青い風と共に:米ジョージア州の決選投票について

2020/12/07 <>

ジョージア州の上院決選投票で決着へ

青は米民主党のイメージカラーです。米国全土で11月3日に実施された大統領選では、「青い風」が吹いたと言ってよいでしょう。民主党のバイデン氏が共和党のトランプ氏を、かなりの差で破ったのです。 

しかし、議会選は接戦となりました。下院は民主党が何とか制したものの、上院はまだ決着がついていません。上院100議席のうち民主党が48、共和党が50の議席を確保していますが、2つの議席が未定です。それを決するのが、米国南部の州、ジョージア州で、来年1月5日に実施される決選投票です。

バイデン氏・民主党が主導権を掌握?

その2議席を民主党が獲得すれば、上院も同党が制します。議席数は50で共和党と並びますが、採決で可否同数の際、副大統領が決裁票を投じるからです。そして次期副大統領は、民主党のハリス氏です。

こうして上下両院とも民主党が制した場合、政策の策定において、バイデン次期大統領および民主党が主導権を強力に掌握できます。一方、上院だけでも共和党が制した場合、同党は、バイデン氏らの政策の多くを阻止できます。そのため、ジョージア州での決選投票の行方は、計り知れないほど重要です。

上院をめぐる形勢は共和党が若干有利

ジョージア州の上院2議席をめぐる11月3日の通常選挙・特別選挙では、いずれも過半数の票を獲得した候補者がいませんでした。その結果、同州のルールに基づき、各上位2名が決選投票へ進みます。

現在、通常選挙・特別選挙とも、各党候補者の支持率は拮抗しています(図表1)。ただ、上院を制する上での形勢は、共和党が若干有利かもしれません。民主党は2議席獲得が必須であるのに対し、共和党はどちらか1議席を獲得すればよいからです。しかもジョージア州は、伝統的には共和党の地盤です。

いずれにせよインフラ投資は実行可能

ただし、上院を共和党が制したとしても、バイデン氏の政策推進が、完全に行きづまるわけではありません。米大統領の権限は強く、議会を通さず大統領令などで実行できることも、数多くあるからです。

それは特に、通商、移民、安全保障などにおいてです。また、共和党が民主党に歩み寄れる経済政策も、無いわけではありません。中でも、道路、橋、高速通信網といったインフラへの投資です。米産業界も、バイデン氏らの増税策には批判的ですが、インフラ投資策に関しては、その推進を求めています。

「青い風」と共に共和党は去るのか?

とはいえ、民主党がジョージア州の2議席を獲得し上院を制する可能性も、十分にあります。大統領選では、バイデン氏が同州で勝利したのです。民主党候補者としては、1992年以来の勝利です(図表2)。

ジョージア州は、映画『風と共に去りぬ』の舞台です。そこで描かれた気風の漂う同州は、長らく保守的な地でした。しかし近年、州都アトランタなどに多様な人々が流入し、様相が変わりつつあります。その州に、大統領選に続いて上院選でも「青い風」が吹き、共和党を少数派へ追いやるのでしょうか。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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