(6232)株式会社自律制御システム研究所 国家プロジェクトの売上減少

2020/01/09

 

太田 裕朗 社長

株式会社 自律制御システム研究所(6232)

 

 

企業情報

市場

東証マザーズ

業種

機械(製造業)

代表者

太田 裕朗

所在地

千葉県千葉市美浜区中瀬2-6-1 WBGマリブウエスト 32階

決算月

3月

HP

https://www.acsl.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,020円

10,559,564株

31,890百万円

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

11.49円

262.8倍

457.93円

6.6倍

*株価は11/29終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

 

非連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年3月(実) *

121

-6

0

-1

2017年3月(実)

156

-533

-486

-488

2018年3月(実)

370

-542

-454

-460

2019年3月(実)

807

-330

-176

-183

-19.42

2020年3月(予)

1,418

9

187

119

11.67

* 単位:百万円、円。
* 2016年3月期は決算期変更のため2カ月決算。2020年3月期は会社予想。

 

 

株式会社自律制御システム研究所の2020年3月期第2四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期第2四半期決算概要
3.2020年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • インフラ点検、物流・郵便等の分野を中心に、自ら考えて飛行するドローンを活用した業務効率化・無人化・IoT システムの提供を行っている。非GPS 環境下における、画像処理を活用した独自開発の自己位置推定技術「Visual SLAM」を用いた自律飛行技術と、それをドローン制御に組み込む統合技術に強みを持っている。

     

  • 20/3期上期は売上高2億04百万円(前年同期2億46百万円)、営業損失2億99百万円(同 営業損失2億32百万円)。ソリューションの構築(STEP1, 2)、機体販売(STEP3, 4)は前年同期の実績を上回ったものの、依存度の引き下げを進めている国家プロジェクトの売上が減少した(65百万円→18百万円)。通期予想は売上高14億円(前期比75.6%増)、営業損益9百万円(前期は3億30百万円の損失)。期末にかけて既存顧客の大型案件の検収が予定されており、下期は12億円強の売上を計上し、3億円強の営業利益を確保できる見込み。

     

  • 同社の業績は下期偏重のため、通期予想に対する進捗率で状況を推し測る事はできない。大半の顧客は、中長期的な観点からの労働力不足・人件費の抑制を念頭に置いた省力化・省人化としてのドローンの活用を考えており、様々なケースを想定して実証実験を行うため契約は長期にわたるが、1年毎に区切りとして検収を行うため、期末にかけて売上が集中する(業務自体は平準化されている)。STEP3、4の顧客が増加して期を通して機体が出荷できるようになれば収益が平準化されてくるが、当面は下期偏重の業績が続く見込み。なお、20/3期上期末時点において、売上に加えて、案件獲得見込みを含めると6億15百万円であり、予算に対する進捗は概ね順調である。

     

1.会社概要

コントローラで操作する必要がなく、離陸から帰還まで全てを自動で行う完全自律型ドローン(事前のプログラミング等により人の操縦がなくても飛行可能)の開発・販売を行っている。高いレベルでの自律飛行を多頻度で行う事が求められる「インフラ点検」、「物流・郵便」、及び「防災・災害対策」分野にフォーカスしており、同社のドローンはこの分野で人の代替として業務を行う。このため、同社のビジネスは単なる機体の製造・販売ではなく、業務効率化・無人化・IoT化ソリューション。検討段階からシステム開発・導入・アフターサービスまでワンストップで対応する。

 

【経営の基本方針】

同社が有する自律制御技術を軸に、様々な分野で継続的な取引関係構築が見込めるパートナー企業(コアクライアント)に対して、独自のドローン機体やシステム開発能力を用いて、有償の概念検証(PoC:Proof of Concept)プロジェクトを通じ、実際の経済効果を生み出すドローン用途を創出している。また、PoCから顧客業務への実装を行うシステムインテグレーション、更には、その量産(代替プレッシャーの低い特注インダストリアル製品の量産)までを一貫して手掛ける事で、高水準の収益の持続と開発投資の継続により技術革新を推進できるビジネスモデルの確立を目指している。

 

【沿革】

1998年から完全自律型ドローンの技術開発を行っていた千葉大学野波研究室にルーツを持つ。野波研究室は基礎研究から研究成果を積み上げ、2001年8月に世界に先駆けて自律制御化に成功した。自律制御技術の幅広い産業利用を念頭に、2013年11月に(株)自律制御システム研究所(ACSL)として法人化。2016年7月に現在代表取締役社長を務める太田裕朗氏をCOOに迎えてマネジメント及び開発体制を整備し、2018年12月に東証マザーズに上場した。

 

1-1 プラットフォーム技術

GPS環境下での自律飛行はもちろん、非GPS環境下での自律飛行を実現する画像処理による自己位置推定(Visual SLAM)、ドローンの飛行ログや取得画像データ蓄積・解析を行うための独自通信・クラウドシステム、人間や通路確認等の飛行制御向けAI、更には安全機能強化としてのパラシュート等、自律飛行に必要な技術を開発し、商用化している。
この技術を集約したプラットフォーム機体を用途別にカスタマイズした産業用特注機体を提供している。

 

コア技術である「自律制御技術」

 

(同社資料より)

 

自ら考えて飛ぶ自律制御技術 - 画像処理を用いた非GPS環境下での自律飛行技術「Visual SLAM」 -
「ACSL-PF1」は目で見て、自ら考える事ができる。具体的には、下向きの「SLAM単眼カメラ」と、2つのカメラモジュールからなる前方向の「距離制御用ステレオカメラ」を搭載しており、「SLAM単眼カメラ」で自己位置及び方角推定を行い、「距離制御用ステレオカメラ」で対象物との距離(水平・垂直面の方角)を測る。「SLAM単眼カメラ」と「距離制御用ステレオカメラ」が撮影した画像を機体に搭載されたGPUがリアルタイムで解析処理(演算)する事で自己の置かれた環境を認識し(環境認識技術「Visual SLAM」)、この認識結果を姿勢制御や飛行動作制御等と連動させる事で自律飛行を実現している。

 

(同社資料より)

 

環境認識技術、姿勢制御、飛行動作制御等、必要な技術を全て独自開発している事が同社の強みであり、特徴である。また、既存の環境認識技術は、GPSデータ(位置情報)、気圧センサー(気圧高度を計測)、デジタルコンパス(方位を計測)を使用するが、同社が開発した環境認識技術「Visual SLAM」はこれらを使用しない。GPSデータを利用しないため、GPSが入らない屋内や構造物の近接においても安全に自律飛行できる。言い換えると、非GPS環境下での完全自律飛行が可能な画期的な技術である。

 

1-2 ビジネスモデル

同社のサービスは、顧客ニーズに合わせて概念検証(PoC:Proof of Concept)を行う「STEP1」、概念検証に基づいたカスタム機体の設計・開発を行う「STEP2」、機体の少量生産と実際の業務への導入を行う「STEP3」「STEP4」に分かれる。

 

STEP 1

顧客のドローン導入ニーズを踏まえて、課題解決のために同社のテスト機体を用いた概念検証(PoC)を有償で行う。概念検証とは、新たな概念やアイデアの実現可能性を示すため、可能な範囲で手段を組み合わせて試験的な実験を行う事。同社においては、最小限のシステム構成により、顧客のドローン導入の目的である業務効率化・無人化・IoT化等の検証を行う。デモンストレーションによって、概念や理論の実用化が可能である事を示す。

STEP 2

顧客の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行い、ドローンの安全な導入に不可欠な操作シミュレータやドローンの保守点検サービス(システム導入・運用サポー卜)も提供する。

STEP 3

STEP2で開発した特注システムの顧客先における試用(パイロット)や商用ベースでの導入のための生産供給(販売)と、機体販売後の保守・メンテナンスサポートを行う。保守・メンテナンスサポートにおいては、販売後定常的に発生する機体の保守手数料や消耗品の販売料及びスポットでのコンサルティングサービスに係るサービス提供料を受け取っている。また、顧客の実務設計善にも継続的に取り組んでいる。

ドローン導入の事例としては、工場設備や建物・橋梁等の点検、下水道管内等の閉鎖環境の調査、物流・郵便のドローンによる配送、更には災害現場の初期把握等を挙げる事ができ、こうした業務にドローンを組み込む事で業務の効率化・無人化・IoT化が可能になる。

STEP 4

各事業年度の受注数(生産供給)が10台以上と定義しており、STEP3との違いとしては具体的な業務への本格導入を想定している。

 

1-3 ユーザー事例

 

(同社資料より)

 

Case1 楽天(株)の配送用マルチコプター型ドローン「天空」
全国各地のラストワンマイル課題の解消を目指して推進するドローン物流システム。

 

Case2 (株)NJSの管路・閉鎖性空間の点検・調査ドローン「Air Slider」
下水道等、閉鎖環境のインフラ点検合理化を促進するための点検ドローンシステム。

 

Case3 (株)モリタの災害ドローン「Rei – Humming」
消防車両の一部として搭載され、長時間の調査が可能な災害ドローンシステム。

 

2.2020年3月期第2四半期決算概要

2-1 上期非連結業績

 

19/3期 上期

構成比

20/3期 上期

構成比

前年同期比

売上高

246

100.0%

204

100.0%

-17.0%

売上総利益

97

39.6%

77

37.9%

-20.6%

販管費

329

133.9%

377

184.5%

+14.4%

営業利益

-232

-299

経常利益

-86

-82

親会社株主帰属利益

-87

-84

* 単位:百万円

 

売上高2億04百万円、営業損失2億99百万円(前年同期は営業損失2億32百万円)
売上高は前年同期比17.0%減の2億04百万円。ソリューションの構築(STEP1・STEP2)及び量産機体の販売(STEP3・STEP4)の売上は1億65百万円と同1.9%増加したが、政策的に依存度を引き下げている国家プロジェクトの売上減少をカバーできなかった。

 

営業損益は2億99百万円の損失。国家プロジェクトの売上減少や量産機体の販売台数減少に加え、ソリューションの構築(STEP1・STEP2)で小型案件が多かった事等で売上総利益率が低下する中、エンジニアの増員等で販管費が増加した。研究開発費は60百万円減の1億20百万円(通期で3億66百万円を計画)。経常損失が82百万円にとどまったのは、助成金収入2億21百万円(前年同期は1億48百万円)を営業外収益に計上したため。

 

STEP別売上高

 

19/3期 上期

構成比

20/3期 上期

構成比

前年同期比

ソリューションの構築

(STEP1・STEP2)

84

34.5%

93

45.5%

9.7%

量産機体の販売

(STEP3・STEP4)

78

31.7%

72

35.7%

-6.6%

その他

83

33.8%

38

18.8%

-53.9%

合計

246

100.0%

204

100.0%

-17.0%

* 単位:百万円

 

 

同社は検収基準で売上を計上しており、業績は下期偏重。期末にかけて検収を行う大型案件が多く、上期は小規模案件や新規案件等、短期間で検収を受ける案件が多い。案件の大型化・長期化に伴い、下期偏重傾向が強くなっている。

 

2-2 STEP別動向

ソリューションの構築(STEP1、2)

 

18/3期 上期

19/3期 上期

20/3期 上期

売上高(百万円)

 -

84

93

案件数(件)

14

22

36

 

同社は、ドローンの自律飛行に必要なソフトウェアを全て内製しているため、顧客の様々な要求に柔軟に応える事ができる。この強みを活かして、橋梁やトンネルの点検、或いは離島への物流等、指定された場所で顧客の要求通りにドローン(プラットフォーム)を飛ばし、顧客が頭で描いているものを現場で実演する。これがSTEP1であり、ドローン付きのコンサルである。STEP2ではSTEP1の結果を基にドローンをカスタム開発する(プラットフォームをベースにして顧客の目的に特化したドローンを開発する)。

 

この上期のソリューションの構築(STEP1、2)は36件の検収を終え、93百万円の売上を計上した。新しい顧客が増えた事が件数増加の要因。上期に一旦検収を終えた大型案件もあるが(第3四半期以降も継続)、小規模の案件や初回のプロジェクトが多かったため、単価は低下した(3.8百万円→2.6百万円)。

 

 

機体販売(STEP3、4)

 

18/3期 上期

19/3期 上期

20/3期 上期

売上高(百万円)

 -

78

72

販売台数(台)

17

28

18

 

STEP3では、STEP2で開発した特注システムの顧客先における試用(パイロット)や商用ベースでの導入のための生産供給と、機体販売後の保守・メンテナンスサポートを行う。STEP4は各事業年度の受注(生産供給)数が10台以上と定義しており、STEP3との違いとしては具体的な業務への本格導入を想定している。

 

この上期は、技術的な要求の高度化を反映して単価が上昇(2.8百万円→4.0百万円)したものの、各案件共に量産段階に入るのはこれからで販売台数は減少した。現在はドローンの磨き込みの(STEP1・2)段階の案件が多いが、中長期的にはこれらの案件がSTEP3・4に移行し、業績拡大のけん引役となる。

 

 

その他売上

 

18/3期 上期

19/3期 上期

20/3期 上期

メンテナンスサービス

 -

18

19

国家プロジェクト

 -

65

18

合計

 

83

37

* 単位:百万円

 

メンテナンスサービスにかかる売上と国家プロジェクトにかかる売上を、その他としてSTEP1、2、3、4と区別している。メンテナンスサービスは販売した機体の修理や部品販売にかかる売上を計上しており、将来的には、STEP3・4の拡大により、安定した収益基盤となる。

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

19年3月

19年9月

 

19年3月

19年9月

現預金

4,465

4,063

流動負債

225

85

流動資産

4,858

4,375

純資産合計

4,701

4,666

固定資産

68

377

負債純資産合計

4,926

4,752

* 単位:百万円

 

上期末の総資産は前期末との比較で1億74百万円減の47億52百万円。借方では、運転資金の増加や投資有価証券の取得等で現預金が減少する一方、米国オートモダリティ社への出資(約3億円)で投資有価証券が増加した。貸方では、前受金や純資産が減少した。自己資本比率98.2%(前期末95.4%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

19/3期 上期

20/3期 上期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

-49

-134

-85

投資キャッシュ・フロー(B)

-29

-316

-287

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

-78

-450

-372

財務キャッシュ・フロー

-198

49

+247

現金及び現金同等物期末残高

1,792

4,063

+2,271

+126.7%

* 単位:百万円

 

税引前利益△82百万円(前年同期△86百万円)、売上債権の減少1億52百万円(同△61百万円)、たな卸資産の増加△64百万円(同 51百万円)、前受金の減少△1億03百万円等で営業CFは1億34百万円のマイナスとなった。投資CFは主に投資有価証券の取得によるもので、財務CFは主に新株予約権の行使による。

 

2-4 第2四半期(7-9月)の主な事業ハイライト

物流分野において同社のドローンを用いた実証・実用が進んだ事に加え、技術開発を加速させるべく米国企業へ出資した。

 

7月

APAC CIOoutlookのトップ10 ドローン・テクノロジー・ソリューション・プロバイダーに選出

ANA ホールディングスと、NTT ドコモ及び福岡市の協力のもと、小型無人航空機を用いた、2 路線同時補助者なし目視外飛行を実現

8月

米国オートモダリティ社に対して280万ドルを出資。オートモダリティの技術を補完的に取り入れ、より高度・複雑な非GPS環境下の自律飛行を目指す

長崎県五島市における有人島間にドローンを用いた物流網を構築し、離島地域住民の生活利便性向上を目指すドローンによる物流の実証に参加

9月

ドローンによる空撮とAIによる画像認識技術を活用し、プラント設備の腐食レベルを自動判定するシステムの開発でJSR、アクセンチュアと連携

テクノロジー企業成長率ランキング「2019 年日本テクノロジーFast 50」で9位を受賞

 

上記に加え、第3四半期に入った10月には台風19号の影響により、約40世帯70人が孤立状態となっている奥多摩において、ドローンで生活用品や健康補助食品を輸送した他、11月にはACSLのドローン開発と防災分野での取り組みが、CNNのInnovate Japanで紹介された。

 

APAC CIOoutlookのドローン・ランキングに選出
海外技術専門メディアAPAC CIOoutlookが2019年に実施した、トップ10 ドローン・テクノロジー・ソリューション・プロバイダーに同社が選出された。APAC CIOoutlookはAPAC諸国のCIOやCTO、ITマネジメントや企業の意思決定者に対して、情報や知見、経験等を共有するためのプラットフォームを提供している情報誌。今回、同社は、中国DJI社ほか9社と並び、トップ10 ドローン・テクノロジー・ソリューション・プロバイダーに選出された。同社の選定は、Visual SLAM技術を活用した非GPS環境下で自律飛行可能なドローンがイノベーティブであると評価された事による。
同社は、シンガポール等での展示会出展や現地での実演フライト等で知名度の向上に取り組んでおり、こうした活動が専門誌尚、等で取り上げられるようになってきている。また、北米等でも、同社の営業チームが活動を開始している。

 

米国オートモダリティ社への出資(約3億円)
米国オートモダリティ社に約3億円のマイナー出資を行った。オートモダリティ社の持つ「Perceptive Navigation」技術を、(株)自律制御システム研究所(以下、ACSL)の制御技術に補完的に取り入れ、より高度で複雑な非GPS環境下での自律飛行の実現、及びオートモダリティ社を活用した米国における将来的な販売体制の構築、が出資の目的である。
オートモダリティ社は、米国ニューヨークに本社、カリフォルニアに開発拠点を有する飛行ソフトウェアの研究開発・販売を行っている。過去に米国の様々な開発コンペ、ビジネスコンペで優勝や入賞の実績を有する。将来を考えた時に、この技術をポートフォリオに組み入れておくべきだろうという判断で今回の出資となった。

 

オートモダリティ社の「Perceptive Navigation」技術は、ACSLの自律飛行技術「Visual SLAM」技術(GPSに頼らずに空間を認識して飛ぶ技術)と補完性がある。「Perceptive Navigation」技術は、レーザー光を用いたリモートセンシング技術(Lidar)を活用した、対象物の認識を中心とした自己位置推定技術である。対象物の相対位置を認識する事でドローンの自己位置推定を行うため精度が高く、橋梁点検等の開けた空間においても動作が可能だ。
橋梁の周囲を自律飛行する場合、橋梁の下は水面のため光が反射して認識が難しく、橋梁の上は空のため認識精度が落ちる等、「Visual SLAM」技術のみでは完璧な自律飛行が難しいケースがある。このため、オートモダリティ社のレーザー光を用いたリモートセンシング技術(Lidar)「Perceptive Navigation」を補完的に取り入れようと言うもの(自動車の自動運転ではLidarが主流で、画像処理が補完していると言う)。

 

ACSL製ドローンの中国製ドローンに対する差別化のポイントは「非GPS」であり、言い換えると、パイロットなしで飛ぶドローンである事。「非GPS」に関してはACSL自身でも開発投資を行っているが、他社の優れた技術も積極的に取り込んでいく考えで、今回の出資もその一環である。

 

ACSLとAutoModality社の補完関係

 

ACSL

AutoModality

保有技術

・画像処理を活用した、飛行環境全体における相対座標系の自己位置推定技術(大脳: Visual SLAM)

・独自飛行アルゴリズムによる自律飛行技術(小脳)

・点検用カメラ、クラウド、解析AI等の周辺技術

・Lidarを活用した接近対象を中心の相対座標系の自己位置推定技術(大脳:Perceptive Navigation)

・飛行アルゴリズムは中国企業のフライトコントローラを採用(小脳)

・点検用カメラは中国製品を使用

システム構成

・NVIDIA TX2 (大脳)

・独自のフライトコントローラ(小脳)

・独自のドローン筐体(ボディ)

・NVIDIA TX2 (大脳)

・中国企業のフライトコントローラ(小脳)

・中国企業のドローン筐体(ボディ)

 

(同社資料より)

 

長崎県五島市の離島間無人物流の実証実験に参画
ANAホールディングスと五島市が実施した、長崎県五島市における離島間無人物流の実証実験に機体を提供すると共に運航をサポートした。五島列島には島民が2~3人程度の島が複数あり、これらの島々で五島市を形成している。五島市に限らず、日本には数キロ離れた離島で生活している方も多く、台風や強風・高波による物流の寸断が悩みの種となっている。こうした地域のインフラ整備について、ANAホールディングスが取り組んでおり、ACSLも参画している。この取り組みは目視外飛行であり、ACSLの技術の完成度の高さを示す事例にもなっている。ACSLは既に目視外飛行の第一人者として市場では大きなプレゼンスを有している。

 

JSR、アクセンチュアと連携し、腐食判定システム開発
ドローンとAIによる画像認識技術を活用し、化学プラント等のインフラ設備の腐食レベルをスクリーニングにより自動判定できるシステムを開発した。同システムではドローンで撮影した高精度な画像をディープラーニング等の先端AI技術で判定する。このため、従来型の現場での目視による点検に代わり、制御室のモニター上でより迅速、正確、かつ安全な方法での設備点検が可能になる。

 

ACSLは、NEDO (国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)より「AIシステム共同開発支援事業」の助成を受け、2018年8月からJSR鹿島工場で実施してきた実証実験等を通じ、化学プラントのような危険な場所で、かつ非GPS環境下でも自律飛行するドローンを開発すると共に、空撮された画像データ及びシステム全体が連携する仕組みを整備した。
一方、アクセンチュアはAIやデータサイエンスの専門組織「アクセンチュア アプライド・インテリジェンス」が有する技術力や産業保安分野における豊富な知見を活用し、これらの画像やデータを解析し、腐食箇所の判定を可能にするAIの構築及び統合アプリケーションプラットフォームの開発を担当した。

 

(同社資料より)

 

孤立地へドローンによる物資輸送
台風19号の影響により都道204号が崩落し、約40世帯70人が孤立状態となっている奥多摩において、ドローンで生活用品や健康補助食品の輸送を実施した。NTTドコモのLTEの電波を使い、目視外飛行による物資の輸送であり、山奥等のローカルな電波が無い場所でも、国の基準を満たして目視外飛行が可能な技術を確立している事を証明した。今回は物資の重量が2㎏だったが、原理的にはより重量の大きい物資への対応が可能であり、今後、バッテリー性能の向上によって、より長距離の輸送も可能になる。

 

3.2020年3月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

19/3期 実績

構成比

20/3期 予想

構成比

前期比

売上高

807

100.0%

1,418

100.0%

+75.7%

売上総利益

403

50.0%

850

60.0%

+110.9%

販管費

733

90.9%

841

59.3%

+14.7%

営業利益

-330

9

0.6%

経常利益

-176

187

13.2%

当期純利益

-183

119

8.4%

* 単位:百万円

 

通期予想に変更はなく、営業損益の黒字転換が見込まれる
早期の産業利用を目的とした質の高いソリューション構築が増えてきていると言う。同社の顧客の一部がドローン利用の実例を開示している事もあり、ドローンの実用化を研究している同業者からの引き合いが増えているようだ。下期は継続中の大型案件が期末にかけて検収を迎え売上計上される他、上期に獲得した4億11百万円の新規案件も売上計上される見込み。

 

利益面では、売上拡大に伴う固定比率の低下で売上総利益率が60%と10ポイント改善する見込み。エンジニアを中心に10数名の採用を計画しているため人件費が増加する他、国家プロジェクト2件に係る開発費(1億50百万円~2億円程度)も織り込んだが、販管費の増加を吸収して前期は3億30百万円の損失だった営業損益が9百万円の黒字に転換する見込み。19/3期に実施した国家プロジェクト関連の研究開発に対する助成金収入1億80百万円の計上で経常利益は1億87百万円が見込まれる。

 

 

STEP別売上高

 

19/3期 実績

構成比

20/3期 予想

構成比

前期比

STEP1・STEP2 ソリューションの構築

293

36.4%

572

40.3%

+95.2%

STEP3・STEP4 量産機体の販売

384

47.6%

726

51.2%

+89.1%

その他

129

16.0%

120

8.5%

-7.0%

合計

807

100.0%

1,418

100.0%

+75.7%

* 単位:百万円

 

STEP別KPI

 

17/3期 実績

18/3期 実績

19/3期 実績

20/3期 予想

STEP1・2

ソリューション案件数(件)

12

60

81

110

STEP3・4

機体販売台数(台)

40

40

106

220

 

下期非連結業績

 

19/3期 下期 実績

構成比

20/3期 下期 差分

構成比

前年同期比

売上高

561

100.0%

1,213

100.0%

+116.2%

売上総利益

305

54.4%

772

63.6%

+153.1%

販管費

404

72.0%

463

38.2%

+14.6%

営業利益

-98

308

25.4%

経常利益

-90

269

22.2%

親会社株主帰属利益

-95

203

16.7%

* 単位:百万円

 

4.今後の注目点

新規の案件は短期間で終わるケースがあるようだが、その場合でも、検証結果を基にその後本格的な開発に入る。機体を作り込むために数年間STEP1、2を継続する顧客も少なくないようだ。また、以前はSTEP1、2で終了する案件もあったが、最近は減ってきていると言う。アイデアベースで始めた顧客等は短期間で終了する事が多いが、大半の顧客は中長期的な観点からの労働力不足・人件費の抑制を念頭に置いた省力化・省人化としてのドローンの活用を考えており、様々なケースを想定して実証実験を行うため連携関係は長期にわたる。ただ、契約は1年毎に区切られ検収を行うため、期末にかけて売上が集中する(業務自体は一定程度、平準化されている)。STEP1、2が数年にわたり、年々難易度をあげて実施していく顧客も少なくないと言う。STEP3、4の顧客が増加して期を通して機体が出荷できるようになれば収益が平準化されてくるが、当面は下期偏重の業績が続く見込み。このため、同社においては通期予想に対する進捗率で状況を推し測る事はできない。基本的にSTEP3、4に進む意思のある顧客や案件の獲得に力を入れており、そうする事によって、いたずらに研究開発範囲が広がる事がなく、また、営業体制も少数精鋭が可能になると言う。「赤字を継続する考えはなく、ロボット企業で利益を出し、市場の期待に応える事が、上場会社としての責務」というのが太田社長の考えだ。

 

参考:コーポレート・ガバナンスについて

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

6名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年06月28日)
基本的な考え方
当社は、「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ」をミッションとして掲げ、「世界で最も優れた自律技術を追求し、その社会実装を全うすることで、人が行う業務を一つでも多く自動化・無人化する、そして、社会の進化を推し進めていく」という経営理念の下、当社を支えている株主をはじめとした全てのステークホルダー(従業員、取引先、顧客、債権者、地域社会等)との信頼関係を構築・維持し、皆様の利益を重視した経営を行うことが当社の使命であると考えております。そのためには、当社事業が安定的かつ永続的な発展を果たすことが不可欠であり、このような発展の基盤となる経営の健全性及び透明性の向上を目的とするコーポレート・ガバナンスの強化は重要な経営課題であると認識し、積極的に取組んでおります。具体的には、株主総会の充実、取締役会及び監査役会の機能強化、適時適切な情報開示・IR活動の実施、内部管理体制の強化等によりコーポレート・ガバナンスの一層の強化に努めております。

 

【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

 

 

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