『米国の雇用統計と大統領候補者討論会』

2024/09/06

9月相場を迎えた今週の株式市場ですが、日経平均における週初の2日間は、先週からの流れを受けて38,000円台での推移となっていましたが、続く4日(水)になると下落に転じ、前日比で1,638円安を演じるなど、相場の雲行きが怪しくなってきたような印象となっています。

こうした相場のムードの変化は米国株市場の動きがもたらしました。今週の米国株市場はレイバーデーの祝日明けによって、3日(火)から取引がスタートしましたが、開始早々、この日の米主要株価指数は軒並み大幅安となりました。具体的に見て行くと、先週末比でNYダウが626ドル安、S&P500が120p安、NASDAQが577p安でした。

先週までの米国株はNYダウが最高値を更新するなど、順調に株価の戻り基調を描いていたのですが、3日(火)に発表された米経済指標(8月ISM製造業景況感指数)が市場予想に届かない結果だったことをきっかけに景気への不透明感が高まったほか、直近までの株価上昇による利益確定売りも加わったことが株価下落へと相場を動かしました。

日米の株式市場が8月のあたまに急落したことはまだ記憶に新しいですが、その要因のひとつとして米国の景気後退懸念が挙げられるだけに、6日(金)に発表される米8月雇用統計の結果次第では、相場が再び下方向を目指す動きになることも想定され、今回の雇用統計については、いつも以上に注目度が高まることになりそうです。

また、米雇用統計の結果は来週10日(火)に予定されている、米大統領候補者のTV討論会にも影響を与えそうです、株式市場が米国の景気後退を強く意識される展開となった場合には、討論会で経済政策がテーマの中心になることも想定されます。

その場合、とりわけ足元で急速に支持率を追い上げている米民主党のハリス候補がどんな経済政策を語るのかが焦点になります。ハリス氏は、「共和党トランプ候補の当選を阻止する」という大義名分と、バイデン大統領が選挙戦から撤退を表明した時期が、正式なプロセスで新たな候補者を確立する時間的余裕がないという民主党の事情がある中で指名されたという面がある点に注意が必要です。

民主党内での候補者争いがなかったことで、具体的な政策が明確でないことや、同氏の政策内容やリーダーシップの面が評価されているわけでない(副大統領時代には移民対策で批判も多かった)こともあり、「反トランプ氏」や、「米国発の女性大統領」という期待だけで支持率を維持していくのは難しく、仮に、大統領選でトランプ候補に勝利したとしても、その先の政権運営が見えてこない懸念もあります。候補に指名された経緯が微妙なだけに、党を率いるのではなく、党の方針に従わざるを得なくなったり、党内の政策論争に巻き込まれて政策が二転三転することも考えられます。

そのため、来週の討論会はハリス氏のリーダーとしての素質が問われ、引き続き支持を伸ばせるかどうかを探る大事なイベントになると思われます。この試練を乗り越えられなければ、再びトランプ氏有利となり、市場では「トランプ・トレード」が復活することもあるかもしれません。

もっとも、基本的な相場のシナリオは、17日~18日にかけて開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)に向けて、景況感を探りながら推移する展開が見込まれますが、ここ1~2週間は落ち着かない動きが続きそうです。

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