クオリプス(4894) 臨床試験を完了した心筋細胞シートの上市と後続パイプライン開発で成長を目指す

2023/07/04

ヒトiPS細胞由来の再生医療等製品の開発と製造開発受託事業を展開
臨床試験を完了した心筋細胞シートの上市と後続パイプライン開発で成長を目指す

業種:医薬品
アナリスト:鎌田良彦

◆ ヒトiPS細胞由来の再生医療等製品開発と製造開発受託事業を展開
クオリプス(以下、同社)は、心臓移植手術等に実績のある大阪大学大学院の澤芳樹教授(現名誉教授、同社取締役最高技術責任者)らにより、京都大学の山中伸弥教授(現京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授)との共同研究の成果と大阪大学の技術とノウハウを基に、重症心不全の治療を目的とする、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シート(以下、心筋細胞シート)の事業化のために17年3月に設立されたバイオベンチャーである。

20年8月には心筋細胞シート作製のための細胞大量培養技術等のノウハウを活用した、ラボ一体型の商業用細胞培養加工施設CLiC-1を稼働させ、バイオベンチャー等向けに再生医療製品等の製造開発受託事業(以下、CDMO注1事業)を行っている。

◆ 他家細胞による心筋細胞シート
心筋細胞シートは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞を主成分とする他家細胞注2治療法であり、シート状に加工された心筋細胞を患者の心臓に移植する。心臓移植や補助人工心臓の装着までには悪化していない重症心不全患者を対象とする治療薬である。

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)でストックしているヒトiPS細胞の提供を受け、同社で心筋細胞に分化誘導し、未分化のiPS細胞を除去する精製加工を行って、心筋細胞シートを作製する。この心筋細胞シートを患者の心臓に直接貼付する。

心筋細胞シートの重症心不全への作用メカニズムは、心筋細胞シートから産生された因子が、心筋梗塞を起こした部位のまわりの血管新生を促進し、梗塞部位の修復に寄与すること、及び心筋細胞シートが移植後に患者の心臓と機能的・電気的に結合し、患者の心臓と同期して収縮弛緩することで、患者の心臓機能をサポートすること等と推定されている。

◆心筋細胞シートのメリットとデメリット
重症心不全患者に対する細胞治療法としては、患者自身の大腿部の骨格筋芽細胞を培養して移植する自家細胞療法もある。

他家細胞を使う心筋細胞シートの自家細胞療法に対するメリットとしては、①患者の細胞を採取する必要がなく、患者の負担が小さい。②自家細胞療法では、採取した患者の細胞を培養するのに時間がかかるのに対し、心筋細胞シートではストックされたiPS細胞を基に、細胞培養施設で心筋細胞を培養して保管することができる。③他家細胞移植であるため、自家細胞移植に比べ多くの患者を対象にすることができる等が挙げられる。デメリットとしては、他家移植の場合、患者の免疫機能による拒絶反応が生じるため、移植後一定期間は免疫抑制剤の投与が必要になり、その間、患者の免疫力が低下して疾病に罹患するリスクが高まること等が挙げられる。

◆ 開発パイプライン
同社の開発パイプラインは、心疾患治療のための心筋細胞シートとカテーテル、心臓以外の疾患治療のための体内再生因子誘導剤からなる(図表1)

1)虚血性心疾患(ICM)を対象とする心筋細胞シート
虚血性心疾患(以下、ICM)は、心臓の冠動脈が動脈硬化によって狭くなる等により、心筋に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり起こる心筋梗塞や狭心症等の重度の心疾患である。

ICMを対象とするヒト心筋細胞シートは、医師主導治験が20年1月から23年3月まで実施され、当初予定した8例の臨床試験を完了している。20年1月から11月にかけてのコホートA(3例)では、大阪大学で作製した心筋細胞シートを用い、大阪大学医学部附属病院で治験が行われた。22年8月から23年3月にかけてのコホートB(5例)では、同社のCLiC-1で作製された心筋細胞シートを用い、多施設共同治験として大阪大学医学部附属病院のほか、順天堂大学医学部附属順天堂病院、国立循環器病研究センター、東京女子医科大学病院、九州大学病院の5施設で治験が行われた。この際、心筋細胞シートは大阪のCLiC-1から各病院へ輸送されたが、心筋細胞シートの長距離輸送が可能であることが確認された。

これらの治験については、現在、移植後の経過観察やデータの解析等が行われているが、大阪大学の研究チームはコホートAの第1症例について、有効性、安全性についての論文を発表している。それによれば、有効性に関しては移植後6カ月、1年経過時点で、心不全の重症度を示す指標で中等度から軽度への改善が見られ、安全性に関しては移植後6カ月、1年経過時点で、不整脈や腫瘍の形成、免疫抑制剤による合併症等の安全性上の問題は生じていないとしている。

2)拡張型心疾患(DCM)を対象とする心筋細胞シート
拡張型心疾患(以下、DCM)は、心筋の収縮が弱くなり、心臓が次第に拡張していく疾患である。現在は、動物を用いた心筋細胞シートの有効性を基に、同社は大阪大学が進める医師主導治験のプロトコル設計を支援している。ICMを対象とした心筋細胞シートへの効能追加を行うことを目指している。

3)ICMを対象とする心筋細胞シート(海外)
ICMを対象とする心筋細胞シートの米国、欧州での製造販売承認を目指し、開発拠点の準備・体制整備、開発プランの策定及び、技術の提供により現地で心筋細胞シートの作製や販売を行うアライアンス先の選定を行っている。

4)カテーテル
22年4月に医療用カテーテルを製造する朝日インテック(7747東証プライム)と共同研究開発契約を結び、朝日インテックのカテーテル製品開発技術と同社のヒトiPS細胞由来細胞を組み合わせ、ヒトiPS細胞由来細胞を心臓へ移植する治療技術の開発を進めている。カテーテルは、ICMやDCMよりも軽度の心疾患を対象としたパイプラインで、急性心筋梗塞、慢性完全閉塞性病変等を対象に開胸手術を行わずに心機能の回復を高める治療技術を目指している。朝日インテックがカテーテルの試作品の製造を終了しており、カテーテル治療専門医からのフィードバックを基に改良を進めている。並行して大動物での試験で、移植手技の実現性、移植細胞の生着性の評価等を行っている。同社ではカテーテルで使用する新たな細胞の研究を進めており、評価試験に着手する予定である。

5)体内再生因子誘動剤
体内再生因子誘導剤は、心臓以外の臓器の疾患を対象とするパイプラインとして開発を進めている。小野薬品工業(4528東証プライム)が開発した低分子化合物のオキシム誘導体を低用量使用することで、組織の再生を促進する各種体内再生因子(肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)等)が誘導される薬理作用に基づき、細胞保護、抗線維化、抗炎症作用による血管新生、組織再生の効果が期待されている。肝硬変・非アルコール性脂肪肝炎、閉塞性動脈硬化症、慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾
患等への治療薬として開発を進めている。同パイプラインは、小野薬品工業が開発済みの化合物を活用するドラッグリポジショニング(既存薬再開発)であり、効率的な開発、製品化を目指している。

◆ CDMO事業
同社のラボ一体型の商業用細胞培養加工施設CLiC-1を活用し、様々な細胞製品のCDMO事業を行っている。ラボを併設しており、製造プロセス開発から、非臨床、臨床試験、商用製造までをワンストップで進めることが可能となっている。21年9月に再生医療等安全確保法に基づく特定細胞加工物製造許可を取得しており、バイオベンチャー企業等の利用も拡大している。22/3期、23/3期の売上高13百万円、38百万円は全てCDMO事業による売上高であり、顧客基盤も拡大している(図表2)。

>>続きはこちら(1,2MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。