選挙後の株価上昇は続くのか

2012/12/21

先週末に行われた衆議院選挙は、自民党(294議席)と公明党(31議席)が合わせて全議席の3分の2以上を獲得する結果となりました。先月(11月14日)の野田首相の衆院解散表明から約1カ月あまり、期待先行を織り込む格好で日経平均は約12%上昇していたため、選挙実施をいったんの節目として、株価の調整があるのではという見方も多くありましたが(すみません、私もその中に一人でした)、実際には選挙後も株価の上昇基調が続きました。というか、よりその基調が強まっているとさえ感じられる動きを見せました。

季節的に忘年会シーズンの真っ只中ですが、現在の国内株市場も、一次会の流れのまま二次会に突入しているという印象です。一次会に参加できなかった投資家も二次会から合流し、売買も盛り上がっています。とりわけ、19日の日経平均終値は4月3日以来の1万円台を回復、前日比の上昇幅も今年最大となり、東証1部の売買代金もSQを除くと、東日本大震災直後の2011年3月23日以来、1年9ヶ月ぶりの多さだったことなど、久々の大賑わいでした。

選挙後の株価上昇は、自民党を中心とする新政権が衆議院において磐石な基盤を得たことで、政策運営が行いやすくなることや、日銀に対しても金融緩和や物価目標を要請する圧力が強まることが見込まれ、こうした日本の構造変化の息吹きを感じ取った投資家による新たな買いが背景にあると思われます。特に、政治面による金融緩和を活かす環境整備が意識されていることが大きく、これまでにも何度か触れてきた通り、政府と日銀の取り組みがそれぞれ「車の両輪」として機能し、デフレ脱却や景気回復への期待につながったことで、株価の先高感が演出されたといえます。

今後は、来週の特別国会で新内閣が発足し、年明けの通常国会を控えて、「期待の先取り」から「政策の実現度」を見極める相場に移行していくと思われます。成長戦略や規制緩和などを中心に、国内の経済成長に現実味が増せば、日経平均は年度末にも1万1,000円台までの上昇も有り得ると見ています。

とはいえ、期待先行の相場は「いいとこ取り」で上昇していきますが、現実を見極めていく相場では、マイナスの材料にも視点が向かいます。現在のところ、新政権は10兆円規模の補正予算や、200兆円規模とされる国土強靭化計画などを進めようとしていますが、その一方で、2020年度までにプライマリーバランスを黒字化するという財政再建目標の足枷があります。つまり、政策実施の財源確保の動向によっては、財政悪化による長期金利の上昇や格下げ懸念などの課題も抱えているわけです。

米格付け会社のムーディーズは18日付のリポートで、「財政を維持するため、効果的な政策がなければ、信用上の課題はさらに深刻になる」と指摘しており、新政権は経済成長によるデフレ脱却とともに財政再建の道筋も同時に示して行く必要があります。その上、2014年の消費税引き上げも迫っているため、時間的猶予も限られ、政策推進のスピード感も求められます。

先日、安倍自民党総裁は日銀に対して2%のインフレターゲットと政府と日銀の政策協定(アコード)を要請しましたが、最大の関門は消費者のインフレ期待を高めること(デフレマインドの解消)です。ただし、財政出動を中心とする従来型の政策ではなかなか解消できなかったのも事実です。そのため、民間の知恵や工夫を活かす大胆な規制緩和や税制の見直しなどの政策の行方がポイントになってくると思われます。

対中国などの外交や日銀人事なども含めると、今後の相場を見ていく上では、年初からの3ヶ月間の動きが特に重要となりそうです。また、外部に目を向ければ、米国では「財政の崖」をめぐる協議が続いていますし、小康状態の欧州でも財政懸念が未だに燻っているほか、来年はイタリアやドイツで総選挙が予定されているため、外部発の材料による下振れリスクが残っていることにも注意が必要です。

現在も宴が続いている足元の株式市場も、テクニカル面では、選挙後の日経平均のローソク足(日足)は変則的な「三空踏み上げ」、「上位の陰線孕み足」などの売りシグナルが出ています。さすがに短期的な上昇一服や調整があってもおかしくない状況(二次会の終焉)なのですが、現在の市場は売りを吸収するだけの買い意欲の強さがあり、このまま年末まで勢いが続く可能性もあります(三次会に突入)。ただし、海外勢がクリスマス休暇に入ることや、三次会の目玉イベントが来週の特別国会ぐらいしかないことを踏まえると、上値も限定的になると思われ、相場の深追いは慎重にすべきタイミングだと考えられます。

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