来週の金融市場見通し(2025年12月15日~2025年12月19日)

2025/12/12

■来週の見通し

米連邦準備理事会(FRB)は10日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続となる利下げを決めました。パウエル議長は労働市場の弱さを強調し、追加利下げに慎重な「タカ派」色を薄める格好となりました。日銀は来週の金融政策決定会合で利上げを決定するとみられます。ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は市場が想定するよりも高くなるとの思わくがくすぶる中、植田日銀総裁の発言が注目されます。日銀短観、米雇用統計、米消費者物価指数(CPI)なども確認したいところです。

◆株価 :米経済指標に注目

今週の日本株は、底堅い動きとなりました。指数の組入れ比率が高いソフトバンクグループの株価下落が上値を抑える場面がありましたが、FOMCで0.25%の利下げが決まったほか、来年以降も利下げを継続する見通しが示されたことや、同会合の参加者が示す米国経済の見通しが引き上げられたことが好感され、上昇しました。 

来週は、雇用統計やCPIなど米国の経済指標が注目されます。雇用統計で労働市場の減速が示唆され、CPIでインフレの落ち着きが示唆されると、米利下げ期待が強まり、株式市場の追い風となる可能性があります。FRB高官の発言も注目されます。週後半は、日銀の金融政策決定会合を控えて、様子見姿勢が強まる展開になることが予想されます。

◆長期金利 :神経質な動き

今週の長期金利は、週初は日銀が18、19日の会合で利上げを決めるとの見方に加え、ターミナルレートが想定よりも高くなるとの思わくなどから、一時1.970%と2007年6月以来18年半ぶりの水準まで上昇しました。ただ、その後は買戻しが優勢になったことや米利下げを受けて、低下する動きになりました。

来週は、日銀会合、植田総裁の記者会見での発言を控え、やや神経質が動きとなりそうです。ターミナルレートの水準が引き上がるとの見方が強まると、長期金利が押し上げられる可能性があります。もっとも、利上げについてはすでに織り込まれていることや、押し目買いも見込まれ、金利上昇も限定的とみられます。米雇用統計、米消費者物価指数などを受けた米長期金利の動きも確認しながら、方向感を探ることになりそうです。

◆Jリート :日銀会合待ち

今週のJリート市場は、上昇しました。12月の日銀会合における追加利上げ観測の高まりと長期金利の高止まりが下押し圧力となったものの、東証REIT指数(配当なし)1,950ポイント付近では下値を拾う買いなどが下支えとなり、底堅く推移しました。今週末の分配金利回りは4.564%(東証上場REITの予想分配金利回り、QUICK算出)となりました。

来週は、日銀の金融政策決定会合後の植田総裁の発言を待ちながら、方向感を探る展開を想定しています。日銀が中立金利を引き上げるとの事前報道などで金利の先高観がさらに強まると、Jリート市場を下押ししそうです。一方、値下がりした局面では下値を拾う買いや分配金利回りに着目した買いが期待されることから下値も限定的になると見込んでいます。

◆為替:日米金融政策にらみ

今週のドル円は、若干ながら上昇する動きになりました。週前半は、国内の7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値が速報値から下方修正されたこと、またFRBの2026年の利下げペースが緩やかになるとの思わくが広がり、円売り・ドル買いが優勢になりました。ただ、その後は米利下げを受けて米長期金利が低下したことや日銀の利上げも意識され、上げ幅を縮小しました。

来週は、日米の金融政策をめぐる思わくに振らされそうです。日銀の利上げは織り込み済みですが、円安を意識して植田日銀総裁が利上げを継続する姿勢を示すとみられ、ドル円の上値を抑制する可能性があります。他方、FRB高官の発言に加え、発表が遅れていた米雇用統計、米消費者物価指数などを受けた、米金融政策への思わくに振らされることも想定されます。

◆米国株 :経済指標に注目

今週の米国株は、底堅い動きとなりました。週の前半は、FOMCへの警戒感から売りが優勢となりましたが、FOMC後は買いが優勢となりました。FOMCでは、0.25%の利下げが決まったほか、来年以降も利下げを継続する見通しが示されたこと、同会合の参加者が示す米国経済の見通しが引き上げられたことなどが好感され株式市場の押し上げ要因となりました。

来週は、雇用統計やCPIなどの経済指標が注目されます。雇用統計で労働市場の減速が示唆され、CPIでインフレの落ち着きが示唆されると、利下げ期待が強まり、株式市場の追い風となる可能性があります。ミラン理事やウォラー理事などのFRB高官の発言も注目されます。

来週の注目点

日銀短観(12月調査)12月15日(月)発表

日銀短観の2025年9月調査では、大企業・全産業の業況判断DI(ディフュージョン・インデックス、業況が「良い」と答えた企業の割合-「悪い」と答えた企業の割合)は+24%ポイントと、前回調査から小幅に上昇しました。米国の関税が引き下げられた自動車などを中心に製造業の景況感が改善したほか、価格転嫁の進展などを背景に、非製造業も高水準での推移が続きました。

12月調査の業況判断DIは横ばい圏での推移が見込まれます。世界的な半導体需要の回復を背景に製造業の景況感の改善が続く一方、日中関係の悪化に起因するインバウンド需要の減少により、非製造業の景況感が悪化する可能性があります。

米雇用統計(11月)12月16日(火)発表

雇用統計によると、9月の非農業部門雇用者数は前月差11.9万増と、市場予想を上回る伸びとなりました。サービス部門の伸びが拡大したほか、生産部門も増加に転じるなど、民間部門を中心に雇用者数が持ち直しました。一方、失業率は4.4%と、2か月連続で上昇しました。

11月の非農業部門雇用者数は前月差3.8万増、失業率は4.4%程度を想定しています。人工知能(AI)による効率化や、米国の関税政策の不透明感から、人員を削減する動きが出てきており、雇用者数の低迷が続くことが予想されます。なお、あわせて、10月の値も公表される予定ですが、政府閉鎖の影響で、失業率など一部の指標は公表されません。

図表、スケジュール入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/weekly/02/

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