米国の株価と金利の関係性

2023/08/25

今週の国内株式市場ですが、日経平均はこれまでのところ、株価の戻りをうかがう展開が目立っています。23日(水)の取引終了時点では32,000円水準を回復、直近で下抜けた75日移動平均線にも届きそうなところまで上昇しています。

先週の株価が大きく下げた反動が出ているものと思われますが、さらにその上に位置している25日移動平均線を含め、テクニカル分析的な節目が上値の抵抗となってしまうと、いわゆる「リターン・ムーブ」の格好で、再び株価の下落が活発化しかねないため、まだ安心はできない状況と言えます。

その一方で、米国株市場については、主要株価指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)が揃って下げ止まりの動きを見せているものの、先週下抜けした50日移動平均線にはまだ届いていない格好で、こちらも50日移動平均線のリターン・ムーブが目先の焦点になります。先週の株価下落の主因として、米長期金利の上昇が挙げられる中、25日(金)に、ジャクソンホール会議(カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)で予定されている、パウエル米FRB議長講演の内容を待っているような印象です。

また、今週に入ってからも米10年債利回りが、22日(火)に4.36%となるなど、長期金利の上昇基調が続いています。4月上旬の利回りは3.30%水準でしたので、5カ月あまりで長期金利が1%以上、上昇してきたことになります。さらに、昨年10月の利回り(4.24%)も超えてきました。

一般的に、金利の上昇は、企業の資金調達コスト負担が増えたり、債券との相対的な割高感も大きくなるなど、株式市場にとって重荷となります。足元の米株価指数も、10年債利回りの上下に連動する格好で動いている場面が多く見られます。ただし、急ピッチな利上げによる米国景気への悪影響が懸念されていた昨年10月とは異なり、足元では逆に景気の強さを背景にした金利上昇であるため、米企業の業績がしっかりと成長していければ、株価が上昇していくことは可能と思われます。

今後の株式市場も、米金利の動向の影響を受けやすい状況が続くと思われますが、現在の市場が前提としている「米景気のソフトランディング」シナリオが揺らぐ展開には注意が必要です。米国では、いわゆる「コロナ貯金」の枯渇をはじめ、コロナ禍で停止していた学生ローンの支払いが再開されるほか、最近になって報じられることが多くなった米金融機関の格下げについては、商業用不動産の借り換え需要が2025年にむけてピークを迎えることなどが理由のひとつとなっており、秋口以降の米国では、消費の減速やカネ回りの悪化など、景気が減速に転じる材料が意識される可能性があります。

仮に、今後の米金利が低下傾向になったとしても、それが米景気の悪化を織り込む動きだった際には、株式市場も一緒に下落していくことも考えられます。もっとも、来年の米大統領選挙を前に、政治的な動きで景気が支えれることも想定されますが、足元の株価と金利の関係性が変化するかもしれないことは押さえておく必要がありそうです。

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