株式会社キャンバス(4575 Growth)
秋口には次の方針決定

2022/08/22

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

順調な開発進捗
臨床第2相試験(Ph2)のステージ1部分について、被験者36名の登録を2022年8月15日に完了したことが発表された(8月16日)。また、既に、3剤投与群のひとつで2例の3カ月無増悪(3M-PFS)例を確認しており、少なくともステージ2ないしPh3へ進行することが確定している。現時点まで結果が判明している症例は、各群4~5例と推察されるので、40~50%の確率で3M-PFSが出現していることとなる。治験デザインではステージ1で35%以上の3M-PFSをPh3へのステップ・アップの基準としているので、順調な開発進捗状況といえる。また、安全性の面でも特段の問題は発生していない。6月20日に複数の3M-PFS達成例の報告があった後は、3M-PFS達成例の発表がないため、不安視する声もあるが、倫理上あるいは当局の規制の関係から、治験結果を逐次公表はできない。治験の先行きに大きな影響を及ぼす事象が発生した場合に限られる。つまり、新たに1例ほど3M-PFS例が出現しても新たな成果の発表は行われないと考えられる。3M-PFS例が4例以上となり、ステージ2をスキップして第3相試験(Ph3)に進行する場合等に発表があるものと推察される。

財務状況も著しく改善
2022年6月期は8億55百万円の当期赤字と第4回転換社債の一部買入消却(3億87百万円)による現金流出があったものの、第17回新株予約権行使が進み、6月末の現預金の水準は前年比4億17百万円減の7億37百万円にとどまった。ただし、7月以降、転換社債の転換と新株予約権行使で、財務状況は著しく好転している。自己資本比率は6月末の20.2%から、7月には72%程度まで改善しているものと考えられる。
今後、新株予約権の未行使部分が600円以上の株価水準で行使されれば、次の開発がステージ2になろうがPh3になろうが、当面の運転資金と開発資金(Ph3の場合はパート1まで)は確保できる計画となっており、提携獲得までの時間的余裕も存在する。

今後のスケジュール
CBP501Ph2ステージ1の患者登録が完了したのは8月15日であるため、全例の観察期間が終了するのは11月中であり、その後中間解析が行われ、12月以降に詳細な結果が公表される予定である。しかし、キャンバスは、CBP501Ph2ステージ1の患者登録完了の公表(8月16日)とともに、9月にはステージ1の半数以上の3M-PFSが確認可能になり、その他の情報も含め治験の初期の感触が得られることから、9月末までに、次のステップに向けた何らかの経営判断等を公表する予定である。
新規提携獲得の方は、国内外製薬企業等と交渉折衝をかさねているものの、現時点まで提携獲得には至っていない。キャンバスによれば、製薬業界では、KRAS阻害薬や二重特異性抗体など注目を集める分野、または後期開発段階終盤の収益化が見えている分野以外での提携に製薬企業等が消極的な傾向がさらに強まっており、このため創薬企業では自社開発に舵を切らざるを得ない会社が増えているという。
開発中の化合物を導出するのは、メジャーリーグに主力選手をトレードに出すのに似ている。キャンバスとしては、メジャーリーグクラスのCBP501を易易と導出で手放すよりも、共同開発という形で、相手の会社から、資金あるいは免疫チェックポイント阻害剤の提供を受けながら、自分で育てていく途が望ましいのかもしれない。

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