QLSホールディングス(7075) 人口減少と高齢化がもたらす問題に対して解決策を提供

2023/06/30

保育事業、介護福祉事業、人材派遣事業の3事業を展開
人口減少と高齢化がもたらす問題に対して解決策を提供

業種:サービス業
アナリスト:髙木伸行

◆ 保育、介護福祉、人材派遣の3事業を展開
QLSホールディングス(以下、同社)は、純粋持株会社で子会社の経営指導・管理を行っている。傘下には保育事業と介護福祉事業を行うクオリスとエルサーブ、人材派遣事業などを行うダウインの3子会社がある。クオリスは05年、クオリスから人材派遣事業を移管されたダウインは14年、エルサーブはクオリスの子会社として15年に各々設立され、同社は株式移転により19年2月に設立された。

同社グループの23/3期の売上高構成比は、12年に開始した保育事業が69.4%、06年に開始した介護福祉事業が14.4%、07年に開始した人材派遣事業が11.9%であった。また、業務受託による携帯電話等の販売をしている「その他」が4.3%となっている(図表1)。

セグメント利益率を見てみると保育事業以外は利益水準が低く、保育事業への利益依存度が高い。子会社単体でみるとクオリス、ダウインは当期純利益ベースで黒字を維持しているが、エルサーブは23/3期も当期純損失を計上し、引き続き債務超過の状態にある。

各事業の施設は関東エリア(東京都、埼玉県、神奈川県)、中部エリア(愛知県)、関西エリア(大阪府、京都府、奈良県、兵庫県)、九州・沖縄エリア(福岡県、沖縄県)に分散しているが中部エリアの拠点数は少ない(図表2)。なお、九州・沖縄エリアについては、福岡県にあるのはモバイル営業所1カ所のみで、他は全て沖縄県にある保育所と介護福祉の施設である。

◆ 保育事業
大阪市、東京都、横浜市を中心に認可保育所等の保育施設をクオリスとエルサーブが運営している。23年6月現在で認可保育所33施設(うち民間委託1施設)、小規模認可保育所2施設、東京都認証保育所1施設、企業主導型保育所3施設(うち運営受託保育所2施設)、学童保育1施設の合計40施設を運営している。関東エリアに25施設、中部エリアで2施設、関西エリアで10施設、九州・沖縄エリアで3施設を運営している。

認可保育所は児童福祉法に基づき、保育室の面積や保育士の数など、国が定めた基準に基づいて自治体から認可された施設である。小規模認可保育所は子ども・子育て支援法により、市区町村による認可事業で定員6人以上19人以下かつ0歳から2歳までの子どもを対象としたものである。東京都認証保育所は認可保育所では応じきれない大都市のニーズに対応しようとする東京都独自の制度によるものである。企業主導型保育所は企業が自社の従業員の子どもを預かるための保育所で、学童保育は放課後などに小学生を預かる施設である。

◆ 保育事業特有の収益構造
認可保育所・小規模認可保育所では保育サービスを利用者(保護者等)に提供しているが、保育料は利用者から各自治体に支払われ、各自治体は利用者から徴収した保育料に年齢別に決められた額を加えた委託費等を認可保育所に交付している(小規模認可保育所では一部利用者負担が生じる)。東京都認証保育所では事業者が提供した保育サービスに対して自治体からは運営費補助金、利用者からは保育料を受け取っている。

自治体から支払われる金額が大きいため、主な販売先は自治体となる。同社グループの場合、総売上高に占める22/3期の相手先別の売上高割合を見ると東京都が41.5%、大阪市が11.7%、横浜市が8.7%であった。

在園児数等に応じて受け取る自治体からの委託費や補助金等を売上高として計上する他、保育所を新設する際の内装工事費等の支出の一部に対する自治体からの補助金を営業外収益の「補助金収入」として計上している。一方、新規開設のための支出のうち費用処理したものは営業外費用の「開園前費用」として計上している。

また、開設に伴う設備投資のうち、補助金が交付されるものについては、税務上のメリットを得るため直接減額方式による圧縮記帳を行うことがあり、「固定資産圧縮損」として特別損失に計上される。一方、圧縮記帳を行った固定資産の取得のために交付される補助金については「整備補助金収入」として特別利益に計上している。

保育所の開設後の経過期間によっても損益に与える影響が異なる。開設当初は0歳~5歳までの対象年齢のうち、高年齢クラス(3歳~5歳児等)が定員に満たないことが多く、在園する児童が進級するにつれて定員に近づく傾向がある。このため、開設から数期間は収益性が低くなり、保育所の新設開設数が増加すると営業損益が悪化する傾向がある。また、低年齢クラスの児童の進級により、稼働率が上昇し損益が改善する傾向がある。

◆ 介護福祉事業
大阪市及びその周辺都市を中心に訪問介護や障がい者向けの居宅介護支援を行う介護事業所を運営している。また、東京都及び沖縄県では、障がいのある児童に対して学校の授業終了後や休校日に、生活能力の向上と状況に応じた発達支援を行う放課後等デイサービスや障がい者の共同生活の支援を行う共同生活援助(障がい者グループホーム)などを運営している。

足元では介護士が利用者の自宅を訪問して介護を行う訪問介護が14拠点、認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)1施設、訪問看護1拠点、0歳から小学校入学前の発達に不安のある児童を対象とする児童発達支援2施設、放課後等デイサービス6施設、共同生活援助18施設、就労支援3施設、生活介護1施設の合計46拠点・施設を運営している。

居宅介護支援サービスを除き、同社は国が定めた利用者単価に利用回数を乗じた報酬の原則9割(利用者の所得により8割または7割)を国民健康保険団体連合会に請求し、残り(1割から3割)を利用者に請求している。居宅介護支援サービスについては利用者の負担が発生しない。

◆ 人材派遣事業・その他
ダウインが人材派遣事業を行っている。東京都、愛知県、京都府、兵庫県、沖縄県にある5拠点で人材派遣事業を行っている。自動車メーカーへ自動車整備士など専門性を持つ人材を派遣している。特に自動車メーカーのリコール対応などの緊急時における派遣サービスに強みを持っている。過去にはSUBARU(7270東証プライム)向けの総売上高に占める割合が10%を超えたことがあった。他には介護、保育、看護などの専門人材の派遣も行っている。この他、ダウインは携帯電話等の販売を東京都と福岡県において行っている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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