日米政治リスクと株式市場
政治リスクとは
経済を論じるにあたっては、政治の問題を避けて通れません。法治国家での経済活動はルール(法律、規則など)に基づいて行われますが、それを制定・撤廃するのは、主に政治の役目であるからです。
ただし先進国の場合、政権が代われば経済が蘇るという期待は、幻想に終わるのが普通です。一方、経済を邪魔したり(不必要な規制や過剰な保護貿易政策など)、歪めたり(知人や特定企業の優遇など)といった権限の誤用・乱用のリスクについては、先進国も無縁ではいられません。実際、日米でも今、政治不信が問題となっています。ここで重要なのは、政治の暴走を防ぐ仕組みが働くかどうか、です。
トランポノミクスは不発
米国では、トランプ政権が発足して半年がたちました。その経済政策であるトランポノミクスについては、懐疑派の正しさが証明されたようです。事実、足元の経済成長率は同政権が目指す「3%以上」には程遠く、来年も、従来のペースとほぼ変わらない成長率(2%程度、図表1)にとどまる見通しです。
トランプ政権は、目覚ましい法案を何一つ成立させていません。医療保険制度の抜本改革(オバマケアの改廃)は、ほぼ暗礁に乗り上げました。夏までにまとめるはずだった税制改革(法人税や所得税の減税)は、年内の決着すら難しそうです。インフラ投資に至っては、話題にもならなくなってきました。
大統領を議会がけん制
株式市場などは当初、トランポノミクス期待で大いに盛り上がりました。一応の根拠は、大統領に加え上院・下院とも共和党が制したため、景気刺激策は比較的円滑に決まるだろう、というものでした。
しかし医療保険の迷走が表わしているとおり、共和党は一枚岩でありません。また、トランプ氏に批判的な共和党議員も増えつつあります。たとえば最近、対ロシアの経済制裁を強化する法案が、共和党の賛同を得て可決されました。これによると、大統領が勝手に制裁を解除することができなくなります。
トランプ氏は親ロシア(私的な事情か?)なので、その独断を防ぐのが法案の狙いでしょう。同氏も結局、署名を余儀なくされました。示されているのは、大統領と議会とのけん制関係です。これが本来の米政治であり、根底には、権力の集中は暴走や腐敗を招くという、歴史から得られた教訓があります。
なぜ株価は堅調なのか?
政治腐敗とは、私的な利益や虚栄のために、権力を行使することです。それを抑えるには、権力への監視や批判、権力相互のけん制が欠かせません。この点で米国は、今も優れた国だと言えます。「自分とトランプ家が第一」に見える大統領への批判が、世論や議会において日増しに高まっているからです。
米国に影響されたのか、日本でも現政権への批判が突然増え、支持率が低下しました。ムードに流されやすいという欠点は、相変わらずです。しかし、少なくとも言論の自由が残っていた点は、朗報です。
もう一つの明るい事実は、日米の政治が混乱する中でも、株価は高値を更新または維持していることです(図表2)。民主主義が機能している点を、評価しているのでしょうか。それとも、アベノミクスやトランポノミクスは期待外れだということを、織り込み済みだからでしょうか。おそらく、後者でしょう。ただ、それは良い傾向です。ようやく市場も、政策への幻想から目覚めたということだからです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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