JPR 資本収益性/資本コスト分析レポート:オリコン株式会社(東証スタンダード 証券コード:4800)
価値創造力の回帰分析による株価アップサイドは2.1倍

2025/05/20

データ解析レポート
ジェイ・フェニックス・リサーチ(株)
宮下修

守りの効率化:オリコン-収益構造最適化への挑戦と成⾧機会

オリコン株式会社(東証S・4800)は「ファクトを情報化する」を掲げ、①顧客満足度(CS)調査、②ニュース配信・PV、③データサービスを軸とする情報プラットフォーム企業である。CS調査は184業界・累計3.84百万人の回答データを保有し、ロゴライセンスと送客を収益源とする高ROICモデルを確立する。2025年3月期の連結実績は売上高4,916百万円(前期比+2.4%)、営業利益1,402百万円、営業利益率28.5%。SEO強化費用とモバイル事業売却が響き営業減益▲9.9%となったが、営業CF1,208百万円を確保し、1株36円配当を継続した。またニュース配信・PV事業は▲4.1%の減収と逆風を受けたものの、顧客満足度(CS)調査事業+10.4%と伸⾧し全体の増収を支えた。純有利子負債は▲2,200百万円とネットキャッシュを維持し、追加M&A余力を残す。成⾧ドライバーは二つ。第一にCSデータ外販・コンサル拡充と生成AIによるパーソナライズドランキングで顧客LTVを引き上げる。第二に2024年10月連結の広告制作会社・新旭と連携し、動画・OMO施策を一貫提供して広告領域を新たな柱へ育成する。これを織り込み会社は2026年3月期に売上高6,000百万円(+22%)、営業利益1,450百万円を計画する。23年11月~24年2月に自己株式30万株(総額約3億円)を取得し総還元性向は55%超へ上昇。国内ネット広告費は24年に9.6%増の3兆6,517億円へ拡大し、SNS動画広告の伸⾧が同社の高単価メニューを下支えする。Cookie規制や検索アルゴリズム変動による広告単価低下リスクは注視が必要だが、一次データ優位とAI活用でROE20%前後を維持できれば株価の上値余地はなお大きい。予想PERは業界平均を下回る10倍で、実質負債ゼロの財務と高ROICを勘案すればバリュエーション面で割安感が残る。

各種資本利益率は上場企業で上位10%から3%と高水準

2025年3月期の会社計画ベースで計算すると、期首の有利子負債と株主資本を分母、税引き後営業利益を分子とする「シンプルROIC※」は、17.1%、余剰現預金など事業活動に利用されていない非事業資産を除いた「リーンROIC」は57.2%、ROEは、17.0%。オリコンの計算対象となった上場企業3,882社の中での位置づけは、シンプルROICでは上位9.7%、リーンROICは上位3.6%、ROEは上位9.7%と相対的に高い水準である。

回帰分析から推計した株価水準は現行株価の約2.1倍

資本利益率は、「①企業が資本を利用して儲けたリターン」、資本コストは「②投資家から見て資本に対して儲けてほしいリターン」と定義できる。また、「①資本利益率/②資本コスト」は「価値創造力」と定義できる。「価値創造力」と資本の時価と簿価の比率、例えばPBRとはプラスの相関関係がある。JPRではデータ入手可能な上場企業3,882社を対象に分析を行った。分析における回帰式の決定係数が0.5以上ならば高い説明力を示唆する。結果は、p.3~p.5に示した通り、0.73~0.94と0.5を上回っている。そのうえで、その回帰分析から株価推計を、オリコンについて行った。その結果、次ページで示すように、2025/5/12時点の株価782円の約2.1倍の1,620円と推計された。ROIC、WACCなどを利用した開示は東証も推奨しており、本レポートの視点をベースにした株価形成が急速に定着する可能性がある。オリコンの安定性や上場企業で平均並みの資本収益性が認知されれば、推計株価が1-2年で達成される可能性は十分ある。

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