ワンカラにみる‘既存業種新業態’というビジネスモデル

2012/06/11

成熟経済に入った日本において、健康で快適に余暇を楽しむことは大きなテーマであり、潜在需要は大きい。また、成長期のアジアにおいても豊かさが増してくれば、余暇に対するニーズは当然高まってくる。余暇産業といえば、通常、アミューズメント、スポーツ・フィットネス、観光・行楽、趣味・教養に分けられる。

人々は歳を重ねても元気でいたい、若者には負けられない、という気持ちを持っている。健康であり続けるには、運動、コミュニケーション、家族、食事、ストレス発散、リラックス、睡眠が大事である。ここを市場にしていけば、マーケットはまだまだ開拓できる。

活動的なアクティブシニア層をどう開拓して、コミュニティ化していくかが焦点で、今の時代に合った方向である。

衣食住の次は余暇。カラオケは1つのアイテムであり、フィットネスも1つのアイテムである。いずれも大衆的(ポピュラー)で手軽である。この庶民的なものを新しい形で提供することができるのか。事業ドメインは余暇。余暇市場はマクロの統計でみると全く伸びていない。しかし、その中で、安・近・短志向は強まっている。安くて近くて短くという手軽で身近なレジャーの集合体が攻めるべきターゲットとなりうる。

それには、イノベーション(革新的な仕組み)を持ち込む必要がある。これをコシダカホールディングス(コード2157)の腰髙社長は、「既存業種新業態」と呼んでいる。取り組む事業分野(セクター)に目新しさはないが、そこでやろうとしていることは、全く新しい仕組み(ビジネスモデル)でサービスを提供しようというものである。まねきねこやカーブス(女性専用フィットネス)はまさにその典型で、ボウリングや温浴もこうしたものにしようとしている。

既存業種新業態といっても、新しいことはすぐ真似されてしまうのではないか。確かに、どんなビジネスでもそのまま続けていれば時代に合わなくなってくる。そこに新しい仕組み(イノベーション)を持ち込んでビジネス化する。真似ができないようなもので先行し、後で真似されても、徹底的に考えて先行すれば、結果的に真似できないものになる。カラオケ本舗まねきねこも、既存のカラオケ店を活用するという仕組みであるが、誰も同じような水準まで真似できず、当社が圧倒的な低コストを実現している。

1人カラオケのニーズは相当ある。新宿の歌舞伎町に通常のカラオケ店を出店したが、昼間の3割は1人客である。かき入れ時に1人で来られては困るが、1人で楽しみたいというニーズはあるので、ワンカラを作ることにした。小スペースで、ヘッドフォンを使ってカラオケを楽しむというスタイルである。

1人カラオケの専門店として、昨年11月に神田駅前に1号店、今年4月に高田馬場に2号店をオープンした。1人でカラオケを歌う、ワンカラが予想以上に好調である。神田店の場合は24のピット(個室)があり、料金は1時間600円(9:30~18:00)、1100円(18:00~23:30)である。楽しみ方は、ゴルフの練習場やバッティングセンターといった感じである。但し、いかにも練習というではなく、1人で気兼ねなく好きな歌を好きなだけ歌いたいということだ。1人でゆっくり歌うことが楽しいのである。

ワンカラは偶然当ったのではない。腰髙社長の発案で、カラオケのいろいろな楽しみ方を研究し、提案すべしという方針の中で、社長自身がやりたいと思ったことである。本社の社長室の隣に実験ルームを作って工夫を重ねてできたものである。

飲食の消費は少ないが、効率よくピットの使用料が稼げるので、従来のカラオケに比べても採算は良好である。単価が高いこと、シフトの人数が少なくて済むこと、稼働率が高いことである。これが当ったので、ワンカラの出店を加速する。従来、当社のカラオケ店(まねきねこ本舗)は都心には少なかったが、うまく立地さえ合えば都心でも出店する。今期中に10店は出店する計画である。

コシダカは、カラオケ、フィットネスの店舗数でどちらも日本ナンバーワンである。2月末でカラオケ317店、フィットネス1100店、ボウリング16店、温浴4店を展開している。

今2012年8月期は経常利益で43.5億円、前年度比+30.4%と引き続き好業績が見込め、ピーク利益を更新しよう。フィットネスのカーブスは極めて好調であり、カラオケもキャッシュカウ(金のなる木)として着実に貢献度を高めていることによる。

カラオケは500店へ、フィットネスは1500~2000店へ、ボウリングは45店へ、温浴は50店へ拡大する計画である。これによって、売上高700億円、経常利益100億円は十分狙える体制を整えつつある。独自のビジネスモデルで価値創造を行うユニークな企業として注目したい。

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