ファーストアカウンティング(5588)生成AIによる経理業務支援、請求書送付サービスの開発、海外展開で成長目指す

2023/09/26

AI技術を活用した領収書、請求書処理で経理業務の自動化、効率化を支援
生成AIによる経理業務支援、請求書送付サービスの開発、海外展開で成長目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ AI技術を活用したシステムで経理業務の自動化、効率化を支援
ファーストアカウンティング(以下、同社)は、AI-OCR注1による文字読み取りや自然言語処理等のAI技術を活用して領収書や請求書の処理を行い、企業の経理業務を自動化、効率化する、AIソリューション事業(経理AI事業)を展開している。

主要顧客は会計ソフトウェアベンダーと売上高500億円以上の大企業であり、経理業務のAIソリューションをSaaS形態で提供している。売上高はシステム利用の月額課金と領収書や請求書の処理量に応じた従量課金からなる。22/12期の売上高構成比は、月額課金が93.1%、従量課金が5.6%で、ストック型売上が太宗を占めている(図表1)。

23/12期第2四半期累計期間(以下、上期)の売上高では、大企業向けが66%、会計ソフトウェアベンダー向けが34%を占めた。

同社はAIソリューション事業(経理AI事業)の単一セグメントであるが、①領収書や請求書の読み取りや、照合、勘定仕訳等の機能別AIモジュールであるRobota(ロボタ)シリーズ、②請求書処理業務の効率化・リモート化を実現するプラットフォームのRemota(リモタ)、③デジタルインボイスの送受信を行うPeppol(ペポル)アクセスポイントの3つのサービスを提供している。

◆ Robotaシリーズ
Robotaシリーズは、紙やPDFの領収書や請求書のデータを読み取ってテキスト化したり、読み取ったデータの照合や勘定科目への仕訳等の機能を提供する(図表2)。会計ソフトウェアベンダー向けには、会計ソフトウェアの機能の一部としてOEM提供している。大企業向けには顧客の会計システムとデータ連携し、領収書や請求書の処理のデジタル化、自動化、効率化機能を提供している。

◆ Remota
Remotaは、Robotaシリーズの各機能を使って、請求書の入力業務や確認作業を画面上でできるクラウド型の請求書処理プラットフォームであり、リモートワークへの対応が可能なシステムとなっている。

◆ Peppolアクセスポイント
Peppolは日本のデジタルインボイスの標準規格として採用され、デジタル庁が日本の各種法令や商慣習に対応した日本標準仕様を策定し、国内での管理運用を行っている。企業がデジタルインボイスを送受信するためには、送信側、受信側ともにアクセスポイントを経由する必要がある。同社は22年8月にデジタル庁から国内初のPeppolサービスプロバイダーの認可を得ている。これにより同社はデジタルインボイスの送受信を行うアクセスポイントの業務が可能になった。

◆ 販売チャネル
販売チャネルは、同社の営業人員が大企業顧客に営業を行うダイレクト営業と、OEMパートナーと販売パートナーを通じたパートナー営業がある。ダイレクト営業では、ウェビナーやイベント参加企業への営業が中心である。OEMパートナーは会計ソフトウェアベンダーであり、販売パートナーは同社と再販売契約を結び、同社のシステムを大企業に販売するコンサルティング企業やシステムインテグレーター等である。同社のシステムと顧客の会計システムのインテグレーションもシステムインテグレーターが対応している。
22/12期では、OEMパートナー向けと販売パートナー経由の売上高を合算したパートナー営業経由の販売が全体の約3分の2を占めた。

◆ 主要販売先
経費精算システム「楽々精算」等を運営するラクス(3923東証プライム)は、RobotaシリーズのOEMパートナーである。SB C&S(東京都港区)は同社サービスのユーザーであるとともに、大企業向けの販売パートナーであり、PFU(石川県かほく市)も大企業向けの販売パートナーである(図表3)。

◆ 主要経営指標
OEMパートナーの会計ソフトウェアベンダーと販売パートナー及び自社営業経由の大企業ユーザーを合わせた同社サービスの導入社数は、23/12期第2四半期末で99社となり、順調に拡大してきた。

同社は重要経営指標として、ARPA注2とグロスチャーンレート(月次解約率)を挙げており、ARPAは月額100万円前後で推移している。グロスチャーンレートは21/12期に上昇したが、直近では低下傾向にある(図表4)。

新規顧客のARPAは低いため、新規顧客の増加によりARPAは月額100万円前後で推移しているが、契約年数の増加とともに導入サービスが増加するため、契約期間が2年以上の顧客のARPAは月額185万円となっている(図表5)

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。