Will Smart(175A)地方交通支援等への事業領域拡大とシステムパッケージ強化で成長目指す
モビリティ業界のDXを推進するシステムの開発と運用サービスを展開
地方交通支援等への事業領域拡大とシステムパッケージ強化で成長目指す
業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦
◆ モビリティ業界のDXを推進するシステムを提供
Will Smart(以下、同社)は、IoT注1とWebシステム開発技術を活用し、人と物の移動に関わるモビリティ業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するシステムの開発と運用サービスの提供等を行っている。
同社の事業セグメントは、モビリティ業界の企業を顧客としてシステム開発と運用サービス等を行う「モビリティ」セグメントと、海外のモビリティ機器を輸入し、国内の小売事業を行う商社向けに販売する「インポート」セグメントからなる。23/3期の売上高構成比は、モビリティが91.5%、インポートが8.4%であった(図表1)。インポートについては、円安による採算悪化等により、25/3期に撤退の予定であり、新規の契約は行っていない。
◆ モビリティの主要サービス
同社では個別システムの受託開発に加え、モビリティ業界向けのシステム開発やサービスを提供するプラットフォームとして「Will-MoBi(ウィルモビ)プラットフォーム」を構築し、その上で各業務に応じたシステムパッケージの提供も行っている。主要なサービスとして以下の4つを提供している。
1) 総合情報配信サービス
総合情報配信サービスは創業時からのサービスで、デジタルサイネージ注2を使って、交通機関、公共空間、屋外、店頭等の場所で、交通機関の運行情報や施設の館内情報等を発信するサービスである。
交通機関関連では、九州旅客鉄道(9142東証プライム)が運営する駅での列車位置情報や運行情報の提供、京王電鉄バス(東京都府中市)が運営するバスターミナル東京八重洲へのシステム納入等がある。バスターミナルのシステムでは、バスを運行する複数の会社のデータを統合して統一した情報として配信し、音声案内等の他の機能と連携して画像以外の情報の配信を行っている。
Will-MoBiプラットフォームではデジタルサイネージによる情報配信技術を活用し、パッケージサービス化したデジタルサイネージ導入支援サービス「Will-Sign(ウィルサイン)コンテンツパッケージ」を提供している。同パッケージは簡便なシステム導入に加え、多言語対応やスマートフォンとの連携等の機能を持ち、災害発生時の緊急情報配信等への利用も想定している。
2) クラウド化支援サービス
クラウド化支援サービスは、顧客のオンプレミス型の販売システムや予約システムのクラウド化、新規事業の販売系基幹システムの開発を行っている。
3) モビリティシステムサービス
モビリティシステムサービスは、車載デバイスで取得した車両データ(位置情報、燃料残情報、車両情報等)を活用し、カーシェア等の車両管理に利用されるIoTゲートウェイパッケージと、カーシェアやレンタカー、EV(電気自動車)充電器の予約システム(予約決済、会員管理、管理画面)等から構成されている。
これらは各機能別に独立したシステムとなっており、API連携注3により既存システムとの同期も可能となっている。車両データ取得に関するシステム基盤と車載器は韓国のモビリティプラットフォーム事業者であるAltimobility Corporation から提供を受けている。
4) AI・データサイエンスサービス
AI・データサイエンスサービスは、地方自治体や地方公共交通等の顧客向けに、モビリティ関連の実証実験や地方公共交通再編のために、複数の交通事業者や自治体等の交通利用データを分析、可視化するサービスを提供している。これらは施策や政策を実行する際のデータとして活用される。
◆ 収益構造と主要販売先
同社の収益は、システム導入に必要なデジタルサイネージや車載機器等のハードウェアの販売及びソフトウェアの開発、パッケージサービスのライセンス販売からなるショット売上高と、納入したソフトウェアの保守料やパッケージサービスの利用料として毎月得られるストック売上高からなる。23/3期の売上高の約3割がストック売上高、約7割がショット売上高であった(図表2)。
開示されている主要販売先のうち、池商(新潟市江南区)はインポートセグメントの商品販売先である。ENEOS(東京都千代田区)にはカーシェア向けのシステムを提供している。エネクスライフサービス(東京都千代田区)には全国のガソリンスタンドを中心にサービスを提供しているカースタレンタカー向けのシステムを提供しており、直近では基幹システムのリプレイスで、レンタカーの貸渡業務の無人化を実現した「楽のりスマート」のシステム等を提供している。超小型EVの開発と販売を行うFOMM(横浜市神奈川区)には、カーシェアシステムやIoT機器を搭載したバッテリー交換式EVや交換バッテリーからの情報収集システムを提供している(図表3)。
モビリティセグメントでは、システムの開発・導入フェーズではショット売上高が増加し、その後は継続的に保守・システム利用料収入(ストック売上高)を得る形になる。