盛り上がりに欠ける参院選後相場と中国指標
与党の大勝に終わった参院選を受けた今週の国内株市場ですが、方向感に乏しく、取引量も少ない展開が続き、イマイチ盛り上がりに欠けています。
安定政権が誕生したことで、アベノミクス相場の第二幕へという期待がある一方、これまで安倍政権が打ち出してきた金融緩和や財政出動とは違い、今後は消費税の増税実施判断や社会保障制度改革、規制緩和、構造改革など、「経済成長と財政再建の両立」といった難しい課題に取り組む必要があります。例えばTPP協定交渉についても、反対派の与党議員が多く当選するなど、国会のねじれは解消しても与党内の調整が待ち構えているため、果たして期待通りに進むのかが現時点では正直微妙なところといったムードが相場に反映されている印象です。
もっとも、本格化している企業決算の見極めをはじめ、FOMCや雇用統計などの米国のイベントが来週に控えた様子見があることも、相場の小動き・薄商いにつながっている面がありますが、それらが一巡した後に、安倍政権が成長戦略・財政再建の両面において、「何をどう実行していくのか」を示すのにグズグズしているようだと、政策を催促する格好で株式市場が軟調となるシナリオも想定されます。安倍首相は秋に開かれる臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置付けていますが、それまでに消費税や政策実施の地ならしといった、何らかの材料が出てくるかが8月相場の注目点のひとつになりそうです。
また、今週の相場の重石となったものが、24日に発表された中国の7月製造業PMI(購買担当者景気指数)です。その結果は47.7となり、市場予想(48.2)を下回ったほか、3カ月連続で景気判断の分かれ目となる50も下回り、その上、11カ月ぶりの低水準と、中国の景気減速をあらためて意識させる内容でした。ただし、冴えない結果が却って中国当局の景気対策への期待につながり、上海株市場が下げ渋り、香港株市場が上昇に転じました。実際に、中国国務院はPMIが発表された当日に、輸出促進策や中小企業に対する付加価値税の減免措置、鉄道建設の加速などの対策を打ち出しています。
中国は現在、李克強首相による経済構造の改革を優先させる政策、いわゆる「リコノミクス」に取り組んでいますが、その最大の目的は、規制緩和や構造改革を通じて、中国の経済構造をいずれ限界がやってくる投資・外需主導の急成長から、消費・内需主導の安定成長にシフトさせていくことです。中国主導部は「ある程度」の経済減速を受け入れてでも改革を進めていく姿勢を示しています。そして、「ある程度」の基準は、「GDP成長率が7%以上」、「物価上昇率3.5%以下」であるとされています。
つまり、今後中国当局が打ち出す政策は、大規模な財政出動など目先の景気浮揚をねらったものでなく、「リコノミクス」を進めていく過程で起こり得る、経済の急減速を抑えるためのものが中心となり、小粒かつ小出しの対応が予想されます。そのため、中国情勢は低位安定がメインシナリオとなりますが、当局がコントロールしきれなくなった時の下振れリスクには引き続き注意が必要となりそうです。
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