ENECHANGE<4169> 社のデジタルマーケティングを支援する事業を主に展開
家庭や法人の電力・ガスの選択・切替をサポートする事業、及び電力・ガス会
社のデジタルマーケティングを支援する事業を主に展開
業種: 情報・通信業
アナリスト: 阪東 広太郎
◆ エネルギープラットフォーム事業とエネルギーデータ事業を展開
ENECHANGE(以下、同社)グループは、家庭や法人における電力・ガス等の最適な選択をサポートする「エネルギープラットフォーム事業」と、電力・ガス会社向けにクラウド型DX注1サービスを提供する「エネルギーデータ事業」を展開している。20/12期第3四半期累計期間における売上構成比は、エネルギープラットフォーム事業54.1%、エネルギーデータ事業45.9%である(図表1)。
◆ エネルギープラットフォーム事業
エネルギープラットフォーム事業においては、家庭向け電力・ガス切替プラットフォーム「エネチェンジ」、法人向け電力・ガス切り替えプラットフォーム「エネチェンジBiz」の主に2サービスを展開している。同社によると売上構成比は、「エネチェンジ」が約5割、「エネチェンジBiz」が約5割である。
「エネチェンジ」は、16年1月から電力切替サービスが開始された。20年1月から10月までの平均月間ユニークユーザー数は220万人である。
プラットフォームへの来場ユーザーが居住地域の郵便番号や世帯人数、在宅状況や電気の使用量といった情報を入力することで、アルゴリズムの診断結果に基づいた最適な電力・ガス会社の比較情報を、様々なランキング形式で得る事ができる。また、オンライン上で電力・ガス会社の切替手続きまでを行うことができる。
同社によると、「エネチェンジ」上で電気契約を切り替えるユーザーの平均的な電気料金は約9,000円/月であり、2人世帯や3人世帯が多い。冬場に電気使用量が増えて電気料金が高いと感じた際や、引越しをきっかけに、電気料金を下げるために「エネチェンジ」を利用するケースが多いようである。
「エネチェンジBiz」は、主に高圧と呼ばれる法人の電力・ガスユーザーを対象とした一括見積取得及び電力会社切替プラットフォームである。大手新電力を中心とした電力・ガス会社と提携し、法人ユーザーに対して無料で一括見積手続きを代行するサービスを全国規模で展開している。16年6月から本格的にサービスが開始されたが、20年10月の月間問合せ件数は300件超となっている。
法人ユーザーは、無料診断登録を実施し、過去12か月分の電気使用量を記載した明細書を提出することで、複数の電力・ガス会社からの新しい電気料金単価での見積提案の取得から、電力会社の切替手続きまでのプロセスを、一括して同社に委託できる。法人ユーザーは、初期費用をかけることなく、申込にかかる手間を削減することが可能となる。
同社は、20年10月末時点において、「エネチェンジ」と「エネチェンジBiz」合わせて52社(重複を除く)の電力・ガス会社と提携している。それらの電力・ガス会社とのネットワークにより、価格面での訴求を中心に、再生可能エネルギー100%の電力プランの取り扱いなど、多様なニーズに対応している。
20/12期第3四半期累計期間における、電力・ガス契約累計切替件数は、家庭ユーザーが172,666件、法人ユーザーが4,412件である。
「エネチェンジ」及び「エネチェンジBiz」のユーザーの獲得経路は、自社メディア経由と、オンライン及びオフラインのパートナー経由がある。
オンラインパートナーは、カカクコム(2371東証一部)が運営する「比較.com」のような比較サイトなどに同社の機能を提供し、集客を受けている。オフラインパートナーは不動産仲介事業者や不動産管理会社、金融機関であり、特に不動産仲介事業者からの送客が多いようである。不動産仲介事業者は、生活者が引越に伴い、電気・ガスの契約先を切り替えるタイミングで、「エネチェンジ」を紹介している。金融機関では融資の相談に来た法人企業に対して、コスト削減策として「エネチェンジBiz」を紹介している。20 年9 月末時点で、オンラインパートハーは37 社、オフラインパートナーは242 社である。
「エネチェンジ」や「エネチェンジBiz」における電気・ガスの累計切替件数における各チャネルの構成比は、20 年9 月末時点で、自社メディアが約50%、オンラインパートナーが約27%、オフラインパートナーが約24%である。
収益モデルとして、同社はユーザーからは対価は受け取らず、ユーザーが「エネチャンジ」や「エネチェンジBiz」上で提携する電力・ガス会社に契約を切り替えると、電力・ガス会社より一定の報酬を受け取る。
報酬には、ストック型の切替報酬、一時報酬の2 種類がある。ストック型の切替報酬は、プラットフォーム上で切替を実施したユーザーが電力・会社に支払う毎月の電力代・ガス代に、あらかじめ定められた料率を乗じた金額を、切替以降、原則として電力・ガス小売供給契約が継続する限り、毎月継続的に受け取る報酬である。一時報酬は、電力・ガス契約の切替時に、上記のストック型の切替報酬に加えて、電力・ガス会社から受領する切替の一時報酬が大半を占めている。
エネルギープラットフォーム事業の年間売上高を年間の切替件数で除して算出したARPU 注2 は、19/12 期には2,645 円であった。
◆ エネルギーデータ事業
エネルギーデータ事業においては、電力・ガス会社向けのデジタルマーケティング支援SaaS 注3 である「EMAP(Energy Marketing Acceleration Platform)」、電力スマートメーター注4 データ解析SaaS である「SMAP(Smart Meter Analytic Platform)」、電力データ解析技術を活用した稼働中の再生可能エネルギー発電所の運営効率化・ファンド運営事務サービス「JEF (Japan Energy Fund)」の3 サービスを主に展開している。同社によると、売上構成比は、「EMAP」が約6 割、「SMAP」が約3 割、「JEF」が約1 割である。
「EMAP」では、電力・ガス会社に対して、デジタルマーケティング支援サービスをSaaS 型で提供している。具体的にはマーケティング機能である「EMAP FRONT SERIES」、顧客・営業管理やバックオフィス機能、データ解析機能である「EMAP DESK SERIES」を提供している。
「EMAP FRONT SERIES」では、オンライン上での新規顧客獲得やユーザーリレーション強化に有効と考えられる機能を提供している。具体的には高CVR注5 の申込受付フォームや、全国の電力・ガス会社の料金プランに対応 した料金シミュレーション、請求額や電力使用量グラフ機能を備えたマイペ ージ等を提供している。
「EMAP DESK SERIES」では、全申込顧客の情報(エリア、プラン、申込ステータス等)を管理できる顧客管理システムを提供している。
「SMAP」では、電力・ガス会社向けに、スマートメーターを経由して送られてくるユーザーの電気使用量の30 分値データを様々な観点で解析・予測するサービスをSaaS 型で提供している。
「JEF」については、同社グループは、19 年12 月に、Looop(東京都台東区)、大和証券グループ本社(8601 東証一部)の子会社である大和エナジー・インフラと共同で、海外特化型の脱炭素・エネルギーファンド「Japan Energy ファンド」及び、そのファンド運営を行うJapan Energy Capital 合同会社を設立し、Japan Energy Capital 合同会社より独占的に業務を受託することで、「JEF」サービスを開始した。「JEF」では、電力データ解析技術を活用した稼働中の再生可能エネルギー発電所の運営効率化業務やファンドの運営事務業務などを手掛けている。
同社グループは、「EMAP」、「SMAP」、「JFE」は、電力・ガス会社を中心とするサービス提供先企業から、サービス提供の対価として、報酬を受け取っている。
報酬には、ストック型ライセンス報酬とその他報酬の2 種類がある。ストック型ライセンス報酬はサービス提供に対して毎月継続的に受領する報酬であり、月額固定報酬とエンドユーザー(需要家、スマートメーター)数に連動する従量報酬で構成される。「EMAP」と「SMAP」の報酬は主にサービス提供数、「JEF」の報酬は主にJapan Energy ファンドの投資家が約束した投資金額に連動している。その他報酬には、「EMAP」や「SMAP」の初期導入時やカスタマイズ時の開発料、コンサルティング料等の一時報酬が含まれる。
◆ 顧客構成
同社の顧客の大半は、電力・ガス事業者で構成され、特定の事業者に売上高が集中する傾向にある。東京瓦斯(9531 東証一部)、Looop、住友商事(8053 東証一部)の子会社であるサミットエナジーの3 社への売上依存度は、20/12 期第3 四半期累計期間で38.7%を占めている(図表2)。
「エネルギーデータ事業」においては、エネルギー大手(上位20社、市場占有率90%)の約50%、準大手(上位21位~100社、市場占有率9%)の約15%が同社の顧客となっている。