期待の継続と現実のキャッチアップ

2013/04/05

新年度入りとなった今週の国内株市場ですが、日経平均が初日の2日間で394円下落するなど、いきなり軟調なスタートとなりました。売りのきっかけのひとつになったのが、4月1日に発表された日銀短観(企業短期経済観測調査)です。

その内容を見ると、もっとも注目される大企業製造業の業況判断指数(DI)がマイナス8となり、前回(12月のマイナス12)から3四半期ぶりの小幅改善となりました。先行きについてもマイナス1で、さらに改善が見込まれています。同じく、大企業非製造業のDIもプラス6に改善したほか、先行きもプラス9となっています。業種別(全28業種)では、改善が18業種、悪化が6業種、横ばいが4業種でした。また、2013年度の経常利益計画も全産業・全規模で5.9%増益の見通しとなっています。

とはいえ、事前の市場予想をやや下回ったほか、2013年度の設備投資計画が大企業・全産業で前年比2.0%減と依然として慎重であること、さらに、中小企業の製造業DIについてはマイナス19と前回(マイナス18)より悪化しているなど、力強さに欠ける面も窺えます。以前、このコラムでも採り挙げた法人企業景気予測調査とほぼ同じような結果となり、企業マインド好転の兆しは見られるものの、本格的な回復はまだ時間がかかりそうです。

これまでの株式市場は企業業績の回復を織り込んで上昇してきた面がありますが、今回の法人企業景気予測調査や日銀短観などのマクロ指標の結果からは、「思っていたよりも回復のペースが緩やか」で、現実のキャッチアップが確認できなかったと言えます。その一方で、大企業製造業の想定為替レートが1ドル=85.22円と現在の水準よりもまだ円高であり、業績上振れ期待も残っています。そのため、今月の後半から本格化する国内企業の決算発表を見極めていくことになりますが、まだしばらく日数があるため、業績相場に移る前にひとまず売りが出た格好になったと思われます。

また、現実を見極めるという意味では、アベノミクスそのものに対しても、冷静な評価が行われる場面がそう遠くない未来にやってきます。これまでは「3本の矢」の「矢」そのものが評価の対象でしたが、これからは放たれた「矢」の強さや向かう先である「的」が焦点となります。期待を持続させることと、現実のキャッチアップを促す舵取りのバランスと具体性が求められてきます。

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