株式会社キャンバス(4575 Growth)
今後期待される3つのイベント

2023/09/11

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

期待される3つのイベント
今後、注目されるイベントは、①欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会(2023年10月)でのデータ公表、②CBP501の後継品の前臨床入り決定、③CBP501のPh3のデザイン決定と考えられる。①ESMOでの発表については、既に各群の主要評価項目の達成度が公表され、Ph3に進むことが決定されているため、大きなサプライズを惹起するものではない。各群の投与内容と各群の生存期間中央値(mOS)が注目されるが、Ph3の主要評価項目となる後者の方が重要である。②CBP501の後継品候補の内、CBP-A08とCBT005のいずれかが前臨床へ進むことが年内に決定され公表される予定である。キャンバスのパイプライン価値増強を後押しするイベントになろう。そして、最も注目されているのが③Ph3デザイン公表である。現在FDAと相談中で、いつ頃決定されるかは不明であるが、フェアリサーチでは、年内遅くとも来年初頭にはデザインが固まるものと推測する。既に治験薬の準備は完了している。Ph3のデザインが固まった後、治験施設との契約が始まり、2024年半ばまでに最初の患者組み入れ(FPI)が達成できれば、従来の計画通り、2027年上市は可能であると考えられる。また、デザインが固まることによって、自社開発と並行している提携交渉などへの好影響も期待したい。

Ph3開発費用の心配は時期尚早
キャンバスではPh3の開発費用として55億~65億円を想定しているが、そのうち10億円分は、第17回新株予約権行使で調達済である。残りの45~55億円と当面の運営資金3.8億円を賄うため、2023年6月、新株発行と第19回及び第20回新株予約権発行を行った。8月末時点で、第19回新株予約権の行使価額は下限行使価格となっているが、このまま残存している新株予約権が下限行使価額で権利行使されると、第19回新株予約権全体での調達額は22-23億円程度となるが、前節で記述したイベントが株価に好影響を与えれば、調達額は増加する公算が高い。仮に第20回新株予約権が当初想定通りの調達ができると、新株発行と第19回、第20回新株予約権の合計で47億円以上の調達は可能で、必要とされる資金のかなりの部分はカバーできる。現時点で、開発費用の心配をするのは時期尚早であると考えられよう。

免疫着火剤の開発競争で優位に立つCBP501
すい臓がんでは、他のがん種と比べ、免疫チェックポイント阻害剤(抗免疫チェックポイント抗体;ICI)単剤の効果が殆ど無い。膵臓がんにおいて、ICIの効力が低い原因として、そもそも免疫砂漠であることが指摘されている。また、すい臓がん細胞の周囲をCAF(Cancer-associatedFibrosis)が取り囲み、免疫細胞やICIの浸潤を阻んでいるほか、CAFが免疫細胞の働きを抑制するサイトカインを分泌している。このため、がんを取り巻く免疫環境を変化させ、ICIが効くようにする免疫着火剤の開発が行われてきた。その種類として、①T細胞を誘導するがんワクチン②免疫抑制作用があるマクロファージ2に対する抗体・阻害剤③T細胞を誘導し、免疫抑制細胞を減少させるCXCR4アンタゴニスト④免疫原性細胞死を惹起し、がん抗原の提示を強化する低分子薬(CBP501もこの範疇)⑤このほか免疫環境の改善を狙う薬剤(VEGF阻害剤、IDO阻害剤、Wee1阻害剤など)⑥腫瘍溶解ウイルスがある。さらに細胞療法など(PDL1-t-haNK細胞やBispecific抗体)も開発が行われている。残念ながら、このうち多くは著効が確認されず、開発が中断されている。これまでに、3次治療で著効を上げているのは、CBP501と PDL1-t-haNK細胞のみであり、CBP501は低分子に近いペプチドで比較的安価であることに着目したい。

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