米大統領選再選に向けた株価の動き

2019/06/19 <>

▣ トランプ氏は再選出馬を表明

トランプ大統領は6月18日、再選出馬を正式に表明しました。表明に先立ち16日には、「(大統領の職を)私以外の人物が引き継げば、これまでに見たことがない市場の暴落があるだろう」とツイートしました。トランプ氏は、景気動向はもちろんのこと、株価の動きも重視していることがうかがえます。

米大統領選は、現役の大統領が有利と言われています。最近では民主党のカーター大統領、共和党のブッシュ大統領(父)が再選に失敗したのみです。

▣ 再選がかかる大統領選前の米株の動き

現職の大統領が再選した選挙前の株価の動きは(図表1)、

  • 1984年(レーガン大統領再選):前の年は堅調な動きも、大統領選の年はややさえない動き。ただ、選挙前の6月からは持ち直し
  • 1996年(クリントン大統領再選):米国株は堅調な動きが継続
  • 2004年(ブッシュ大統領再選):前の年は堅調な動きも、大統領選の年はややさえない動きが継続。大統領選は激戦に
  • 2012年(オバマ大統領再選):前の年はさえない動きも、大統領選の年は堅調な動きが継続

一方、現職の大統領が再選に失敗した選挙前の株価の動きは(図表2)、

  • 1980年(カーター大統領再選失敗):直前の株価は堅調
  • 1992年(ブッシュ(父)大統領再選失敗):大統領選前の数か月はさえない動き

と、株価の動向は重要ですが、当落を左右するのは株価だけではなさそうです。

▣ 株価以上に経済状況(暮らし向き)が重要

カーター大統領の時は、大統領選直前の株価は堅調な動きになりましたが、景気が低迷し、失業率が7%を超えたこと(図表3)に加え、1979年に発生したアメリカ大使館人質事件の解決に失敗したことが、大きな敗因とみられています。

ブッシュ(父)大統領の場合は、共和党の大統領が3期続いたことで、共和党から民主党への政権移行という変化が国民に受け入れられたこと、財政再建案に増税が含まれていたことから「増税なき財政再建」という公約が守られなかったことなどが敗因として挙げられます。とはいえ、多少の失敗はあったにせよ、米国民の暮らし向きがもう少し上向いていたならば、再選は可能だったかもしれません。1980年、1992年ともに、景気後退期の直後の選挙であったことも災いしたとみられます。

また、金融政策について、カーター大統領は、「米連邦準備制度理事会(FRB)は高金利が経済全体に与える悪影響をもう少し考えるべきだ」と発言、他方、ブッシュ(父)大統領は、「もし選挙期間中に米金利がもっと劇的に下げられていたならば、私は再選されていただろう」とぼやいたと、伝えられています。両者ともに金融政策面からの援護射撃を望んでいた模様です。

再選には堅調な景気拡大が続いていることに加え、株価については大統領選前の数か月が大切と言えそうです。米国経済はやや鈍化しながらも、直近5月の失業率が3.6%と、49年ぶりの水準まで低下するなど、堅調さを維持しています。年明け以降も景気拡大が続き、株価が堅調に推移すれば、トランプ氏の再選の可能性が高まるとみられます。そのためにも、トランプ氏の再選に向けたFRBたたき(利下げ圧力)は、しばらく続くとみられます。また、米中貿易摩擦の米国経済への悪影響が拡大する前に、米中が歩み寄ることも必要となりそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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