デリバリーコンサルティング<9240> 直近は注力するデータストラテジー事業部の売上拡大が目立つ
企業のDX推進に向けたテクノロジーコンサルティングを提供
直近は注力するデータストラテジー事業部の売上拡大が目立つ
業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 企業のDX推進のためのテクノロジーコンサルティングを提供
デリバリーコンサルティング(以下、同社)は、テクノロジーコンサルティングを手掛ける企業である。03年4月に設立されたが、05年8月にメディアシーク(4824東証マザーズ)の連結子会社となり、システム開発やオフショア開発を手掛けてきた。15/7期にビジネスモデルをテクノロジーコンサルティングに転換し、数多く存在するITの製品やサービスから、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション注1(以下、DX)の推進に最適なものを見出し、コンサルティングサービスと合わせたソリューションとして提供している。
同社の事業は、20/7期まではコンサルティング事業、デジタルソリューション事業の2つの報告セグメントに分類されていた(図表1)。しかし、21/7期からデジタルトランスフォーメーション事業の単一セグメントとし、事業部門別売上高を開示している(図表2)。大まかには、旧コンサルティング事業がデジタルマイグレーション注2事業部と海外子会社に、旧デジタルソリューション事業がデータストラテジー事業部とインテリジェントオートメーション事業部に引き継がれている。
◆ デリバリーコンサルティングのDXの考え方とサービス
同社はDXに関係するソリューションを、以下の2つの切り口で整理している。
(1) 「単なるシステム刷新やタスクのデジタル化にとどまる」のか、「デジタル技術による新たな事業能力の獲得まで進める」のかという、DX推進によってどこまで変革するかという方向性
(2) 「ソリューションが個別適用にとどまる」のか、「全体最適にかなう」ものかという、DXの及ぶ範囲
子会社を除く3つのサービスは、上の2つの軸に即して以下の通りに分類できる。
(1) 「全体最適にかなう」もので、「デジタル技術による新たな事業能力の獲得を図る」サービスが、「デジタルマイグレーション」及び「データストラテジー」
(2) 「一部の部門や業務に個別に適用する」形で、「システム刷新やタスクのデジタル化を進める」サービスが、「インテリジェントオートメーション」
同社は、世の中全体として今後DXが本格化していくに従って需要が高まっていくと予想される「デジタルマイグレーション」及び「データストラテジー」の両サービスに注力していく方針である。
なお、この2つのサービスに関しては、「システム内製化」を強く意識している。他のITベンダーが提供する形態ではシステムの運用をITベンダーに依存せざるをえなくなり、環境変化にタイムリーに適応できない。そのような考えのもと、同社のサービスでは、顧客企業の社内人材が適宜環境変化に対応できるような状況を作り上げることを特徴としている。
上記のどのサービスであっても、外部のIT製品・サービスをベースとしたソリューションとコンサルティングサービスを組み合わせて提供するのが同社の基本形となっている。
◆ 3 つのサービス(1): デジタルマイグレーション
顧客企業が構想するデジタル活用を実現するためのサービスで、DX を進めるに当たって必要なデータを収集する基盤を構築する部分を担っている。デジタル化を推進していくために必要な開発体制の立ち上げ、顧客企業自身で継続的にDX のビジネス拡張ができるような仕組みづくり、DX の習慣化等を行うための各種サービスを提供している。
◆ 3 つのサービス(2): データストラテジー
顧客企業内部に存在するビジョンや潜在的な要望を把握し、それらのデータを有効活用して新たな事業価値を創出することを包括的に支援していくサービスである。デジタルマイグレーションで構築した基盤から収集したデータを活用する戦略を構築し、事業変革につなげていくまでの道筋をつける部分を担っている。世界の製品やサービスから最適なデジタルテクノロジーを選び出し、顧客企業が必要とする時に、必要な形態でデータを活用できるようにシステムのデザインや構築を行う。
◆ 3 つのサービス(3): インテリジェントオートメーション
顧客企業の現場業務の自動化やデジタルによる効率化を支援するサービスである。他社の先進的なIT サービスの導入支援に留まらず、コンサルティングサービスを組み合わせて提供することで、付加価値を生み出している。
インテリジェントオートメーションの売上高の大半を占めているのがセルフRPA 注3 ツール「ipaS ロボ」というソリューションである。アシリレラ(東京都渋谷区)からRPAエンジンを仕入れてソリューションに仕立てているもので、PC で動作するシステムに対し、人が行うマウスやキーボード操作を記録し、作業の自動化を実現する業務自動化ツールとなっている。これにコンサルティング会社ならではの業務自動化支援を組み合わせることで、単なるツール導入には留まらない、他社にはない価値を提供している。
◆ 収益構造
同社の収益の源泉はコンサルティングサービスであり、売上高の多くの部分は、コンサルタントの稼働単価、コンサルタントの稼働時間、コンサルタントの人数の掛け算で説明がつく。この売上高に対し、コンサルタントの人件費が原価として計上される。
外部のIT 製品・サービスについては、以下の通り、大きく2 つのパターンがある。
(1) インテリジェントオートメーションの「ipaSロボ」のように、同社がソリューションを販売する形態となり、売上高が計上されるパターン。この時には、外部(IT製品・サービスの仕入が発生し、仕入原価が計上される。
(2) IT 製品・サービスはベンダーが販売し、同社はコンサルティングサービ スのみを行うパターン。テックパートナーからの紹介案件の時にこのパ ターンが多く、IT 製品・サービスの販売については同社の売上高とはな らず、仕入原価の負担もない。
最近はテックパートナーからの案件紹介が増えてきていることから、後者のパターンが増えてきているものと推察される。