BlueMeme<4069> ユーザーが主導権をもって開発する「システム開発の民主化」を目指す

2021/07/13

ローコード技術とアジャイル手法を組み合わせた受託開発サービスを提供
ユーザーが主導権をもって開発する「システム開発の民主化」を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト:髙木 伸行

◆ 利用者による「システム開発の内製化」の実現を目指す
BlueMeme(以下、同社)はデジタル技術を単に顧客企業の業務の効率化だけではなく、経営戦略の実行に向けての必要な手段として活用できるような情報システムの開発に重点を置き、顧客企業の生産性を高めることを目指している。

システムインテグレーターへ開発業務を委託する旧来の方式はスクラッチ開発注1が主流であるため、多くの人手と時間がかかる、状況の変化に対応することが難しいといった欠点がある。また、システムインテグレーターへの過度な依存(いわゆる開発業務の丸投げ)は企業のIT部門の弱体化や人材の育成につながらないといった弊害をもたらし、企業がIT戦略を実行する上での足枷となるケースもある。

同社グループは独自のプロジェクト管理手法を用いることで低コストかつ短期間でのシステム開発を行い、顧客とともにシステム開発のノウハウを蓄積することで、さらにスピードあるシステム開発を可能にしている。

同社は、顧客のシステム開発の外部依存を解消し、ローコード注2開発ツールを活用することで顧客企業の事業部門による「システム開発の内製化」を実現すること(民主化)を当面の目標としている。また、顧客企業が保有するデータやプロセスの洗出しと体系化(モデル化)が、経営の視点でシステム開発を行なうためには必要となり、企業内に存在する多くのシステム間の連携や業務プロセスの自動化も必須となる。長期的には量子コンピュータといった次世代技術の活用により、現在では不可能な業務の最適化を実現したいとしている。同社は、業務分析及び業務モデル化といったコンサルティング事業からスタートしており、顧客企業の進化にともない、システム開発にとどまらず事業領域を拡大してゆける素地は備わっている。

DX 事業の単一セグメントであるが、「受託開発サービス」と顧客企業の技術者向けの「トレーニングサービス」のふたつのサービスを「プロフェッショナルサービス」として、ソフトウェアのライセンスを年単位で販売する事業を「ソフトウェアライセンス販売」として、売上高を開示している(図表1)。

21/3 期の売上構成比はプロフェッショナルサービスが61%、ソフトウェアライセンス販売が39%となっている。ソフトウェアライセンス販売の売上構成比は19/3 期31%、20/3 期33%、21/3 期39%と上昇傾向にある。

◆ プロフェッショナルサービス
(1)受託開発サービス
同社及び連結子会社であるOPENMODELS はローコード技術とアジャイル手法とを組み合わせ、同社グループ独自のプロジェクト管理手法である「A GILE-DX」で進捗管理を行う受託開発サービスを行っている。従来から行われているスクラッチ開発・ウォーターフォール手法注3 に比べて少人数かつ短期間での開発を可能にしている。

ローコード技術により、プログラミング工程を自動化することにより開発期間の短縮や単純ミスのない高品質のコードでシステム開発を行うことが可能となる。また、アジャイル(agile=素早い)手法は、チームを組んで「機能定義→設計→実装→テスト→運用」といった開発工程を、1 つの機能を単位とした小さなサイクルで繰り返す開発手法である(図表2)。

従来から行われてきたシステムインテグレーター主導によるスクラッチ開発・ウォーターフォール手法では、「要件定義→設計→実装→テスト→運用」という工程で、要件定義や設計が綿密に行われた後に開発される。各工程を受け持つ事業者が異なることから情報共有が不十分となり、責任の所在が不明確になり易いという欠点がある。また、仕様の変更が柔軟に行えず、事業の観点よりはエンジニアの視点で開発される傾向がある。さらに完成までに長期間がかかることから、開発を進めて行く過程で顧客の要望との乖離が生じ開発工程の終盤で大規模な仕様変更が発生し計画が遅れるといった弊害も見受けられる。

アジャイル手法ではひとつのチームが小さなサイクルを繰り返しながら、開発工程を進めるため、途中からの仕様変更にも対応することができる。また、都度不備を発見することが可能となり大きなトラブルが発生しづらいという利点がある。

ローコード技術やアジャイル手法は有用な技術であるが、良い点ばかりではなく、自由度が高いが故に統率が取りづらい、今までの管理手法が適用できない、新しいが故にノウハウが不足しているといった課題を抱えている。同社グループではアジャイル手法に不足している上流工程とテスト工程の作業をAGILE-DXで標準化することでアジャイル手法によるシステム開発を安定的に行っている。

顧客のニーズに合わせて、以下の3 パターンのローコード・アジャイルチーム編成でシステム開発を行っている。
1) すべての業務を同社グループに委託する場合でチームメンバー全員が同社グループの人材

2) 顧客が社内の人材を活用してシステム開発を行う場合で顧客と同社グループの人材による混成チーム

3) 顧客の人材が開発業務を行い、同社グループの人材が技術的な支援やコンサルティングを行う

同社グループは、顧客の事業部門のイニシアティブにより開発されたシステムはスピード感のあるIT 投資や経営戦略の実現に不可欠と考えており、いずれのパターンでも開発の主体が顧客企業であることが重要と考えている。

(2)トレーニングサービス
顧客企業の社内技術者やサービスパートナーに対して、短期間かつ低リスクのシステム開発を行うことができるようにするためのトレーニングを行っている。約3カ月から6カ月で、ローコード開発基盤である「OutSystems®」を使用して開発案件に携われるレベルに引き上げるプログラムなどを提供している。

◆ ソフトウェアライセンス販売
ローコード開発プラットフォーム「OutSystems®」、クラウド型APIインテグレ―ションプラットフォーム「Workato®」,マルチモデルデータベースプラットフォーム「MarkLogic®」などを販売している。21/3期のソフトウェアライセンス販売の売上高の約95%は「OutSystems®」によるものである。

同社は17年にOutSystemsジャパンが設立されるまでは、米国のボストンに本社を置くOutSystemsの日本国内の総代理店業務を行っていた。現在はOutSystems認定の正規販売代理店であり、日本国内及びアジア地域での「OutSystems®」の導入数はトップクラスである。

ソフトウェアライセンス販売は21/3期までは、他社から仕入れたソフトウェアの売上高を総額で表示していたが、22/3期より売上高からライセンス使用料を差し引いた純額を売上高として計上する方式に変更になる。ちなみに21/3期のソフトウェアライセンス販売の売上高は814百万円、売上原価に相当するライセンス使用料は636百万円であった。

◆ 収益構造
プロフェッショナルサービスはプロジェクト毎に売上高が計上されるフロー型、ソフトウェアライセンス販売は年単位で使用権を販売するサブスクリプション型での売上高計上となっている。プロフェッショナルサービスの受託開発案件の規模や受注経路により、売上比率の高い先が
現れる傾向にある(図表3)。

プロフェッショナルサービスの売上原価は主として同社グループの技術者の人件費とサービスパートナーからの技術者調達費用からなる。ちなみに上場時の調達資金の使途としては技術者、コンサルタント、最先端技術の知見を持つ人材などに対する労務費や外注委託費に充当することを予定している。ソフトウェアライセンス販売については22/3 期からは計上基準が変
更されるが21/3 期まではライセンス使用料が主要な売上原価となっている。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給料手当や役員報酬
が主な費目として挙げられる。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

このページのトップへ