮した政策が今後打ち出される期待感が高まったこともあり、その後は持ち直す展開となっています。

今回注目したいのは中国株市場の週初の下落局面についてです。週末(土曜と日曜)の動きが下落の要因になったと考えられます。ひとつは、土曜に発表された1-6月期の工業企業利益の伸びが鈍化し、景気減速懸念が高まったこと。そしてもう一つは、日曜に中国国家審計署が地方政府の債務状況の監査を全国的に実施すると発表したことです。監査の詳細は不明ですが、かねてより警戒されている地方政府の債務状況や返済能力などを中心に調査するものと思われます。

実は、全国的な地方政府の債務状況に関する公式統計の発表は2011年6月に行ったのが最後で、その時は2010年末時点で地方政府の債務残高は10.7兆元と発表されました。これだけ懸念材料になっておきながら、その後の債務状況の経緯が分からず、今まで何をしてきたのかとツッコミを入れたくなるところですが、少なくとも不透明だった実態のあぶり出しに着手すること自体は評価できます。

今回実施される監査結果がいつ、どのように発表されるかは分かりませんが、その参考になるものとして、先月6月10日に国家審計署が発表した別の調査結果があります。これは、全国ではなく36地区で調査された債務状況です。ちなみにその内訳は、15の省とその省政府の所在地(日本の県庁所在地にあたる)、3つの直轄市とその市轄区が調査対象でした。そして、36地区における2012年末の債務残高は3.85兆元で、2010年末から12.9%増加したと発表しています。この増加割合を、先程の全国の債務残高(2010年末で10.7兆元)にあてはめると、2012年末の債務段高は少なくとも12兆元程度はあると考えられ、さほど驚くべき数字ではない印象です。

ただし、気になるのは債務内容の構成です。債務は、「地方政府に返済責任があるもの」、「地方政府が担保責任を持つもの」、「地方政府が返済と担保の責任を持たないもの」に分けられますが、36地区での構成比はそれぞれ47.9%、23.6%、28.5%でした。2010年の全国調査の際には、この構成比が62.6%、21.8%、15.6%となっていたため、地方政府に返済責任がある債務が大きく減少し、地方政府に責任がない債務が大きく増加しており、それだけ不良債権化するリスクが高い債務が増加していることが分かります。

今回の全国調査は債務残高の規模だけでなく、債務内容の構成状況についても見極めポイントになりそうです。

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