コージンバイオ(177A)再生医療等製品の製造受託とアジアへの事業展開で成長を目指す

2024/04/30

細胞や微生物の増殖を促す培地を活用した3つの事業を展開
再生医療等製品の製造受託とアジアへの事業展開で成長を目指す

業種:化学
アナリスト:鎌田良彦

◆ 細胞や微生物の増殖を促す培地を活用した3つの事業を展開
コージンバイオ(以下、同社)グループは、同社と子会社3社、関連会社1社からなり、細胞や細菌等の増殖を促す培地のメーカーとして、①細胞培養用培地を扱う組織培養事業、②細菌検査用培地、新型コロナウイルスの検査キット等の体外診断用医薬品を扱う微生物事業、③自社の培地を使って再生医療等で使われる特定細胞加工物の製造受託等を行う細胞加工事業の3つの事業を展開している。

23/3期の売上高構成比は、組織培養事業が34.8%、微生物事業が50.5%、細胞加工事業が14.7%であった(図表1)。23/3期にかけては、検査キット等の新型コロナウイルス関連商材の寄与という一過性の要因により、微生物事業の売上高の伸びが高かった。

◆ 組織培養事業
組織培養事業では、クリニック等の医療機関や企業、大学等の研究機関向けに、細胞を活用する再生医療に関連した臨床用や研究用の細胞培養用培地の開発・製造・販売を行っている。

細胞培養用培地は、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、微量金属、無機塩等を含む溶液である。細胞増殖のためウシ血清等の血液成分を添加して使用する基礎培地と血清を用いない無血清培地がある。組織培養事業の売上高の約6割を無血清培地が、約4割を基礎培地が占めている。用途としては、従来は研究用が多かったが、最近では臨床用が増えている。

基礎培地は細胞全般の増殖に用いられ、組成が公開された安価な製品であり、主に基礎研究用に使用される。基礎培地は血液成分の血清を添加するため、ウイルス等が混入するリスクがあり、そのリスクを除いたのが、無血清培地である。無血清培地の組成は公開されておらず、特定の細胞の培養に使われる。血清の代わりに高価な細胞増殖因子を添加するため価格は高いが、安全性が必要とされる再生医療の臨床には欠かせない製品である。

製造は同社の他、中国の子会社である高金生物科技、持分法適用会社の味の素コージンバイオ(同社出資比率49.0%)が行っている。高金生物科技は中国の顧客向けの製造を行い、味の素コージンバイオではiPS細胞用の培地を製造している。販売は医薬品卸会社等を通じて行っている。

◆ 微生物事業
微生物事業は、細菌検査用培地と体外診断用医薬品の2つに分けられる。

1) 細菌検査用培地
細菌検査用培地は、細菌を増殖させるための培地で、健康診断の検体検査等で用いられる臨床検査培地と、食品、化粧品、医薬品会社等での製造現場等で細菌検査を行うスタンプ培地等の環境検査培地がある。同社では用途に応じて年間300品目以上の細菌検査用等培地の製造・販売を行っている。

2) 体外診断用医薬品
体外診断用医薬品は、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等の抗原検査キットである。医療施設や検査センターでの利用の他、薬局を通じた販売も行っている。

◆ 細胞加工事業
細胞加工事業では、自社の細胞培養用培地を用いて、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、再生医療等安全性確保法)に基づく特定細胞加工物の製造受託を行っている。

特定細胞加工物は、再生医療安全性確保法により、「再生医療等に用いられる細胞加工物のうち再生医療等製品である以外のもの」と定義されており、患者の生体から取得した細胞を増殖、加工したものである。がん予防を含むがん免疫細胞療法や、幹細胞によるしわ改善等のアンチエイジング治療等に用いられる。販売先は自由診療でこれらの治療を行うクリニック等の医療機関であり、患者は、医療ツーリズムを利用したアジアの富裕層が多い。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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