グリッド(5582) 20年6月期のAI開発事業への集中投資が奏功して利益定着フェーズへ

2023/07/25

社会インフラのオペレーションを最適化するAIエンジンを開発
20年6月期のAI開発事業への集中投資が奏功して利益定着フェーズへ

業種:情報・通信業
アナリスト:藤野敬太

◆ 社会インフラのオペレーションを最適化するAIエンジンを開発
グリッド(以下、同社)は、社会インフラのオペレーションを最適化するAIエンジンの開発を行う企業である。同社は元々、09年に再生エネルギー事業を行うことを目的に設立された。早い段階からエネルギー事業のマネジメントにAIを活用してノウハウを蓄積してきた。そのノウハウを活かして、14年よりAI開発事業立ち上げの模索を開始し、15年にAI開発事業を開始した。17年に大手商社の出資を受け、19年より社会インフラのオペレーションの計画最適化の分野に経営資源を集中し、現在に至っている。

社会インフラのオペレーションにおいて計画業務は欠かせない。電力・エネルギー分野であれば電力需給計画、物流・サプライチェーン分野であれば海運の配船計画、都市交通・スマートシティ分野であれば渋滞予測やビルの空調熱源制御が例として挙げられる。

従来、こうした計画業務は、熟練スタッフの手で遂行されてきた。人の手によるものであるため、どんなに熟練したスタッフであっても、ひとつの計画を策定するのに数時間から数日を要する。しかも、ひとつの計画につきひとつのシナリオしか織り込むことができなかった。そして、最大の課題は、ノウハウが属人的な暗黙知となってしまうことであった。

しかし、同社のAIエンジンを使うと、数分で計画策定ができるため、複数の計画を策定することができる。さらに、ひとつの計画に対して複数のシナリオを検証することが可能となり、最適な計画を策定、抽出することが可能となる。計画の精度が上がると、社会インフラのオペレーションコストを大きく削減することができ、社会インフラの収益性が向上する。そのため、電力会社等の大手インフラ運営企業に導入が進んできた。

同社はAI開発事業を行っているが、対象とする産業ドメインを、電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3つに絞っており、売上高を産業ドメイン別に区分して開示している(図表1)。個別の案件の規模に影響を受ける部分はあるが、23/6期第3四半期累計期間は、物流・サプライチェーンの産業ドメインの売上高が約半分を占めている。

◆ AI開発のサービスは2つの技術の融合によるもの
同社のサービスは、AI開発、プラットフォーム開発、運用・サポート3つに分類される。

このうち、メインとなるAI開発のサービスの根幹にあるのは、デジタルツインテクノロジーとAIアルゴリズムの2つの技術である。

デジタルツインテクノロジーは、現実空間にある情報をもとに、デジタル空間上に現実空間を再現する技術である。同社では、この技術を用いて、現実世界の業界特有のビジネスルールを数式化し、物理法則を表す物理式と合わせて、顧客のビジネス環境や業務環境をデジタル空間で再現したシミュレータを作成する。このシミュレータがあることで、ビッグデータを使うことなく、顧客業務のシミュレーション結果を得ることが可能となる。

シミュレーション結果から得られるデジタルデータをもとに、AIアルゴリズムを走らせることにより、複数のシナリオの検証を行い、顧客の業務課題を解決する最適解が提供される。

ここまでの、シミュレータとAIアルゴリズムを組み合わせてAIエンジンとして開発するのが、AI開発である。そして、AIエンジンを搭載した業務アプリケーションを顧客の業務システムに組み込むのがプラットフォーム開発である。サービスの性格上、AI開発とプラットフォーム開発から得られる収益はフロー型売上に分類される。

◆ 23年6月期に入り運用・サポートを強化
AIエンジンは、データの劣化等により、放っておくと最適解が得づらくなっていく。そのため、AIエンジンのチューニングが必要となるが、こうした特性を踏まえ、同社の運用・サポートでは、顧客がシステムを継続利⽤するための機能(性能維持、監視、障害対応)を年間契約で提供している。運用・サポートは、ストック型売上として分類されている。

同社は23/6期から運用・サポートのサービス提供を強化しており、22/6期は0.5%に過ぎなかったストック型売上の売上構成比は、23/6期第3四半期累計期間には17.4%まで上昇している(図表2)。

◆ 顧客
同社の顧客は電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティといった社会インフラに関する企業であり、23/6期第3四半期累計期間での顧客数は28社となっている。

案件規模別売上高を見ると、1億円以上の案件の売上構成比は低下傾向にあるが、5,000万円以上1億円未満の案件の売上構成比は上昇しており、案件の平均規模は拡大傾向にある。一方、売上上位5社の売上構成比は低下傾向にあり、顧客の分散が進んでいる状況がうかがえる(図表3)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。