注目される米中「二つのペース」
米雇用統計後となった今週の国内株市場ですが、終値ベースでみた日経平均はこれまでのところ堅調に推移しています。非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上回ったほか、過去2カ月分も上方修正されました。その結果を受けた米国市場が株高・ドル高円安で反応したため、量的緩和政策の早期縮小を市場が織り込み始め、景気改善傾向を素直に好感したと言えます。
ただし、堅調とはいえ、日経平均は14,500円を抜け切れず、日本株市場の立ち位置は微妙なバランスの上にあると言えます。それは月曜日の動きが象徴しています。雇用統計の結果を好感する米国株高に引っ張られる格好で上昇しましたが、アジアを中心とする新興国株市場では、量的緩和策の早期縮小による資金引き揚げが警戒されて軟調だったことで、下げに転じて終了しました。
もっとも、企業決算シーズンと参院選の動向待ちで動きづらい地合いというのはありますし、そもそも雇用統計を好感した米国市場では長期金利が比較的ハイペースで上昇しており、ローン金利の上昇など、景気への悪影響も一部で心配されています。
そのため、今後の視点は「量的緩和政策縮小」の有無から、「どのくらいの規模で、どのくらいのペースで縮小するのか」に移っていきます。とはいえ、11日に公表されたFOMC議事録やバーナンキFRB議長の講演では、緩和縮小と緩和継続の両方に言及しており、いまいちハッキリしません。マクロ指標と当局の反応をみながら、これまでの新興国からの資金流出観測や米長期金利の上昇傾向の落ち着きどころを探っていくことになります。
また、引き続き中国の景気減速に対する警戒感が高まっています。今週は貿易統計が発表されました。その結果は予想に反して前年同月比で減少しました。最注目の4-6月期GDPをはじめとする主要経済指標の発表を来週15日に控える中、不安が高まる格好となりましたが、中国株市場の反応は、景気減速警戒が政策期待につながり、結果として反発しています。ただ、中国の現指導部は多少の景気減速や市場の混乱を覚悟してでも、これまで着手できなかった経済構造の改革を推進していく姿勢を崩しておらず、現時点であまり大きな政策は期待できないことと、当局はどこまでの景気後退を許容していくのかを見極めていくことになります。
ちょうど、今週10日~11日のあいだ、米中両国の外務、経済担当閣僚らが安全保障・経済分野の懸案を中心に話し合う米中戦略経済対話がワシントンで始まりました。対話の内容もさることながら、米国の量的緩和策の縮小と中国の景気減速という、両国の「二つのペース」の速度感にも注目が集まります。
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