1月11日妥当レンジ 20,500円~22,200円
「安堵感」の終わりは、3Q決算発表での見通し修正から
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<国内統計にもマイナス影響が顕在化しつつある>
■先週は、株式・為替ともに落ち着いた状態が継続された。1)9日発表の米FOMC議事録要旨(12/18-19分)において、景気の先行き不安が払拭されなければ利上げを当面見送る考えが参加者に共有されていたこと、2)7-9日に行われた米中の次官級貿易協議において、相互理解が進んだとのポジティブな声明が双方から出されたことなどから、米中貿易戦争に対する警戒がやや和らいだこと、が要因である。
■世界銀行は8日、世界経済見通しを公表した。2019年の世界全体の成長率を2.9%と前回(18年6月)から0.1ポイント引き下げた。貿易戦争の影響から世界の貿易量は大きな下ブレを予想している。
■国内統計にも影響が顕著に出始めている。日本工作機械工業会は、2019年の工作機械受注額が18年の実績推定より12%減少するという見通しを発表した(9日)。15日発表の景気ウォッチャー調査(12月)において、現状判断DI(48.0)、先行き判断DI(48.5)ともに節目となる50を割り込んだ。
■15日はEUからの離脱案に関して英国下院において採決が予定されている。否決は避けられないと見込まれており、それ自体は大きなサプライズはないものの、反対票数や否決後の英政府の対応などによっては、マーケットへ大きな影響を与える点には十分注意を払う必要があるだろう。
<「コンセンサスDI」が急激に悪化>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、前週比でいずれの期間も比較的大きなマイナスとなった。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、サンプル数が確保出来た中で、来期ベース28.4、再来期ベース30.5と50を大幅に下回り、急激に悪化した。建設機械、設備関連、半導体製造装置・電子部品といった銘柄群のマイナスが目だった。
■間もなく始まる(3月期決算企業の)3Q決算発表での業績並びに今後の見通しに対する懸念が生じており、来期・再来期のコンセンサス予想が引き下げられる可能性が高く、株価の下押しがかかり易くなると考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,500円~22,200円 | (前回19,900円~21,500円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月11日)
今期予想EPS | 1361.22円 | (前週 1370.08円) |
来期予想EPS | 1428.28円 | (前週 1442.12円) |
再来期予想EPS | 1548.57円 | (前週 1556.71円) |
今期予想PER | 14.96倍 | (前週 14.28倍) |
来期予想PER | 14.25倍 | (前週 13.56倍) |
再来期予想PER | 13.15倍 | (前週 12.57倍) |
来期予想PBR | 1.03倍 | (前週 0.97倍) |
来期予想ROE | 7.23% | (前週 7.18%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.15% | (前週 7.28%) |
1月11日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
3Q決算を経て、コンセンサス予想EPSの一段の低下(減少)の可能性を鑑みるとマーケットの浮揚は長続きしないと考える。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 47.2%→47.1%→42.9%→33.3%→28.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、46.3%→44.1%→51.4%→11.1%→30.5%。
十分なサンプル数がある中での大幅な低下。もう一段のコンセンサス予想EPSの低下(減少)と株価の下押しは必至と見る。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |