来週の金融市場見通し(2025年5月19日~2025年5月23日)
■来週の見通し
米中両国は互いの関税を115%引き下げることで合意し、14日に発効しました。一部の追加関税は8月中旬まで90日間の一時停止とし、2国間で協議を続ける予定です。また、4月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を下回り、物価高への過度な懸念が和らぎました。他方、日銀の中村審議委員は講演で、金融政策について「当面は現状維持が適当」との考えを示しました。来週は米中だけでなく日米の通商協議の進展、また4月の全国消費者物価指数なども確認しながら方向感を探ることになりそうです。
◆株価 :一進一退の動きか
今週の日本株は、上値の重い動きとなりました。12日に米中両国が双方に課していた高関税を大幅に引き下げることを発表したことが好感され、一時日経平均株価は3万8千円を上回る場面がありました。ただ、高値警戒感から週末にかけては、売りが優勢となりました。
来週は、一進一退の動きとなりそうです。海外投資家や事業法人による資金流入が6週連続で続いており、日本株の需給が改善していることは株価を下支えするとみられます。一方、個人投資家は5週連続で売り越しとなっており、株価が上昇する場面では、個人投資家の売りが上値を抑えることが予想されます。今後は、日米の貿易交渉やウクライナとロシアの停戦交渉、米国の減税法案実現に向けた動きなどが注目されます。これらに進展があると、株価は大きく上下する場面もありそうです。
◆長期金利 :居所を探る
今週は、米中の関税引下げを受けて、投資家心理が改善し、安全資産とされる債券に売りが広がりました。米長期金利が上昇したことや、世界経済の減速懸念が和らぎ、日銀の追加利上げ観測が高まったことも手伝い、長期金利は1.4%台後半まで上昇しました。ただ、週末は米金利低下を受け、上昇幅を縮小しました。30年国債入札は無難な結果、5年国債入札は弱めの結果でした。
来週は、米国の景気悪化懸念の後退を背景に、米利下げ時期が後ずれるとの見方が広がっており、米金利とともに国内金利も低下し難い状況が続きそうです。とはいえ、日銀が早期利上げに慎重な姿勢を示していることや、米国の物価指標が下振れていることは、長期金利の上昇を抑制しそうです。4月のCPIに加え、20年国債入札なども確認しながら、居所を探ることになりそうです。
◆Jリート :上値は重いか
今週の J リート市場は、米中両国が追加関税の大幅引き下げで合意し、長期金利が上昇したことで下落しましたが、週末にかけて値を戻しほぼ横ばいとなりました。今週末の分配金利回りは 5.053%(東証上場 REIT の予想分配金利回り、QUICK 算出)でした。
来週は、日米長期金利や日米通商協議の影響から上値の重い展開になることを想定しています。米国政府が日米貿易協定の見直しを視野に入れているとの報道もあり、通商協議が難航する恐れがあります。また、追加利上げに慎重とみられていた日銀内で、利上げ方針を維持する意見も出ていたことが明らかになるなど、日銀の政策スタンスについて注意深く確認する必要があります。一方、5%程度の予想分配金利回りに着目した一定の買いが引き続きJリートを下支えすることが期待されます。
◆為替:方向感乏しい
12日の米中貿易協議において、両国は相互関税率を市場の想定より大幅に引き下げることに合意しました。その結果、今後90日間、両国に相違の解消を図る時間的余裕が生まれたことで、市場ではリスク選好の動きが優勢となり、ドル円は一時148円台半ばまで上昇しました。その後は米インフレ指標が市場予想を下回り、インフレの沈静化傾向が確認されたことなどから、ドル円は145円前半まで下落しました。
来週のドル円は、方向感の乏しい展開が想定されます。開催が見込まれる日米財務相会合において、為替についての協議も行われ、米国が円安是正を求める可能性があることから、足元、ドル安円高が進みやすい地合いにあります。とはいえ、米国と主要貿易国との関税協議に相応の進展が期待されており、過度なリスク回避の動きもなさそうです。
◆米国株 :減税法案に関する動きなどが注目
今週の米国株は、12日に米中両国が双方に課していた高関税を大幅に引き下げることを発表したことが好感され、上昇しました。ただ、NYダウは指数の構成割合が高いユナイテッドヘルス・グループが不正行為の疑いで米当局の捜査対象になっていると報じられたことを受けて、大幅安となったことが重しとなり、売りが優勢となる場面もありました。
来週は、減税法案成立に向けた動きなどが注目されます。米議会では、所得税の減税などを盛り込んだ法案成立に向けた動きが活発になっています。内容について意見の相違があり、法案成立は難航する見込みですが、成立に向けた動きが前進すると株式市場は好感することが予想されます。最近の株価上昇でやや割高感が強まっており、利益確定売りに押される場面も想定されます。
■来週の注目点
全国・消費者物価指数(4月) 5月23日(金)発表
3月の全国・消費者物価指数(コアCPI、生鮮食品を除く総合)は前年比3.2%上昇と前月(同3.0%上昇)から伸びが拡大しました。食料品の価格の伸びが加速したほか、宿泊や外食などのサービス価格もプラス幅が拡大しました。
4月のコアCPIは一段と伸びが拡大することが予想されます。公立高校の授業料無償化により教育費は下落するものの、食料品の値上げや政府による電気ガス代の補助縮小が物価を押し上げる見込みです。
ユーロ圏製造業PMI(5月、速報値) 5月22日(木)発表
4月のユーロ圏製造業購買担当者景況指数(PMI)は49.0と、好不調の境目となる50を下回る状況が続いていますが、2022年8月以来の高水準となり、持ち直しの兆しがみられています。国防費を中心とする財政支出観測に加えて、米国による関税引き上げを見越した駆け込み需要が景況感を押し上げた可能性があります。
5月の製造業PMIは低下することが見込まれます。現時点では、米国による関税の一部について一時停止措置が講じられていますが、関税政策を巡る不透明感が景況感の重しになると予想されます。
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