日本合成化学工業株式会社(4201 東証一部)
主力2製品でライバル「クラレ」と市場を占有

2015/03/09

ベーシックレポート
㈱スクアード・リサーチ&コンサルティング
奥山 智子/坂本 貞夫

参入障壁は高く、2社による寡占が継続
 酢酸系樹脂の専門化学品メーカーで、1927年(昭和2年)設立と業歴は長い。 主力製品は「OPL フィルム」及び「ソアノール」の二つである。「OPL フィルム」は液晶 ディスプレイの画像表示に不可欠な「偏光板」の素材であり、「ソアノール」は主に食品 包装材として利用される合成樹脂である。「OPL フィルム」は、技術面での参入障壁が 高く、日本合成化学工業とクラレの2社による寡占が成立しており、市場シェアも日本合 成化学工業3割、クラレ7割の状態が続いている。「ソアノール」も技術面での参入障壁 が高く、初期の設備投資額が大きいこともあり、今後も寡占状態が継続する可能性が極 めて高い。また、両製品ともカスタマイズ性の強い非汎用品であることから、価格競争に 陥りにくい点も魅力の一つとなっている。
目下の課題は、主力2製品に続く第三の柱となる製品の育成である。偏光板やタッチ パネル用の粘着剤「コーポニール」「紫光」は、スマートフォンの普及などに伴い、順調に 成長してきている。今後、液体洗剤の個包装材などに利用される「ハイセロン」の販売も 期待される。また、同社の製品はハイエンド商品であるため、新興市場が本格的なター ゲットとなるのはこれからであり、中長期的にも成長が期待される。

本四半期は増収減益での着地、新ラインの稼働による増収に期待
 本第3 四半期の売上は782 億円、前年同期対比約30 億円の増収となったが、営業 利益は、前年の113億円(営業利益率15%)から86億円(同11%)と減少、増収減益で の着地となった。要因は大きく二つあり、一つは品質安定性の不具合によるOPL フィル ム新設備の本格稼働のズレ込み、二つ目は欧州市場での酢酸ビニルモノマー(ソアノー ルの原料)価格の高騰によるコスト増である。ニつとも既に解消の目処がたっていること から、利益率は改善方向に向かうと推察される。なお、来年度第2 四半期には米国工場 で建設中のソアノールの新ラインが稼働を開始する予定であり、設備増強に伴う売上増 加も期待される。但し、コスト面では減価償却負担の増加に加え、国内工場において、 生産体制などの最適化を実施する計画もあることから、臨時的な費用負担に伴い利幅 が縮小する可能性もある。

 

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