読者の中には熱心に株価水準の妥当性、すなわちバリュエーションのチェックをしている方がいるだろう。手軽なのは日経新聞の市況欄で予想PER(株価収益率)の指標を見ることだ。それをしているひとは目を疑ったに違いない。先週、金曜日の紙面に掲載されたPERは16.29倍、翌土曜の紙面ではなんと17.27倍台に跳ね上がっていた。それをベースに予想EPS(1株あたり純利益)を逆算すれば、2180円程度まで急減する。いきなり二けた減益予想に下方修正か?と訝しんだかたもおられただろう。
しかし、これは、なんのことはない、日経の集計ミスである。データベースからメガバンクの利益額がそっくり抜け落ちていたのだ。金曜日の朝刊1面で「5大銀、2期連続で最高益」という記事を打ちながら、その最高益をデータから欠損させてPERを計算していたという、笑えないオチである。
これをそのまま使って、先週のストラテジーレポート(5月16日付『日本株 戻りも、目先はここまで』)では、日経平均のPERについてコメントしたが、ここで訂正しておく。まだ今日付けの紙面ではPERは16倍台となっているが、これも怪しい。正しくは15.4倍程度だろうと思われる。
いずれにせよ、極端に低い値は間違いなので、それを無視すると予想EPSは2400円程度に落ち着くだろう。だが、問題は再び金利が上昇していることだ。
【日経平均のEPSと日本の10年債利回り】
出所:QUICKデータよりマネックス証券作成
株価の理論式(DCF)に、EPSと金利をあてはめると、3万7000円となる。現在の株価はほぼ理論値通りである。
株価の理論式(DCF)


業績予想はとうぶん大きく変化しないだろうから、ここからは金利の動きが鍵を握る。再び上昇基調を強めている債券利回りには、財政問題など様々な要因が影響する。引き続き、注視していきたい。